桃から生まれた桃太郎。レベル5だけど諸事情で最強なので鬼退治に行ってきます!! ~もしも桃太郎が書かれた時代になろう系主人公が流行ってたら~
昔々ある所に、お爺さんとお婆さんが住んでいました。
ある日、お爺さんは山に芝刈り。
お婆さんは川に洗濯に行きました。
お婆さんが洗濯をしていると川上の方から大きな桃がドンブラコドンブラコと流れてきました。
「この大きな桃を持って帰れば、爺さんも喜ぶわい!!」
お婆さんは、この大きな桃を家まで運んでいきました。
*****
「こんな大きな桃は見た事がないわい!!」
お爺さんは、とても喜びました。
「そうじゃろ?」
お婆さんも得意気です。
「所で、川からよく1人で運んで来られたのう?
洗濯物もあったのに大変じゃったろ?」
体の細い、お婆さんをお爺さんは心配しました。
「川から担いで来ただけじゃが? 驚くほどの事かのう?」
お婆さんは、平然としています。
気を取り直し、桃を割ってみると中から元気な男の子が生まれて来ました。
「なんと!! 中から子供が出てきたわい!!」
驚いた、お爺さんは腰を抜かしてしまいました。
「桃から子供が生まれただけじゃが? 驚くほどの事かのう?」
お婆さんは平然としています。
*****
2人は男の子に桃太郎と名付け、それはそれは可愛がって育てました。
桃太郎はスクスク育ち、ある日お爺さんとお婆さんに言いました。
「僕は鬼が島に鬼退治に行かなくては行けません」
その言葉にお爺さんは、必死に反対しました。
「桃太郎!! お前のステータスでは無理じゃ!!」
桃太郎のレベルは、たったの5でした。
【攻撃力:8】
【防御力:7】
【素早さ:9】
ステータスが全て100を超えると言われている鬼には、とても太刀打ちできません。
お婆さんは黙って台所に行くとキビダンゴを作り桃太郎に渡しました。
「どうしても行くというなら、これを持ってお行き」
「お婆さん!!」
お爺さんはお婆さんの行動に驚きましたが、止める事はできませんでした。
「お爺さん!! お婆さん!! 行ってまいります!!」
お爺さんとお婆さんに見送られ、桃太郎の冒険が始まりました。
*****
「姉ちゃん!! ちょっとくらい良いじゃんか!!」
「あぅ……困りますワン……」
桃太郎が旅を続けていると、犬型の獣人の女の子が3人組の男に絡まれていました。
「こら!! お前たち!! 止めなさい!!」
正義感の強い桃太郎は、すぐに止めに入りました。
「なんだ? 女の前だからって格好付けやがって!!」
「やっちまえ!!」
「イーーー!!」
しかし3人組は桃太郎の話など聞かずに襲い掛かって来たのです。
【テラ・スパーク】
桃太郎が呪文を唱えると3人の目の前に巨大な雷が落ちました。
「ばっ馬鹿な!!」
「こいつ、レベル5な上に最弱職の農民じゃないのかよ!!」
「イーーー!!」
桃太郎の攻撃に驚いた3人組は、そのまま慌てて逃げて行きました。
「あぅ……ありがとうございますワン。
これから鬼が島に年貢を納めに行く所だったんだワン。
遅れたら村が焼かれるんだワン」
犬の獣人はペコリと頭を下げ顔を真っ赤にして桃太郎に御礼を言いました。
「いえいえ!!
しかし、その年貢は納める必要はありません。
鬼は私が退治するからです」
「あぅ……でも鬼が島にいない鬼が村を焼いてしまうかも……ワン」
犬の獣人は困ってワンワン泣いてしまいました。
「それでは、このキビダンゴを食べて私と一緒に来てください!!」
犬の獣人はキビダンゴを食べると泣き止み、桃太郎と一緒に鬼が島に行くことになりました。
*****
桃太郎と犬の獣人が旅を続けると、小さな村に到着しました。
村で水などを買い足し、市場を見回ると首輪をつけた猿の獣人の女の子が、髭を生やした男に鞭で打たれていました。
「ご覧ください!! この猿の獣人の奴隷はとても頑丈です!!
奴隷の首輪も強力な物で、どんな命令も聞きます。
おっ、そこの旦那!! お安くしておきますがどうです?」
髭の男は桃太郎に猿の獣人を売りつけようとしてきました。
猿の獣人は鞭であちこち打たれ傷だらけなので売れ残ってしまったようです。
猿の獣人を可愛そうに思った桃太郎は、髭の男を焼却処分し、猿の獣人にキビダンゴを食べさせました。
「ありがとうございますサル。
あなたの奴隷として、しっかり働きますサル!!」
キビダンゴを食べて元気になった猿の獣人は桃太郎の奴隷になると言い出しました。
「奴隷は、いりません。
しかし鬼退治の仲間になってくれると助かります」
桃太郎は、猿の獣人を仲間として歓迎し旅のお供にしました。
*****
犬と猿の獣人を仲間にした桃太郎は、まっすぐ鬼が島を目指します。
後は、船を手に入れて海を渡れば鬼が島です。
桃太郎が船を探していると、何という事でしょう。
雉の女騎士が鬼に襲われていました。
「雉雉国の軍隊が鬼が島に来ることは分かってたオニ。
返り討ちにしてやったオニ!!」
雉の女騎士は仲間を倒され1人ぼっち。絶対絶命です。
「クッコロキジ」
雉の女騎士も負けを覚悟しました。
【即死】
しかし、雉の女騎士の前にいた鬼は全員死んでしまいました。
「大丈夫でしたか?」
「今のは、あなたが? キジ」
雉の女騎士は目の前の光景に驚いています。
「はい。時間が無かったので即死を使いました。
私は今から鬼退治に向かいます。しかし船が見つかりません」
「それでは私の軍の船を使ってくださいキジ。
……軍と言っても今は私だけですがキジ」
雉の女騎士はとても悲しそうな顔をしました。
桃太郎は、船の御礼にキビダンゴをあげました。
「ありがとうございますキジ。
少し元気になりましたキジ。
鬼は許せません!! 私も鬼退治に連れて行って下さいキジ」
こうして雉の女騎士も仲間にして、一行は鬼が島に向かったのです。
*****
「かっかっか、レベル5の子供に、年貢を持った犬。奴隷の猿にボロボロの雉とは変なメンバーオニ。
何しに来たオニ?」
いよいよ鬼が島の鬼を目の前にした桃太郎でしたが鬼は余裕の笑みです。
「お前たちを退治しに来た!!」
桃太郎は怯む事なく啖呵を切りました。
「身の程知らずオニ!! やっちまうオニ!!」
鬼のリーダーの一声で数百もの鬼が桃太郎たちに向かってきます。
「あぅ……年貢納めにきたのにワン……」
元々戦う気も力もなかった犬の獣人は怯えています。
しかし、自分を殴りに来た鬼の金棒を反射的に手でガードしようとすると鬼の金棒は砕け散ってしまいました。
「オニ?」
鬼はとても驚いています。
その様子を見た犬の獣人は、これなら勝てると思いました。
「あぅあぅワンワン!!」
犬の獣人は次々と鬼の首に噛みつき仕留めました。
「こいつら弱いサル!!」
「こんな奴らにわが軍が?……キジ」
犬の獣人の活躍を見て、猿の獣人と雉の女騎士も次々と鬼を仕留めていきました。
鬼の残りも、あと10匹ちょっとです。
「降参オニ!!
宝をあげるから許してほしいオニ!!」
鬼のリーダーは涙ながらに命乞いをしました。
心を打たれた桃太郎は、鬼たちを苦しむことなく仕留めてあげました。
*****
鬼退治を終えた桃太郎は、お爺さんとお婆さんの元に帰ってきました。
仲間になった犬、猿、雉も一緒です。
「おぉ無事じゃったか!!」
心配していたお爺さんは桃太郎の帰りに大喜びです。
「はい!! 鬼は一匹残らず退治しました。
持ち帰った宝は村の復興に使いましょう!!」
「そうじゃねぇ。仲間の方々もありがとう。
行く当てが無いなら家で暮らしなさい」
お婆さんの計らいで、犬、猿、雉は桃太郎と暮らすことになりました。
「しかし桃太郎達のステータスで鬼が倒せるとはのぅ」
お爺さんは不思議そうにしています。
「ステータスが1億倍になるキビダンゴを渡しただけじゃが?
驚くほどの事かのぉ?」
お婆さんは平然としています。
6人は仲良く、暮らしましたとさ。
めでたしめでたし。