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僕は全てを極めます!  作者: ゆるん
11/22

世界最強は圧倒する

 ───俺らは、悪名高き盗賊団、【楽導(らくどう)】。ここら辺の裏社会じゃ名が知れている集団だ。今日は、公爵家の旅たちという。


 相手は、御者と、公爵家のガキ一人と、その付き添いの女二人だけだという。他に護衛はいない。なんという楽な仕事だ。


 公爵家ともなれば、連れ去って身代金を用意させれば儲かる。そのとき、もちろん公爵家は武力で対抗していくと思うが、無論、問題ない。


 こちらは、裏社会でかなりの勢力がある方だ。公爵家など敵ではない。


 そして、上の方は何故かこの公爵家を攫うために俺含めてエリート6人を収集させた。甘っちょろい境遇で育った公爵家に、俺たちが敵うわけがないと思っていた───今までは。


 【楽導】の一人ではあるアームイは、魔法で遠くを隅々まで見られる。昼から追跡していたが、そこまではなにも違和感など感じなかった。だが、夜。公爵家のガキが急にこちらの方の森へ入ってきた。


 しかも、誰も連れて行かずに。娯楽遊びのために護衛を連れずに女を選んだ愚か者のやることはやっぱり違うな。


 これはチャンスだ。同じ潜伏している【楽導】の一人であるラッソイに合図をかけるとラッソイは酸の魔法を生み出す。


 それは仲間ながらも恐ろしき速さで公爵家のガキに襲い掛かる。この程度の威力なら死にはしないが瀕死になるほどの威力だ。


 さあ、後はこれでガキを運ぶと───公爵家のガキが短剣でラッソイの魔法を防いだ。

 この場に居る六人全員が身構える。当たり前だ。あんな不意打ちを軽々しく受け止めるなんて。


 まるで、こちらの攻撃を、先に知っていたかのようにあのガキは動いた。今もなお溶けている短剣をポイっと捨て、こちらを睨む。


「まったくつまらない」


 そんなセリフを吐く。こんなの、公爵家でぬくぬく過ごされたガキ程度なのではない。

 まぎれもない、熟練の格闘家。


 その強さに、戦闘狂である【楽導】の一人、グーライが興奮して声を出す。


「そんな軽口を叩ける余裕があるなら、これだって防げるよね」


 グーライの得意魔術である『不可視旋風(カマグルマ)』を発動させる。この魔法は、不意打ちだろうが、分かっていようが関係ない。不可視の刃がどこからともなく飛んでくる。


 第六感が働いていないと無理なもんだ。───が、それをバク宙で避ける。


 なっ⁉ あの技は、我が【楽導】の中でも限られたものしか防げない。しかも、あの避け方はまるであの刃が見えているような……


 さらに公爵家のガキは足で魔法を紡ぐ。足で魔法を紡ぐのは、相当器用じゃないと無理なものだ。しかも、あの魔法を紡ぐスピード。両手ですらあのスピードはあり得ない。それを、足で行うというのはもう化物といっていいだろう。


 いや、手よりも足の方が器用なのか? もしそういう才能があるなら突然変異と言っていいだろう。


 公爵家のガキが発動した魔法は、見たことのない魔法。これは、既存の魔法ではないだろう。アイツが作った魔法だ。


 炎が水のように流れ、森を燃やす。まったくとして不自然で、強力な魔法だ。こんな魔法をこんな子供が作る。それは、ありえないことだ。


 どうせ、公爵家のやつらがこのガキに魔法を教えたのだろう。


 ちくしょう! 公爵家だったら、こんなガキでも魔法を使える才能があるのか⁉ ふざけるな!

 憤る俺に反して、興奮を覚えているグーライが頬を紅潮しながら言う。


「森で火系統魔法を打つとか、イカレてるね!」


 確かに、そんなことをするやつはイカレている他ない。


 たて続けに俺はガキに向かう。俺とガキの距離が目と鼻の先になった。このまま魔力を込めた拳を振るおうとしたその刹那。


 俺が倒れた。自然に。その行為に、俺の思考は疑問の渦に巻かれたが、数瞬後、ようやく自分がこのガキに倒されたのだとわかった。そして、俺の体が動かないということもわかった。ビクともしない。


 そんな俺を見たからか、他の【楽導】のメンバーもガキに向かっていく。

 そこからは、まるでお遊戯会を見ているようだった。


 アームイは、女性特有の色気を見せていたが、そんなのはお構いなしと言わんばかりにガキはアームイに魔法を見舞いする。結局、最後はなにか特殊な魔力が籠った掌にアームイは触れてしまい、倒れた。


 その倒れたアームイをガキがなにか魔法で消した。


 こんなにもあっさりと【楽導】のエリートが居なくなった。だが、それでもラッソイはなにも恐怖せずにガキへ向かった。


 ラッソイはお得意の魔法をガキにするが、ガキもラッソイと同威力の魔法を発動する。


 いや、あれはそれ以上だ。ガキの魔法はラッソイの魔法を打ち消してもなお、勢いを止めずにラッソイへ向かった。


「おいおい、まじかよ」


 そんな一言を漏らしてラッソイは無数に飛び掛かる魔法でやられる。そして吹っ飛ばされたラッソイはガキの魔法でまたもや消え去った。


 その後は双子の少女、ソラーとミーネが協力してガキに突っ込んだ。


「こんな小さな子でもこういうことをしているのか。それかエルフか?」


 ガキはなにかそっとぼやくと、二人に歩く。その足取りは、不気味そのものだった。


「やっぱり少女の見た目をいたぶるのはダメだろうなあ」


 そんなことを言うと、それでもガキはどこからともなく斧を構えた。


「でも、僕は男女平等主義だから。ごめんね?」


 ガキは斧を振り回すと、二人を切り刻んだ。そう、一瞬で二人の少女の体をバラバラにしたんだ。

 そのバラバラになった肉塊も全てガキの魔法で消え去った。


 あとは───戦闘狂、もといグーライが恍惚の表情でガキを睨んだ。


「お前、いいなあああああああ! 名前、なんていう?」


 見開いた目で()め回すような視線をガキに送る。ガキは、落ち着いた表情で、その言葉を発す。


「ハージュ。ハージュ・ア・グレバールと言う」


「そうかそうか。ハージュ。覚えた。僕の名前はグーライ。性はない。じゃあ! やりあおうぜええ」


「そうか、グーライ。でも、悪いが───お前と戦う気はない」


 刹那、ガキ───ハージュは手を虚空に向ける。それに応じて、空間が、壊れた。


 そう、ハージュは空間ごと、グーライを切った。


「ガッ……?」


「すまんな、後で」


 そんなグーライも魔法で消し、こちらを見つめた。

 俺は恐怖ながらも、声を上げた。


「お前は……一体、何者なんだ?」


 体の奥底からにじり絞るくらいの声がでそうな笑みを浮かべたハージュは、ふっくらと答える。


「なにも知らなくていいさ」


 いまだ動けない俺に向かって伸ばした手は、怖いくらいに青白い肌をしていた。それが、夜でもハッキリと分かるくらいに。

多分、今年最後の投稿ですね。今回のお話はあえてハージュ視点じゃない方にしました。その方が無双している感がすごそうだと思ったからです。でも、困ったのがハージュが無双しすぎてどんな展開にしようか迷いました。


カクヨムの方で特別編を公開できそうにないのでこっちの方でしたいと思います。(四千兆回目の転生日記)

※見たくない人は見なくてもいいです


「あの、正月です!」


「もういいよそれ」


「パル……辛辣」


「コタツとか用意してるんですよ! みんなで遊びましょー!」


「いや……異世界でそれやるのかよ。あとコタツの関係性は?」


「早速、行きましょ!」


「あ……無視ですか」


***

「はい、これで二百十三回戦中、二百十三勝、零敗ね」


「クライシスさん! 流石に本気出しすぎです!」


「にしても、お前。もう顔に墨書くところないぞ、どうしたらそうなるんだ?」


「クライシスさんが羽子板で本気出すから悪いんですよ!」


***

「その後も、ゲームやったけど……」


「……全部、勝利した」


「アメリもそうだろ?」


「……ブイ」


「おうおう、アメリさん、そんなに可愛くピースしても、なにもあげないぞ?」


「……お菓子あげてるけど」


「サービス」


「やっぱり、正月はゲームよりコタツでミカン食べる方がいいですよ!」


果拿(かな)はそう言っているけど、ただゲームに負けすぎて不貞腐れているだけです」


「ちょ、ちょっと学巳(さとみ)ちゃん、そんなわけないでしょ?」


「ミカンうめえ」


「あれ、新真ってそんなにミカン好きだったのか?」


「……別に」


「ホントにお前は素直じゃないよな」


「クライシスさんもそう思いますか! やっぱそうですよね!」


「おい、香穂里(かおり)。お前、言わせておけば……」


「なに? なにか言うつもり?」


「てかさ」


「……パル?」


「これいつも通りじゃね?」


「「「……確かに!」」」

Fin


良いお年を。

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