世界最強は魔法を学ぶ
結果的には、僕は転生した。そして、何故か、体が重い。重力を感じる。それに、何故だか、泣きたくなってきた。どういうことだ?っは!そうか!これが、俗に言う───
「おっぎゃっぁぁぁああああっ!!!!」
───生理現象か!
目を開こうにも、なかなか開けず、ここがどういう場所なのかよく分からない。
自分が赤子というのは分かるのだが、あとはそれっきり。ただ暖かい何かに包まれてる感覚がするだけ。
やがては泣き終わり、睡魔が僕を襲う。赤子の生理現象は凄まじく、すぐに僕を従わせてしまう。
早く鍛錬をしたいのだが、どうやら世界はそれを許さないらしく、僕を眠らせてくる。なんて恐ろしい!
でも、まあ、まずは落ち着いてからじゃないと物事は上手くいかない。冷静でないと。だから、ここは素直に言うことを聞くしかないのだ。
でも、あとで絶対に克服してやるからな!生理現象!
起きてからはまず、目を開ける練習。なにやら、そこらへんの筋肉はきちんとしてないからな。鍛えないと。何回も目を開けようとしては閉じ、開けようとしては閉じを繰り返す。でも、その一回ごとに視界は広がっていき、やがては全てが開けるようになる。
そしてその刹那───青い粒子が僕に向かって飛び込んでくる。だが、スピードは遅く、反応できるレベルだが、僕は避けようとしなかった。なにかを確かめるためだ。だが、その粒子は、僕にぶつかると同時に発散した。
だが、頭の中に一つの単語が浮かび上がってくる。それは、
───魔力───
これを上手く研究していきたいのだが、体が思うように動かない。それに、勝手に体が動かされる感覚。
これは───
「.©;R・:We.v;.W;!パーファラン!パーファラン!」
女性の音が耳朶を打つ。それでいて、よく耳に刺さる声色だった。どこか落ち着くような、眠ってしまう声色。聞いたことがある。これは、1/Fゆらぎだ!
1/Fゆらぎとは、パワー(スペクトル密度)が周波数 f に反比例するゆらぎのこと。ただし f は0より大きい、有限な範囲をとるものとする。ピンクノイズはこの1/fゆらぎを持つノイズであり……(以下略)ウィキペディア参照。
まあ、つまり聞き心地の良い声ということだな。こんな声が僕にもあると良いんだけど。遺伝するかもしれないから僕にもできるのかな?
にしても、パーファランか。この人が僕の母親だったら、パーファランは、僕の父親のはずだけど。そして、ドダドダと木造の廊下を走る音が聞こえたかと思うと、ドアがバアン!と開いた。
「w:.;.wv:wbpl@aalcq@lf0-o239rujwa!」
……なんて?
「[wf.pl0-2k-1i93r;ew:].qlfpq@of0a-ic@ifufj-3jpoq:f:,\a,;;asl;jp」
だからなんて?
暫く、父親と思わしき人物と、母親と思わしき人物との会話が続いた。
§
あれから、二年が経った。僕の歳は、晴れて二歳となり、この世の全ての言語、及び魔術について研究を行った。この世界の全ての言語を習得するのに二年も掛かったのは痛手だが、それでも、世界の常識や、情勢などを知れたので良しとしよう。
この世界は、三つの大陸で分かれている。
広き緑や高原が続く大地、アクリア大陸。僕がいる大陸がここだ。
鉱山や深き迷宮がごまんとあるダグゾン大陸。僕たちから一番近い大陸だ。
不思議な植物や魔素が充満する場所、ジャルヴ大陸。一番行ってみたい所だ。
その三つの大陸以外は全てが海で構成されており、意外と海は小さかったりする。それくらい、三つの大陸がデカいのだ。
そして、次は僕のこと。僕は、このアクリア大陸で右の方に位置するデュック元后国のグレバール公爵家、十三男坊だ。十三男坊となると殆ど継承権が無くなっているので、こちらとしても有難い。この世界を冒険するには、そういう立ち位置が一番いい。
そうそう、僕の名前を言い忘れていた。僕の名前は───
「ハージュ!また図書館に行ってたの?どっか行っちゃ駄目だからね?はい」
母親であるアンは、僕をゆりかごへと戻しておく。……そう、僕は、このアンと、父親であるバーファランの息子である、ハージュ・ア・グレバールだ。
最近は、情報を手に入れるために図書館を出入りしている。早く、意思表示のために声を出したいのだが、なかなか。声を出そうとしても「だー」しかでないのだ。二歳でこれではあまりに遅すぎる。
そう。この世界はあまりに遅すぎるのだ。二歳でゆりかごは、もう卒業の歳だろおぉぉっ!
僕は、ゆりかごの柵をグググと押してみるが中々壊れない。そう、この体も異常なのだ。あまりに筋肉が付かなさすぎる。どういうことなのだ?
まあいい。僕にも、とっておきがある。僕の周りに、青い粒子が飛び交うと、力が満ち溢れてくる。その力を利用して、高い柵を飛び越えた!
ふう。こんなもんか。昔から僕は、魔力というものを扱えていた。それは、生まれてすぐにわかった。この世界では、魔力と触れ合うのは平均でも23歳。僕の行動は異常かと見受けられたが、それもそのはず。なにせ僕は前世の全記憶を生まれたときから保持している。
子供なら理解できない範疇を、僕ならわかることができる。
それなら、魔力と触れ合うこともできるということだ。さて、これでまた図書館に───と、僕がジャンプしてドアを開けた先に待ち構えていたのは、、、、
「見てたわよ、ハージュ。貴方、今魔力と触れ合っていたわよね?」
「……だう」
そう、お説教の時間だ。
僕が、魔力と触れ合うことを周りが知るのは、ほんの最近になってからだ。この特異なことを周りが知ってしまったら、忌み子として扱われるやもしれないと考えたから、隠していたのだ。
だが、この前、図書館へ行こうとした際、『ハージュ!いつもいつもどうやって、ゆりかごから抜けて図書館へ行ってると思ったら……もしかして貴方、魔力と触れ合えるの?』……油断してバレてしまったのだ。
精神年齢30過ぎ。もういい歳したおっさんと言っていいだろう。そのため、(女性経験以外は)経験豊富と言っていいだろう。
気配にはもちろん武術を習っているときから敏感だ。だから、人の気配は特段と気を使っているのだが、この女性には適わない。何故だろうか、もしかして、これが身内パワーなのか?これが身内パワーなのだろうか!!
僕は、考えるのをやめた。
というのは、ほんのささやかな冗談なのだが、どうやら目の前にいるお母さまは冗談ではなさそうだ。
これは、長くなりそうだ。
お説教の時間が終わり、今日も修行へと励む。その修行というのが、この魔法だ。
瞑想をし、精神を統一させ、魔力を体で感じる。そのような修行はかれこれ1年と半年が過ぎた。もうそろそろ次のステップへと突入していいだろうと思い、この魔法を始めた。
魔法を行うのは、本来平均23歳から、と言われているが、僕には関係ない。そんなのは知ったことではない。僕は、世界最強となる者。この程度では屈さない。
魔法、というのは不思議なもので、体内に、血液のように循環している魔力回路といわれているものを使う。というのも、魔力回路は、蛇口のように噴射することができる。魔力の一個一個の放出が薄いと、可視化することはできないが、一個一個の魔力が濃いと、見えることができる。この1年と半年。それができるようになるために瞑想を行ったといっても過言ではない。
まずは、魔力回路から魔力を放出。その魔力を操作して、本に書かれていた通りの幾何学模様を描き、できた幾何学模様の魔法陣と呼ばれる物に魔力を通す!これが、光系統初級魔法の───
「『光源』……」
この日、僕は初めて魔法を行使することができた。
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