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【書籍化】碧玉の男装香療師は、ふしぎな癒やし術で宮廷医官になりました。  作者: 巻村 螢
第三部 碧玉の男装香療師は、国を滅亡させる!?

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1-7 兵は拙速を尊ぶですよぅ

「誰かから答えをもらうのは簡単だが、自分で出した答えの方が、後々どういう結果になろうが受け入れられるものさ。それはお前だけじゃない。相手がいることであれば、相手も真剣に悩んだ答えの方が嬉しいものさ」


 燕明はいつも、自分にはない新たな視点を与えてくれる。

 月英にとってはそれが刺激的であり、楽しく、目から鱗が落ちるようであったりした。


「きっとこれからお前は様々なことを経験していく」


 燕明から貰ったものは既に両手では足りないくらいある。


「苦しいことも、楽しいことも、悲しいことも、嬉しいことも……もちろん今みたいに悩むことだって幾度となくある」


 優しかった養父の子順が亡くなって、冷えた感情しか持てなくなった月英の心に、再び火を点してくれたのも彼だ。


「その全てを全力で楽しめ」


 月英の世界を鮮やかに色付けてくれたのも、間違いなく彼だった。

 月英は「はい」と力強く頷いた。


「少なくとも俺は、蔡京玿を赤猪の太守に任じた時は楽しんでいたな」

「陰険な皇帝ですね」

「皇帝は善人なだけじゃやっていけないのさ」


 燕明はしたり顔で呵々と笑っていた。


「でもそっか……悩むことは悪いことじゃないんですね」


 答えが出せないことを申し訳なく思っていたが、確かに燕明の言うとおり、適当に返す方が失礼だろう。


 ――万里にはやっぱりもう少し待ってもらおう。ちゃんと伝えれば分かってもらえるはずだもの。


 結論を急がなくて良いと思ったら、急に腹が虚しくなってきた。


「何だかほっとしたら、お腹が空いちゃいました」


 ぐきゅううぅ、と月英の腹部からもの悲しい鳴き声が発せられる。

「久々に聞いたな」と燕明は笑っていた。


「月英、俺の部屋へ来ないか? 月英が来ると分かったら、藩季が色々と持ってくるだろうさ。点心とか」

「え! 点心ですか!」


「ぜひ行きます!」と言いかけて、月英ははた、とこの状況の不自然な点に気づいてしまった。


「……陛下って何でここにいるんですか」

「い、いや……それは……」


 燕明の目が泳いでいた。

 彼は龍冠宮の方からやってきたし、何か用事を済ませたようにも見えない。

 そして、これから自分と一緒に部屋に戻るということは――。


「どうせ、また仕事に追われて逃げてきたんでしょう。僕を連れて行くことで、藩季様からのお小言と追求を躱そうとしてますよね」

「あ、はははは! さあ行こうか月英。余計なことは考えるな」


 ぐいっと肩を抱き寄せられ、半ば拘束されたかたちで進路を決められる。

 瞼を重くして隣の燕明を見上げれば、彼は鼻歌を歌いながら月英とは反対側を向いていた。


「まったく……仕方ありませんね」


 薄く嘆息した月英だったが、その表情は柔らかい。


「桃饅頭は僕のものですからね」

「ああ、好きなだけ食べろ」


 二人は並んで龍冠宮へと向かうのであった。



 

        ◆◆◆


 月英は香り付けした茶葉を持って、亞妃の芙蓉宮を訪れていた。


「まさかこんなに早く茶葉が届くとは思ってもみませんでした。行動が早いですね」

「兵は拙速を尊ぶですよぅ。何事ももたもたして機会を逃してはだめですからね」

「何ですか、それ?」

「兵法ですぅ」


 まさか、まったりとした口調で侍女から兵法を教わるとは思わなかった。


「それで、例のブツは仕上がったんですか」


 わくわくと今にも聞こえてきそうなほどに、鄒鈴は目を輝かせ腕をわきわきさせており、率直な反応に月英は苦笑する。


「その言い方だと、僕が危ない物を作ったみたいなんですが……」


 亞妃の侍女である鄒鈴から申し出があった翌日には、香療房に茶葉が届けられていた。

 そこで月英は精油を数種類選び、小分けにした茶葉にそれぞれの香り付けを行った。

 やはり嗜好品として個人で飲むのと、商売品として万民に出すのとでは、作る緊張感がまるで違う。


「わたくしの、待雪草スィーファの香りのものとはまた違うのですか?」


 亞妃が、待雪草で香り付けした茶葉が入れてある茶筒をチラと目で示す。

 視線の先――棚の上には、鮮やかな花模様が美しいな青磁の茶筒が置かれていた。


「ええ。甘味処に卸すと聞いたので、花の香りよりも果実の方が馴染みがいいかなと思って、果実系で香りを付けてみました」









いよいよ来週10日に『碧玉の男装香療師は』2巻が発売になります!


皆様のおかげで2巻を書かせてもらえることになり、大変感謝しております。

出来れば、もっと先の萬華国の世界を綴っていければと思うのですが、

こればかりは私個人の意思ではどうにもならないのが実情です。


ですので、小説を書き始めて初めて言わせていただきます。


『お願いします! 買ってください!!』


今までは買ってというのもおこがましいと思い、読者の皆様に購入を求めるようなことは一度も言ってきませんでした。

しかし、この先も月英達の世界を書いていきたいと思い、このようなお願いをさせていただいております。

申し訳なさと、自分ふがいなさでいっぱいなのですが

どうか、お力をお貸しいただけますと幸いです。


引き続き、碧玉の男装香療師をよろしくお願いいたします。

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