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詩❲情景❳

擬態するとんぼ

作者: 日浦海里

落ちも何もない、

日記のような文章です


それでも興味をそそられた方はどうぞ

家の近くを歩いていて

ふと、何かが引っ掛かり立ち止まる


いつもの通り道

いつもの景色

なのに何か違和感がある


その違和感をはっきりと捉えることが出来ないまま

周囲を見渡す


進行方向向かって左側には

縁石があって、その先には車道がある

こちらには違和感を感じるようなものは何もない

あったとしても、

こうして改めて見ればすぐに気づくだろう程度には何もない


進行方向向かって右手側には

家の中への視線を遮るための垣根がある

しばらく手入れされていないのか

垣根の植物は同じ背丈ではなく、

いくつかの枝が飛び出すように伸びている


梅雨も明け、

水と太陽で大きく育ったのだろう

垣根にはそうした飛び出た枝がいくつも見つかった


その飛び出した枝の先に、違和感の原因がいた


垣根の植物の色と、家の壁の色に同化するように

とんぼが一匹、枝の先に止まっていた


トンボが広げた羽の先にある黒字の文様が

違和感の正体だったらしい


トンボにそのつもりはないだろうけど、

それはまるで擬態のように見え

思わず笑いかけて、固まった


トンボの姿をよく見ようと目を凝らした時、

それに気づいた


垣根の植物の枝の先に止まっているトンボは一匹ではなかった

見つけたトンボのいる枝の隣の隣ぐらいの枝に一匹。

そのさらに隣手前の枝に一匹。

反対隣の枝にも一匹。


小説なら、ここで、

実は垣根に見えたものはすべてトンボで

私が気づいた瞬間、トンボが一斉に飛び立つ、

なんて演出を迎えることだろうが

現実世界である以上そんなことはなく

しかし、見渡して判別が出来た数メートル程度の垣根の枝に

8匹ものトンボが止まっているのを見つけた


とんぼは変温動物のため、

太陽を浴びるために枝の先に止まる、というが

この日はとても暑い日で、

わざわざ日向ぼっこなどしなくても

体は相当な暑さだろう


何か他に理由があるのではないだろうか


道端に立ち止まって他人の家の垣根をじっと眺める私は

端から見ればただの不審者だったに違いないが

この時の私は、そんなことも思いつかないほど真剣に

この現象の「なぜ」を考えていた


その時、近くのマンションを吹き抜ける風の音がした

金切声のような甲高い音を立てて吹き抜けた風は

周りの木々を大きく揺らしていく


もしかしたら、この風よけのために

羽を休めているのかもしれない


とんぼたちが止まっている垣根は、

周囲の建物との位置関係からか、

ちょうど強い風が吹き抜けない

静かで落ち着いた場所だった


それは正解ではなかったかもしれないが

なんとなく私の中で腑に落ちた答えだった


この日は風も強かった。

空を舞う鳥が風を受けていつまでも前に進むことなく

ただ同じ場所でひたすら滑空を強いられる程度に強かった


突然の出会いから思わぬ時間を使ったが

身の回りにはまだまだ自分の気づいていないことが隠れていることを知れた私は

嬉しい気持ちでその場を去った

このような文章を最後までお読みいただき本当にありがとうございます。


もしも良ければ、皆様の周りにある

ある時ふと気づいた出来事などを

感想の中で教えて頂けたら幸いです

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― 新着の感想 ―
[良い点]  大事!  何気ない、気づきって! [一言] 「ハリセン」って。 「張り倒す」「扇子」なんだなぁ。 「ハリセンボン」のイメージに、ひきずられすぎる。
[一言] 代わり映えの無いように思える日常の中でも、ふとした気付きや新たな発見があったりしますね。
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