世界最強は告白されます
(試験はおまけ)告白がメインだと思います?
僕は、昔から負けず嫌いだった。それが、今関係あるのかと言われると、迷ってしまうが、ふと頭の中で急に思いついた。これから、僕がそうなってしまう事でも起こるのだろうか。
これから起こる試験は、迷路を脱出しようということらしい。
なんとも幼稚なことだ。こんなもの探知系魔法をかければ済むことだし。迷路内は魔物のレプリカが蔓延っているらしいけど、倒すのは簡単だし。
まずは一番目のペアを見るが───絶望的だった。なんだ、あれ。魔力の気配すら反応しないし、魔物を見つけたら全速力で逃げるし。結局、ゴールするのに30分も使っていた。後のペアも同じ感じだ。迷路に迷って逃げているだけ。
あとは一ペアだが───周囲が騒めき始める。
「お、おい……あの子やばくないか」
「魔物を全部殲滅しているぞ……」
「そうに決めってるでしょ! だってあの御方は【勇者】様なんだから!」
耳に魔力を込めて皆の声を聴いているが、どうやらあの子は勇者と言っていたな。
【勇者】。それは御伽噺にも出てくる有名な人物だが、文献では描かれていることが少ない。資料が少ないのか、それとも───誰かが隠蔽しているのか、僕にとってはどっちでもいい話だ。
にしても、あの子を見る限り高威力の魔法を連発しているな。僕と同じ、魔力が溢れているくらいに持ち合わせているのかな?
まあ、なんにせよ、あの少女は凄い。連続魔法を連発している。連続魔法は、その名の通りに連続で魔法を穿つこと。
だが、陣を二つ描くのは一般的に難解と言われている。同時に、違うことを両手でしないといけないのだ。簡単にはできないだろうな。
さて、【勇者】もゴールしたことだし、僕も向かいますか。
「ね、ねえ! 作戦はどうすのですの⁉」
僕と組む赤毛の子は、切羽詰まった顔で迫ってくる。
「作戦? 大丈夫だよ、僕の傍に居れば」
「そんなんでゴールなんて出来っこないですわ!」
そんなこんなで駄弁っていたので、ピー! と音が鳴り、僕たちがスタートになった。
「始まってしまいましたわ! どうすれば……」
あわあわとテンパり始ま、その場にへたり込む赤毛の子。どうやら、僕がなんとかしないと駄目みたいだ。
上を向くと、ガラスでこの迷路を俯瞰している試験を受ける子供たちがこちらを見ている。
どうやら一向にスタートしない僕たちを見て、早くゴールしろよとイラつき始めている。わかったよ、さっさとゴールすればいいんだろ。
先程、僕はこの迷宮を俯瞰していたが、どうやら、道が動いているようだ。だから、ゴールへの道を暗記はできない。
だけど───ゴール自身は動いていない。
スタートからゴールまで、障害物がなければ一直線。
「ここは───僕の道だ」
瞬間。ここに居た全員の視界が、真っ白に染まった。
そして、視界が晴れたとき、全員が驚愕した。なんせ、スタートからゴールまでの一直線上の障害物である壁や魔物が塵と化したからだ。
「ほら、行くよ。お嬢さん」
僕は目を点にしている赤毛の子に手を伸ばす。赤毛の子は、そっと手を僕の上に置いた。
赤毛の子を立ち上げると同時に、僕は尋ねた。
「君の名前は?」
今もなお、目を点にして頬を赤らめている赤毛の子は、小さく僕の目を見てその名を伝える。
「……テーラー……」
「これからよろしくね、テーラー」
そして、僕らは一直線にゴールへと歩いて行ったのだ。
§
まあ、このくらいすれば入学試験は合格だろう。監督官に用事あるのでここで退却します、と伝えてある。
だから、帰路を辿ろうと思ったが、目の前に水色の輝かしい髪色の女の子が僕の目の前で帰路を塞いでいた。
確か、この子は【勇者】だったっけ。もう覚えてないや。覚えるものが増えれば、忘れる者も増える。頭の容量は無限じゃないんだよ。
「え、えーっと……なにか用かな?」
僕は優しく尋ねる。しかし「……」勇者は沈黙だった。僕はもしかしたら人違いかな、と思い勇者の横をスルーッと避けながら歩くと、勇者様も僕の動きの通りに動いてまた僕の前に立ちはだかった。
「……」
やばい、圧がありすぎる。黙っているのがまた怖い。僕はまた横へ移動するが、勇者も横へいく。何度も何度も左右へ行くが、勇者もそれに付いてくる。さながら高速反復横跳びだ。
だが、それでも僕の目の前には勇者が居た。そして、ずっと黙っている。
怒ってるのかな? 僕の方が珍しいゴールの仕方をしちゃったから怒ってるのかな? メロスは激怒した?
僕って邪智暴虐なのかな?
そして、数分間の静寂の内、口を開いたのは、勇者の方だった。試験中でも口を開かなかった勇者が初めて発した一言は、驚くべきものだった。
「……好き……」
…………………………………………………………。……好き?
僕の頭の中には、目の前の青い髪の少女が放った一言で埋め尽くされていた。
好き……好き……好き……
その言葉が頭の中で木霊していた。
そして、その言葉を発した勇者は、恥ずかしくなったのか、顔をボンッ! と赤面してタタターと逃げて行った。
「あ……」
名前、聞いてなかったなあ……
にしても、あの顔……。
僕の頭の中には、先程の勇者の赤面した顔が鮮明に浮かんだ。
「勇者はひどく赤面した……」
前世では有名だったあの小説を、僕は同時に思い出していた。
そこから、フラフラとレニーとミールイの元へ帰った。二人とも、可愛らしい容姿でメイド姿なので、すれ違う人たちが二度見している。しかし、悲しいかな。この国の男は臆病なので誰も声はかけない。
もっと頑張れよ、少年たち。でも、こういう感じだから、家庭では妻に尻を敷かれる人生を送る人が多いんだよ。
「ご主人様?」
「頭ボーっとしてますよ」
だからって公の場で抱きしめないでほしいな、ミールイさん。
そして僕に匂い付けもしないでほしいな?
「ご主人様? また違う蛆虫の臭いするんだけど? ねえ」
そんなヤンデレミールイさんの言葉をガン無視して、僕らは宿に向かった。
こんな時、レニーさんが止めてくれたらなあ……
「ご主人様? 私もどっちかと言うとミールイちゃんの言うことに賛成です。確かに御主人様が他の女に取られるのは大変、こうふn……じゃなくて、遺憾です。これからは気を付けてください」
なにか、言いかけた気がしたけど、そんな最近M属性に目覚め始めそうになっているレニーのことは無視しとくことにした。
なんかこういうのもいいのかなって……チート部分は少なめだけど満足しとくれ……




