病院
「そういえばさ、病院に行ったところで教えてもらえるものかな?」
「定期健診という形でいいと思う。入院しないといけないような何かがあったわけだしさ」
今から病院で僕の過去の症状について聞こうというのだ。大通りの脇の歩道を歩きながら話す。
「それ、ほんとに大丈夫?」
「あとは自然な感じで聞き出せば」
「いや……そうじゃなくてさ」
と、僕の隣を歩く晴柀が、苦笑いしながら言った。恐らく僕は何か見当違いなことを言っていたのだろう。まあ僕は気にしないが。
「見えたよ、あれ」
晴柀が指さした方向には総合病院と書かれたかなり大きな建物があった。その後しばらく歩いた後、中に入ると白を基調とした綺麗な受付だった。
「あ、呼ばれてるよ」
「じゃ、行ってきます」
名前を呼ばれたので、晴柀は受付に残して奥に進んだ
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「で、どうだった?」
と、ベンチに腰掛けた晴柀が、ジュースの蓋をあけながら言う。
「頭部外傷らしい。原因は階段から落ちたこと、あと記憶喪失も」
「階段から……誰かに押された?」
「いや、家から救急車で運ばれたらしい。10月だったとも言ってた」
晴柀は驚いたような顔をした後、何か考え込んでいる。
「家族?」
「いや、家族ならもっと確実な方法で殺すはず。毒とか」
「ついかっとなってやっちゃったとか?」
「家族だからな……殺すとしたら相当考えた後だろう。それに、昔はどうかは知らないが、今は家族も仲がいいからな、僕は家族ではないと思う」
「なるほど…………うーん」
晴柀は困った顔をしながら、うんだのあーだの謎の唸り声をあげている。正直僕にもにも全くと言っていいほどわからない、寧ろ今日のせいで分からなくなったといってもいいだろう。
「そうだ!」
ハッと明るい顔になった晴柀が、やたら大きな声でいった。
「雨下君の家に行こう!」
「え……」
まあ言いたいことはわかるが、僕は決してそんなつもりはないが、そう簡単に女の子が男のいえにあがりこんでいいのだろうか? 僕が覚えてないだけでそれが普通なのかもしれないが。
「僕はいいけど……」
「じゃあ行こう。事件は現場で起きているんだよ!」