世界最強はルーン魔術を作る
まず法則性だ。僕は、実は一回だけルーン魔術を見たことがある。実は僕の愛用する書物、『魔術』にルーン魔術が出てきたのだ。
それは、ルーン魔術、『業剣乱舞降下』しかし、それはまだ完全に解明されていない───わけではない。僕が二歳のころに解明した。
魔道学会には証明を提出してないけど。
それを今発動させればいいだけだが、『業剣乱舞降下』は発動が遅い。この前、紙を媒介にして発動実験をした。結果は山を吹き飛ばすほどの威力だということが分かったが、発動には2秒もかかる。それでは間に合わない。
でもまあ、これで僕は二つのルーン魔術を知っていることになる。
『鹿咆哮崩星塔弾』・『業剣乱舞降下』
この二つの共通点は二つ。それは"物体を生成する"・"物体を飛ばす"、それだけだ。
そして、この二つの共通点を証明するかのように全く瓜二つのルーン文字の構成が二つある。
たったこれだけだが、大丈夫だ。何故なら、ルーン魔術は、現代魔法の基礎の基礎となっている。だから似通っている部分が微かだがあるんだ。
───剣───
それは、魔法陣のパターンの中でも簡単で、覚えやすいものだ。だから、例えルーン文字でもその形は残っている。
そう、『業剣乱舞降下』に"物体を生成する"・"物体を飛ばす"のルーン文字に挟まれた不思議なルーン文字がある。そして、それは"剣"の魔法陣のパターンとそっくりだ。
僕は、仮にも『業剣乱舞降下』のルーン文字構成を完全に解明した者だ。どこがどのルーン文字を指しているのは分かる。
だから、あとは『業剣乱舞降下』とほぼ同じにすればいいだけの話だが、分からないところがある。
それは、発動時間だ。魔法の場合は魔法のパターンがくっつきにくければくっつきにくいほど発動時間が遅い。だが、ルーン魔術にはその法則性が無い。
うーん、どうしたことか……
ゆっくりと僕の周りには『鹿咆哮崩星塔弾』が迫っている。もう少しでそれは僕に到達しそうだ。
先程と同じように『鹿咆哮崩星塔弾』を同じ数発動すれば間に合ったが……もう遅いな。
うん? 待て。なんでさっきは僕の方が遅く『鹿咆哮崩星塔弾』を発動したのに間に合ったんだ?
魔法は、魔法同士を相殺する場合、どちらかが遅いとそちらが押し負けてまう。それは、初速が遅く、威力がまだ完璧に整っていないからだ。
魔法の始祖、ルーン魔術でも、多分それは同じことだといえる。
僕の発動した『鹿咆哮崩星塔弾』、鹿の発動した『鹿咆哮崩星塔弾』、一体何が違った?
……鹿は、僕を殺す殺気を持って発動した。だけど、僕はその魔法を消すために発動した。後はなにも変わらない。なら……気持ちだけ?
一か八かだが、やってみる価値はありそうだ。※この間0,001秒の思考時間
それなら……高火力、即発、広範囲……ほかにも発動後の反動もないようにしたいな。そんなこと、魔法では操作できないけど……ルーン文字なら……
「いけ」
───『大業剣疾風獅子』───
僕の目の前に視界を覆うほどの大剣が現れる。それは風の如く僕の前から遠ざかっていく。まるで、目の前の餌にありつく獅子のように。
大剣はクルクルと周り、『鹿咆哮崩星塔弾』の大群の中に飛び込む。次々と大剣は『鹿咆哮崩星塔弾』を切り刻んでいく。
おもったより成功したようだ。どうやらルーン文字は気持ちで左右されやすいということか。
「でも、なんでルーン文字だけなのだろうか。そこが不思議だ。魔法の始祖なのだろうから気持ちで操作されるのも魔法が引き継いでいてもおかしくはないのではないだろうか。いや、まず前提として気持ちでルーン魔術が操作できる? そもそもとして魔法というのはなんなのだ? 一体どうして……おっと、鹿のこと忘れていた。悪いな」
『どこまでもお喋りなやつだな』
「そうだな……でも、多分これで終わりだな」
鹿はまだ僕が後ろに来た事に気づいていない。
(ッ! 早ッ───)
鹿がそう思考し、僕のいる方、真後ろを振り向く。だが、僕はその前に殴る。顔なので痛そうだ。
そして、そのまま足を浮かばせ、踵落としをする。それだけで鹿は地面に埋まる。
やっぱり脆いな。
そう考えたからか、僕の方も一歩行動が遅れた。その隙に鹿は僕と距離を取った。それでも、優位性は僕の方が上。鹿は焦っている。
(なんだ……いきなり……コイツは……)
やっぱりルーン魔術だけじゃあ汎用性もない。
ここからは、魔法でいかせてもらう。久しぶりに魔力も解放だ。
魔力の黝い渦が僕の周りへとジワジワ広がる。それは、羽を模し、角を模し、ギラギラと輝く怪しい目となる。体も顔も魔力に覆われ、宛ら───
(悪魔……)
鹿は恐怖に染まり、足も於保つかず、生まれたてのように震わせながら逃走を始める。本能が警告を初めていた。
(逃げなくては……!)
【逃がすかよ】
さんざめく声で轟かせる。その声すら魔力が籠り、空気も重くなる。
鹿は急に立ち止まる。否、止められたのだ。魔力の手で。
【死ね】
『やめッ……!』
魔力の手で弾け、魔力が溶けるように血もドロドロと落ちてゆく。
でも、まだ生きているようだ。なかなかにしぶとい。虫の息だがな。
僕は倒れている鹿に話しかける。
「なあ、お前はここでなにを守っているんだ?」
回復魔法で鹿の体を癒しながら話し出す。まだコイツには話せる余地がありそうだからな。
『私は……何も……ッ』
僕が右手を挙げ、魔力を纏わせる。すると鹿はビクッと体を震わせた。なにをすればいいか分かってるよな。
鹿の目の中にあるのは、恐怖。しかし、その恐怖は僕に向けられたものではない。
「いったい、お前の後ろには何が居る?」
『……言えない。言ったら……』
「殺される?」『……』
先を呼んだ風に言葉を放つと、鹿は押し黙ってしまう。
「オレよりも、ソイツの方が怖いのか」
それでも鹿は黙るが、恐ろしさに負けたのか口を開きだす。
『……主は、私を拾ってくれた』
「主?」
『私が"紫鹿"から追い出され、力の大半を失ってもなお、主は私を救い出してくれた』
僕の言葉を聞かず、淡々と言葉を続ける。"主"に関してはあくまでも話さない、か。それとも制限されているのか?
にしても、またしても"紫鹿"か。あのキュームも行っていたが、それは一体なんなのだ?
『……正直に言うと……主は、狂っている』
「なんだ? 上司の愚痴か?」
『野心に満ち溢れ、全てを手に入れても、まだ高みを目指す』
僕の話は無視ですか。
「別に向上心があるのはいいことじゃないか」
『……それが、大量の犠牲者を生むことになろうとも?』
「……お前の主とやらは、いったいなにをする気だ?」
話からして、なにか危ういことをする気しかない。
『だから……頼む……主を……止………………』
「……おい、鹿?」
それからは、時が止まったかのように鹿は止まった。
しかしその時、鹿は違うところを見ていた。
《駄目ですよ……スーロくん?》
『あ……あるじ……さま……』
《言ったでしょう? こういうときは───……》
(自害、魔法……)
そして、鹿───スーロは魔法を発動させる。
最後の輝きを、魔力に変えて。
「! やめろ! 鹿!」
『主を……止めて……くれ』
そして、スーロはこの世界から消えた。存在も、跡形もなく。
十段階中、三段階目くらいの本気です。




