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その他/短編~中編

王様の大きなベッド

作者: 砂臥 環
掲載日:2020/11/08

王様(おうさま)のお部屋(へや)には大(おお)きなベッドがあります。



王様(おうさま)はりっぱなそのベッドがたいそうお気(き)に入(い)り。

みんなに自慢(じまん)したくてしかたがありません。


なにしろ大(おお)きなベッドには、大(おお)きなお屋根(やね)がついていて、柱(はしら)にはステキな動物(どうぶつ)たちが、たくさんほってあるのです。



でも王国(おうこく)にはきまりがありました。

王様(おうさま)のお部屋(へや)に入(はい)っていいのは王様(おうさま)と、お掃除(そうじ)の人(ひと)だけなのです。


王様(おうさま)が国(くに)のきまりをやぶるわけにはいきません。



どうにかみんなに見(み)せびらかしたい王様(おうさま)は、考(かんが)えました。



「そうだ、部屋(へや)から出(だ)してしまおう」



王様(おうさま)はお城(しろ)ではたらく人(ひと)たちに言(い)って、ベッドを部屋(へや)から出(だ)してもらいました。




「王様(おうさま)、ステキなベッドですね!」


「そうだろう、そうだろう」



王様(おうさま)はすっかりごきげんです。




ですが、雨(あめ)がふってきました。


ベッドのお屋根(やね)は布(ぬの)でできているので、このままだとぬれた重(おも)みで落(お)ちてきてしまいます。



「そうだ、ちゃんとした屋根(やね)もつけよう」



王様(おうさま)は大工(だいく)さんをよんで、ベッドにちゃんとしたお屋根(やね)をつけてもらいました。

これで雨(あめ)がふっても大丈夫(だいじょうぶ)。



大(おお)きなお屋根(やね)のついた、大(おお)きなベッド。


ますます王様(おうさま)はこのベッドが気(き)に入(い)り、もっとみんなに見(み)せたくなりました。



「そうだ、車輪(しゃりん)をつけて、馬(うま)にひかせよう」



なんと、大(おお)きなお屋根(やね)のついた大(おお)きなベッドは大(おお)きな馬車(ばしゃ)になりました。



大(おお)きな馬車(ばしゃ)で町(まち)を移動(いどう)しながら、王様(おうさま)はみんなに自慢(じまん)します。



「王様(おうさま)、ステキな馬車(ばしゃ)ですね!」


「そうだろう、そうだろう」



王様(おうさま)はすっかりごきげんです。



「のってみたいなぁ……」



馬車(ばしゃ)をお母(かあ)さんといっしょに見(み)ていたぼうやが、うらやましそうにそう言(い)うと、お母(かあ)さんは「これ、いけません」とぼうやをたしなめます。


町(まち)にも馬車(ばしゃ)は走(はし)っていますが、お金(かね)がかかるのです。


ぼうやのお母(かあ)さんは、たくさん荷物(にもつ)を持(も)っていました。

よく見(み)ると、町(まち)の中(なか)にはたくさん荷物(にもつ)を持(も)っている人(ひと)たちが、いっぱいいます。



「ふむ…………」



王様(おうさま)は考(かんが)えました。


これは馬車(ばしゃ)ですが、ベッドです。

ですが、ベッドにしても王様(おうさま)が10人(にん)横(よこ)になれる大(おお)きさです。


もしもこれにイスをつけて、きちんとした馬車(ばしゃ)にしたら、どれだけたくさんの人(ひと)がのれるでしょう。


たくさん人(ひと)がのれたら、そのぶんふつうの馬車(ばしゃ)よりも、安(やす)いお金(かね)でのれるはずです。




その夜(よる)。


王様(おうさま)はお城(しろ)のお庭(にわ)にとめた、馬車(ばしゃ)のようなベッドで、横(よこ)になりながら、考(かんが)えました。


これはまだ、ベッドですからね。


でもお外(そと)のベッドは、お屋根(やね)とお布団(ふとん)があっても少(すこ)しさむいな、と王様(おうさま)は思(おも)いました。


いくつもの星(ほし)がキラキラと輝く中(なか)、王様(おうさま)はお布団(ふとん)から出(で)て、車輪(しゃりん)とお屋根(やね)のついたベッドをながめます。



「うん、これはカッコイイな!」



王様(おうさま)の大(おお)きなベッドは、りっぱな車輪(しゃりん)と大(おお)きなお屋根(やね)がついて、お部屋(へや)にあったときよりずっとかっこよくなっていました。



「みんなに自慢(じまん)したいな」



やっぱり王様(おうさま)はそう思(おも)いました。




次(つぎ)の日(ひ)。


王様(おうさま)はさらにベッドを改造(かいぞう)して、大(おお)きな馬車(ばしゃ)にしました。


もうベッドではありません。



王様(おうさま)は、大(おお)きなお城(しろ)の窓から、小(ちい)さなぼうえんきょうで町(まち)をながめています。


ぼうえんきょうにうつるのは、うれしそうに大(おお)きな馬車(ばしゃ)にのる、町(まち)の人(ひと)たちです。


大(おお)きくてかっこいい馬車(ばしゃ)は大人気(だいにんき)。

おねだんも安(やす)いので、みんなきがるにのります。


あの日(ひ)のりたがっていたぼうやとお母(かあ)さんも、ニコニコしながらのっているのが見(み)えました。



「ふふふ、どうだ。 カッコイイだろう」



お城(しろ)の窓からなので、王様(おうさま)のつぶやきはみんなにはとどきません。


でもみんなのうれしそうな声(こえ)は王様(おうさま)にとどいているのです。




王様(おうさま)の大(おお)きなベッドはかっこいい馬車(ばしゃ)になってしまったので、王様(おうさま)のベッドは小(ちい)さくなってしまいました。

小(ちい)さくなった、とは言(い)っても、ふつうのサイズですが。


ふつうのサイズのベッドで、王様(おうさま)はかっこいい馬車(ばしゃ)の夢(ゆめ)を見(み)ます。




かっこいい馬車(ばしゃ)はみんなをのせて、町(まち)を走(はし)ります。


明日(あした)も、きっとこれからも。




☆おしまい☆

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― 新着の感想 ―
[良い点] やあ。これはいい。童話らしい童話です。 王様の嬉しい気持ちがこちらにまで伝わってきました。 [一言] 王様のベッド。私も乗ってみたい!
[一言] 王さま、ベッドを改造していくうちに、 「む、風が吹くと寒いな。よし、壁をつけよう!」 屋根と壁のあるベッド、それはもう王様の寝室です。 他の人は入れません。壁のせいでベッドは見れません。 王…
[一言] ほっこりする、なんて素敵なラストなんでしょう!!
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