世界最強はテンプレなど求めていない
空間結界から出る。外は真っ暗だ。あそこに居れば、昼夜感覚が分からなくなる。
急いで二人の所に向かう。そこに着くと、ガールズトークが盛り上がっていた。
「坊ちゃんってそんなになのね~」
「そうなんですよ~なかなかに奥手なんですけどあれでー」
「ホントに、意気地なし……」
「ちょっとまて」
なにか僕の事を話しているので話を中断させる。すると三人はこちらを向いた。
「坊ちゃん、おかえりなさ~い」
「私達を置いてなにやってたんですか?」
「クンクン……蛆虫の臭いがします」
ミールイは獣人族なので鼻がいい。特に、僕になにか女性の臭いがついたときはそうだ。この前だって新しく来たメイドさんと接触しただけなのに『嗅いだことのない蛆虫の臭いがします……』と暗い目で見てきた。
レニーなんかその時『何故でしょう……御主人様が他の女と仲良くしてるというのに……体が火照ってきます……』とか変なことぼやいてるし。
「どこも行ってないよ。ただ少し小動物と戯れていただけだし、その匂いがついたんじゃないかな?」
まあ、嘘は言っていない。ソラーとミーネは殆ど小動物と言っていいだろう。戯れ(戦っ)てたし。
「……あやしいです」
そんなミールイの言葉を無視して、僕らはテントを張って就寝した。ちなみに二人は僕と一緒に寝た。自称オネエの御者さんは「モテモテですね、坊ちゃん」といって違うテントに行った。
また揶揄われた……
その後、探知魔法を使いながら三人仲良く寝た。
§
二日目は朝方から出発して、なにも起こらなかった。
そして、王都。ここはその門だ。僕は門番に許可証を見せ、門を潜る。
「わー!」
「すごいですー!」
僕は、過去に二回、王都に来ているからもうこの景色にはなれたとは思うけど、それでもこの景色は凄い。
前世では都会の景色が思い出されるけど、今世では化学ではなく魔法が発達しているのでまた違ったものを見られる。
是非、異世界に来たら見てほしいものだ。
「ありがとうございました」
僕は御者さんへ頭を下げる。二人も続けてそうした。
「あの人、一人で帰るつもりだけど、大丈夫なんですか?」
レニーが心配そうに見つめてくる。
「あの人、冒険者ランクAだし、一人でも十分大丈夫だよ」
「えっ⁉ 本当ですか? サインくらい貰えばよかったかなー……」
この世界にも、冒険者ギルドとかいう異世界にありがちな物がある。勿論、僕もいつかはなるつもりだ。ランクが高ければ他の国に行くのも便利になるし、なにかと勝手がいい。
そして、冒険者ランクAというのは、世界レベルで認知されるほどの有名人だ。なんでそんな人物がうちの御者さんをやっていたかというと、あの人は元はグレバール家の親戚だからだ。
まあ、結構血は遠いけど。
そんなわけで、こうして多忙な中でも来てくれたわけだ。
「ご主人様! 早速ですけど、学園の入学にいきますか?」
「いや、今日はあくまで入学試験だ。入学するにはあと三日ほど必要だ」
といっても、僕はまだこの世界でいうと幼少期。学園といっても幼稚部、つまり幼稚園と一緒ってわけだ。まあ、この世界は平均寿命が高いし、この年では幼年と言われても仕方ない。屈辱的だが。
さらに、精神年齢も成長するのが遅い。僕の従者二人だって、もうそろそろ40歳を超えるだろうに、精神年齢は18とか17とか若い。
まあ、身体成長速度も遅いのだし、そこら辺もこの世界は関係しているのかな?
なにしろ、この世界は物理演算すら元の世界と違う。この世界は重力が小さいし、それにしては物が落下する速度は前世の世界と同じだし。
「こちら! 王都王立第二学園の幼稚部入学試験の受付です!」
「あ、ほら。御主人様、あちらですよ」
「わかった、行くよ」
そちらの方へ行くと、結構な長蛇の列で僕が受付の方へ着くのに随分と時間がかかった。
「はい、えー……公爵家の方ですね。保護者の方は───そちらのメイドさんですか。随分若いですね。大丈夫ですか?」
なにかと危険が取り巻くこの異世界で、保護者が若いメイドということは確かに不安だな。
「大丈夫です。この二人は僕の専属メイドなので」
これを人に言うのは少々、恥ずかしいが、致し方ない。うわ……視線が痛い。
しかし、それで受付の人は納得したのか、僕たちを通してくれた。
「ふんっ! メイドだけを連れて試練何て、いつからここは御子様会場になったのかしら!」
突然、僕の近くで耳朶が響く。その音源の方向へ顔を向けると───誰もいなかった。気のせいだと思い、僕はまた試練上へ歩き出す。
「ちょ、ちょっと! 下よ! 下!」
再び、僕の耳朶が打ち鳴らされる。今度はその声の指示通り、音源の下を向く。
すると下の方に背の低い赤毛の女の子が立っていた。
「あー、えとー……こっちは試練会場だから子供は親御さんと帰りな?」
「ここに来るということは貴方も子供でしょ⁉ それに、私はもう13歳ですー!」
頬を膨らませてツッコミを入れてくる赤毛の少女。なんかテンプレみたいだな、こういう突っかかってくる奴。前世で見たラノベにはこういう奴は大抵主人公に惚れるのだが───いや、ないな。
僕はさらさら主人公になるという自意識過剰でもないし、僕に惚れてるやつだってまず居ない。
「と、とにかく! 貴方、ここはメイドだけを連れてくるお子様会場ではないのよ。神聖な! 王立第二学園の試練場なのだから。帰りなさい!」
僕は一つ溜息を吐いて、彼女の背と同じになるくらいに屈む。
「なんで僕が帰らなきゃいけないの?」
その言葉に、彼女だけが反応できる魔力を込める。
「ひっ⁉ ご、ごめんなさい……」
案の定、彼女はすぐに黙ってくれた。
「怒ってないから安心して」
優しくそう言うと、彼女の恐怖の顔は晴れた。それと同時に僕は試練会場へと向かう。
少し視線が痛いが……まあ、こうでもしなきゃさらにメンドクサイことになっていただろう。
試練会場の門を潜ると、そこには大量の人が居た。保護者は待機する場所があるみたいなのでそこへ二人は行ってもらった。
他にも保護者の待機場所に人はいたが、メイドは一人もいなかった。
そんなに、変なことなのかな。保護者がメイドって。
そこらへんの常識は習っていなかったから分からないが、知っておくのもいいだろう。
魔法研究が終わったあとで。
試験はシンプルで、筆記試験と実技試験だけだ。
最初は筆記試験なので、屋内に向かう。その時も色んな子供たちと一緒に歩いていたが、どれも僕より小さかった。
おかしいな、ここで受けてる人は僕よりも年上のはずなのに。さっきの彼女だって13歳と言っていたが僕よりも断然小さかった。
どういうことだ?女子の13歳くらいなら僕と同じ背のはずなのに。
まあ、些細なことか。
そんなこんなで、筆記試験が始まった。
ここで満点を取るのは些かよくない。だから、ここに来るまでの子供たちの会話を魔法で聞き取り、全員の凡その知能指数を計算した。
そして、そこから全員の平均点をあげると、このテストはだいたい6割くらいの正答率。
まあ、5問に3問当たっていたらいいか。残りの2問は適当に書いとけ。
予想はしていたけど……やっぱり幼等部だからかレベルは低い。しかもこの世界では化学があまり発展していないので学問もいまいちだ。
大幅に時間を持て余した僕は魔力操作で残りの時間を潰してゆくのだった。
§
筆記試験は終わり、次は実技試験。試験監督の指示を聞くと、どうやらこれからクジ引きをしてもらい同じ数字だったものとペアを組むらしい。
さて、僕の数字は───……4番。さて、ペアは……
「あ、貴方ですの⁉」
どうやら僕のペアは、先程の赤毛の子らしい。
はい、フラグ建設★




