世界最強は遅すぎた
初投稿ですね。モチベが上がるようによろしくお願いします。
ずっと昔から、信じていた。僕は、やればできる子なのだと。
だから、できることは全てやった。武術、芸術、道徳、判断力……トレーニングすればできることを全てやった。
もちろん、その因果に応え、結果は裏切らなかった。その因果と結果で僕は今、世界最強と言われている。そして、かなりの容姿端麗ともいわれている。それも頑張ったのだ。できることを全てやった結果なのだ。
でも……遅すぎたのだ。そう、世界最強といわれる僕の年齢は、もう30過ぎ。この世界では、もうおっさんだ。しかも、僕は流行り病に掛かり、寝たきりの状態となっている。
どの分野でも世界最強といわれた僕でも、病には適わなかったのだ。医療技術も、もっと早く学べば……後悔しても遅い。そう、遅いといえば、僕は恋愛にも世界最強とはならなかった。なったらなったで屑男確定だが、女っ気、一つもないというのは、なかなかさみしいものだった。
来世があれば、その時は……そう思うような、未練たらたらしいい人生だった。
「というのが僕の人生でした」
目の前に居る白衣を着た老人を見上げながら応える。
ここは……どうやら天界というものらしい。あの死ぬ行く人が行くところだ。僕は信仰心など微塵にも無かったので、神は信じていなかったが、どうやら本当らしいのだ。
「あのー聞いてます?」
ギリ顔面が見えるかの境界線にいる巨大な老人に声をかける。先程から一向に向こうの音が響いていない。
「ああ、もちろん聞いておるとも。にしても……そなたはかなりの善行を突き進んだ人生をしているのだな。生前、其方は慈善活動にも力を入れ、貧しい子供にも食料や娯楽を与えた」
「まあ、世界最強といわれてたもんで……金の方にも余裕があったため、やった感じですね」
どうやらこの神様は心が読めるらしいので嘘を吐く理由はないだろう。
「まあ、其方はべつに悪行をしてたものでもあるまい。では、転生をすることにしよう」
そう発した神に僕は激しく心を揺さぶった。
「転生!転生ですか!もう一回、また人生をやりなおせるんですね!」
前のめりになって神様に必死に食らいついた。これで嘘を吐かれたのなら、堪ったものではないから。聞き間違いが無いように必死に何度も聞いた。
「あ、ああ。そうだ転生だ。なにか思うところがあるのか?」
その質問に、僕は即答をする。
「別にありません!最高です!あと!なにか転生した後の特典みたいのは流石についてこないですよね?」
少し腰を低めに自信が無さそうに、その場で縮こまった。
「いや、其方はかなりの善行を積んだのだから、そういうこともできるぞ?あくまで、常識の範囲内だが」
その言葉に、僕はさらなる興奮を覚えた。もうじっとしてられる余裕はなく、そこに世界最強という肩書は無いように思える姿だった。
「じゃあ、早速質問していいですか?」
「ああ、もちろん」
肯定の意味を込めた首肯をしてみせた神様に感謝を覚えつつ、質問をした。
「僕がいく先は、どんな世界なのですか?」
「うむ、其方の行く世界は、所謂───異世界。剣と魔法がいきかい、騒乱の世となっている」
魔法。それは非科学的で、化学では説明のつかないこともできる代物。なるほど、新たに極める科目が一つできたが、そのお陰で進められることも増えそうだ。
僕は、速読を極めるために沢山の本を読み、内容を理解した。その中にはラノベも含まれており、異世界にはかなりの理解がある。
質問を返してくれた神様には申し訳ないと思いつつ、返答をせずに違う質問をした。
「では、その世界で戦争などは?」
「其方が行く時代では暫くはない」
よかった。戦争が無ければ、じっくりと鍛錬が積める。でも、暫く───か。きっと僕が生まれて何年かすると、戦争が始まるのだろう。そう悠長にしてられないな。
「では、転生をした後の特典をきめていいですか?」
「うむ、できぬことは無理だがな」
そのような忠告が間を挟み、少し不安を抱きつつも、僕は告げる。
「じゃあ、『生前の全記憶の保持』をしてください」
「……む、それだけでよいのか?」
少しだけ間が空いたその言葉に、僕は何か変なことをしてしまったのかと心配するほどとなり、口を閉ざしてしまった。
暫くの静寂が僕らを体験させ、それを破ったのは、向こうの方であった。
「えと……さ。なんかもっと他にないの?最強スキルを下さい!とか、伝説の武具を下さい!とか、神の能力を下さい!とか、さらに言えば、神にしてください!とか……それなのに、生前の記憶をあげるだけって……なんか、さあ……仮にも君って世界最強で、しかもかなりの人徳を積んでるから凄い優遇されてるのね?だからワシにだって対面で話してし……今、君あれだよ?下手な神より地位、上だよ?そんな人物をそんな冷遇でいいのかなって……」
かなりの長文に、ポカンと口を開けるわけではないのだが、呆けてしまった。その様子を見た神様は、さらに言葉を続ける。
「えーっと……つまり、君をそんな記憶保持だけで済まされる人物じゃないんだよ?」
言葉が終わったのか、僕の言葉を待っているようだった。待たせては悪いと思い、僕も口を開いた。
「いえ、遠慮しときます。……僕は記憶さえあれば、また上にいけるので」
その一言に神様は目を見開き、口角を少し上げた。
「そうか、では転生をすませるとしよう。……それ、其方の体が透けてきたぞ?」
神様は、手を挙げたかと思うと、僕を見つめ、言った。その言葉に従うように僕は体を見ると、見事に透けていたのだった。
「うおっ!すげ」
自分の体が透けている、という事実に信じられないという思いが凝縮され、その透けている体を凝視する。
「では、もうあと30秒も過ぎれば、転生が完了される。なにか言い残したことはないか?」
その言葉は、暖かく、なにかを見据えた声色だった。
だから、意を決して、神様を見つめる。そして───放つ。
「神様。見ててください。必ずや、頂点に上りざくであろう僕の人生を」
そんな、自信に満ち溢れた言葉を。そして、僕はそれと同時に、完全にそこから居なくなった。
§
「創世神様?次の業務が───創世神様?」
ワシに使える神、センの言葉に、上の空であった自分が引き戻される。
「ああ、すまんな、考え事をしていて」
「彼の事ですか?」
そう、あのまっすぐな青年。30を過ぎようとも変わらぬその心に、ワシも少々、心躍らせてしまった。
「そうだな。ワシは───奴が気にいった。あ奴に、ワシの加護をつけようと思う」
その一言に、ワシに使える神は、驚愕をする。
「創世神様の御加護を⁉それは何故ですか?それほどの技術がおありで?」
「あ奴の人生に、心底ワシは惚れ込んだ。真っすぐに、誰にも縛られぬ人生。まるで、この心の高鳴りは───そう、世界を開闢した際を彷彿とさせる何かを、やつから感じた」
ワシの告白に、センは呆れたような表情でワシを見つめた。
「創世神様……まさかそのような心で、加護をつけるのですか……貴方様ほどの加護を!」
「ああ、実に愉快で滑稽な話と思うか?それならそう思ってくれて構わない。だが、ワシはそれほどの価値があの男にあると思ったのだ」
「…………このセン。貴方様に使えて早1508億年。貴方様の性格など誰よりもわかっております」
急なセンの独白。それは、このワシの行動の肯定と受けるか、否定と取るか。
「だから、この行動は失望をしたと?」
ただ、センは黙る。だが、やがては口を開く。
「もう今更ですよ。そんな無茶は」
その一言に、ワシはニカッと笑う。
「では見守るとするか。なに、たかが数百年。ワシ等にとっては昼寝と同義よ」
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