王様の大きなベッド
王様のお部屋には大きなベッドがあります。
王様はりっぱなそのベッドがたいそうお気に入り。
みんなに自慢したくてしかたがありません。
なにしろ大きなベッドには、大きなお屋根がついていて、柱にはステキな動物たちが、たくさんほってあるのです。
でも王国にはきまりがありました。
王様のお部屋に入っていいのは王様と、お掃除の人だけなのです。
王様が国のきまりをやぶるわけにはいきません。
どうにかみんなに見せびらかしたい王様は、考えました。
「そうだ、部屋から出してしまおう」
王様はお城ではたらく人たちに言って、ベッドを部屋から出してもらいました。
「王様、ステキなベッドですね!」
「そうだろう、そうだろう」
王様はすっかりごきげんです。
ですが、雨がふってきました。
ベッドのお屋根は布でできているので、このままだとぬれた重みで落ちてきてしまいます。
「そうだ、ちゃんとした屋根もつけよう」
王様は大工さんをよんで、ベッドにちゃんとしたお屋根をつけてもらいました。
これで雨がふっても大丈夫。
大きなお屋根のついた、大きなベッド。
ますます王様はこのベッドが気に入り、もっとみんなに見せたくなりました。
「そうだ、車輪をつけて、馬にひかせよう」
なんと、大きなお屋根のついた大きなベッドは大きな馬車になりました。
大きな馬車で町を移動しながら、王様はみんなに自慢します。
「王様、ステキな馬車ですね!」
「そうだろう、そうだろう」
王様はすっかりごきげんです。
「のってみたいなぁ……」
馬車をお母さんといっしょに見ていたぼうやが、うらやましそうにそう言うと、お母さんは「これ、いけません」とぼうやをたしなめます。
町にも馬車は走っていますが、お金がかかるのです。
ぼうやのお母さんは、たくさん荷物を持っていました。
よく見ると、町の中にはたくさん荷物を持っている人たちが、いっぱいいます。
「ふむ…………」
王様は考えました。
これは馬車ですが、ベッドです。
ですが、ベッドにしても王様が10人横になれる大きさです。
もしもこれにイスをつけて、きちんとした馬車にしたら、どれだけたくさんの人がのれるでしょう。
たくさん人がのれたら、そのぶんふつうの馬車よりも、安いお金でのれるはずです。
その夜。
王様はお城のお庭にとめた、馬車のようなベッドで、横になりながら、考えました。
これはまだ、ベッドですからね。
でもお外のベッドは、お屋根とお布団があっても少しさむいな、と王様は思いました。
いくつもの星がキラキラと輝く中、王様はお布団から出て、車輪とお屋根のついたベッドをながめます。
「うん、これはカッコイイな!」
王様の大きなベッドは、りっぱな車輪と大きなお屋根がついて、お部屋にあったときよりずっとかっこよくなっていました。
「みんなに自慢したいな」
やっぱり王様はそう思いました。
次の日。
王様はさらにベッドを改造して、大きな馬車にしました。
もうベッドではありません。
王様は、大きなお城の窓から、小さなぼうえんきょうで町をながめています。
ぼうえんきょうにうつるのは、うれしそうに大きな馬車にのる、町の人たちです。
大きくてかっこいい馬車は大人気。
おねだんも安いので、みんなきがるにのります。
あの日のりたがっていたぼうやとお母さんも、ニコニコしながらのっているのが見えました。
「ふふふ、どうだ。 カッコイイだろう」
お城の窓からなので、王様のつぶやきはみんなにはとどきません。
でもみんなのうれしそうな声は王様にとどいているのです。
王様の大きなベッドはかっこいい馬車になってしまったので、王様のベッドは小さくなってしまいました。
小さくなった、とは言っても、ふつうのサイズですが。
ふつうのサイズのベッドで、王様はかっこいい馬車の夢を見ます。
かっこいい馬車はみんなをのせて、町を走ります。
明日も、きっとこれからも。
☆おしまい☆