世界最強はホログラム空間に盗賊を入れる
むかし、むかし。最強の剣使いがいた。その子は、スラム出身だったのにも関わらず、剣術大会で優勝した。その最強の剣使いが優勝した時、インタビューが行われた。
そして、剣術使いが発したその一言は、純粋そのものだったと誰かが言った。
『僕が剣の頂を目指すことができるのは、ただ単に───剣が好きなんです。いや、剣だけじゃないけど……とりあえず、そういうことです!』
その言葉は、世界を熱狂させる一言だったという。
§
少し骨のある集団だと思っていたけど期待外れだった。
そんな残念な思いを胸に納め、思考を切り替える。
さて、と。実験するか。
僕は虚空に手を伸ばし、魔法陣を展開する。その魔法陣は扉となり、僕はそこを潜った。
すると辺りは森から一変し、真っ白な空間が広がっていた。そして、そこにいるのは五人の死体。さらに一人。あの賊のリーダー的存在だったやつだ。ソイツはただ気絶しているだけだ。
まずは五人を生き返らせる。ここは僕の魔法空間だから好き勝手できる。現世で死なずにここで死んだのなら蘇生するなら簡単だ。
なんとなくの気持ちで蘇生させる。この空間は俺が法則だ。だからこんなに無茶なこともできる。
五人それぞれの肉体が繋がっていき、魂も宿る。初めに目を開けたのは、双子の───……どっちだ?
まあなんか背が低い方が目を覚ました。
その背の低い方はこの真っ白な空間を見渡し、こちらをそのクリッとした大きな目で一点見つめた。僕もジーッと見つめる。
その瞬間───
ドゴーン!
僕と彼女の間に電流が迸る。
こ、この子……
「あ、貴方……」
その時、僕と彼女の思考は繋がった。
((───絶対剣術好きだ!))
今日この日、僕は初めて剣術好きと出会った。
§
「ん……」
もう一方の双子の背の高い子が目を覚ました。そして、その開眼一番に見た光景は人生史上奇妙なもので埋め尽くされた。
「アハハハ」
「アハハハハ」
「アハハハ」
「アハハハハ」
なぜならその光景は僕が双子の背の低い方を"高い高い"して二人とも笑っているからだ。目を覚まして一番にこれを見るのはそれは奇妙というほかないだろう。
そこで、僕は背の高い方の子が起きたことに気づく。
「あっ、起きたんだ」
僕は双子の背の低い方を僕の腕から下ろし、背の高い方を向く。背の低い方の子は背の高い方の隣に並んだ。
「名前、教えてくれるかな?」
双子に向けて言う。そして、まずは、と言わんばかりにはっちゃけた様子の背の低い方の双子の一人が手を挙げ、口を開く。
「はいっ! お兄ちゃん。アタシ、ソラーって言うの!」
元気よくニッコリとする顔をしたソラーは先程、僕が殺したはずなのに恨みなどのものは微塵も感じられなかった。
それに対して───
「貴方は一体なんなのですか? それにソラー! 勝手に名前を名乗っちゃいけないでしょ!」
双子の背の高い方は殺意高めにこちらを睨んでからソラーの方を向く。
「なんでなの? ミーネ。こんなにも話がわかる人、"あの人"たちよりもよっぽど信頼できるよ」
ソラーはなんとも間抜けというか、もう一方の子の名前を呼んでしまった。
「ほうほう、そっちの子はミーネというのか」
僕が口を開くと、双子の背の高い方───ミーネが犬歯を剝き出しに、キッと睨んで来た。まるで
『私の名前を呼ばないでっ!』とでも言いたいようだ。
「私の名前を呼ばないでっ!」
当たってたみたいだ。
「別に僕はこれ以上、君たちに危害を加えるつもりはないよ」
「じゃ、じゃあ、一体……! それに私、死んだはずじゃあ……」
違う質問をしたかっただろうが、一度自分が死んでいるという事実にたった今気づいたことによってその疑問が違う質問の方を上回ってしまったのだろう。
「この空間で死んでも、現世に居るときに死んでなければ、この空間で生き返れる。だって、ここは幻想なのだから」
「げ、幻想……?」
「ああ、この世界にホログラムはないから、それを魔法空間で再現して、それを現世の人間を空間に入ると即ホログラム化できるようにする。そんな魔法を作るなんて結構無謀だったけど完成したときはもっと性能をあげなくてはと思い、このホログラムで作られた空間に入った人間は全ての権利や法則を僕に隔離させるようにした。さらにそこで編集された魂、及び肉体である器を常時セーブさせることによって現世に帰ることがあっても最終編集させられた肉体で帰れる。もちろん、編集は先戻りと削除もできるようになっている。ここまで魔法でできるのならもうとことん追求しようとさらに時空間の変化をも操作可能にすることによって現世に存在する法則の8割を支配できた。あとはこの魔法を維持する核を作り上げることによって安定できることがその時に知ることができたので、その核を───」
「ま、まって!」
? もう少しでこの魔法のことを言い終えれたのに。
双子の顔を見るとミーネは満腹みたいな顔をして、ソラーはこの空間でありもしない蝶をいじるように周りにはお花畑の幻覚がみえるようだった。
あれ? もしかして理解できてない?
「もういいから……」
ミーネはうんざりしたような顔でこっちを見た。
「(こんな子供のような見た目して、なんでこんなに魔術のことを語るの? 悪い人ではなさそうだけど……どうみても変態だわ)」
ボソボソとなにかを呟くミーネ。いったいなにを呟いているのだろうか。耳に魔力を包めば聴力も強化されてミーネが呟いていることも分かるのだが、そんなことで魔力を使っても無駄だということくらいは知っている。
まあ、僕は魔力が膨大だからむしろ無駄の方がいいのかもしれないけど。
なんにせよ───
「全員起こすか」
目を覚ますための魔法、それはレニーの寝坊助さん癖を早起きの癖にするための魔法として発明させた魔法。意識とか目の筋肉に魔力を集中させて時間指定をさせれば早起き魔法の完成。
「『覚醒』」
僕がその魔法を展開させると、眠っている全員が目を覚ます。意識もバッチリだ。
「ここは……?」
疑問の顔を浮かべている者達。四人は、辺りを見渡し、最終的には僕の方を見た。
僕はニッコリと笑顔を浮かべる。たったそれだけで戦闘狂以外の三人は恐怖の顔に染まった。なんでだろう?
まあ、いいか。コホン、と咳払いをして、口を開く。
「改めて。僕はハージュ。グレバール公爵家の末っ子だ。君たちは、これから僕の奴隷になってもらう」
ホログラム空間の理屈作るのには苦労しました。




