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「覚えてないの!?去年も同じクラスだったのに!私は籾山 果歩です!」
おっといきなり元気になった。ファウルをもらったサッカー選手ばりの変わり身の早さ、是非見習いたい。
「すまないね。あいにく他人には興味がないもので。」
どうして俺と、と聞こうとしたところで背後からの視線に気づいた。吐き気を催すような人間味あふれた蔑むような視線だ。振り向きたくないけど振り向きたい、面倒な女のような思考を振り払って視線の出どころに目をやると、案の定。絵にかいたような構図で又の緩そうな女三人が顔を寄せ合ってこちらをみながら、なにやらこそこそ話している。
「なるほど…いいよ。組もう。」
振り向きざまに言うと、籾山は微妙な顔をしながら「すいません…」と一言。
「別にあんたが悪いわけじゃないだろ。あんなやつら、ほっとけばいいんだよ。」
人間ってのはほんとに愚かな生物で、出る杭を打ちたがる。そのくせ出過ぎた杭、例えば天才小学生などは持ち上げるもんだから、周りよりほんの少し出てしまった存在としては生きづらいことこの上ない。
「俺は大人数と組むつもりはない。さっさと進もう。」
幸い周りは騒然としている。しかし、さっきから脳裏を違和感が反復横跳びしているのだが全くといっていいほど掴めず、このまま進んでいいものかがわからない。
「・・・・・・」
「どうしたの?」
すっかり熟考してしまっていると籾山が顔を覗き込んでくる。
「いや、なんでもない。行こう。」
考えても無駄。という何とも浅はかで楽観的な思考だが、次の部屋に進むことにデメリットはなさそうだ。
こうして俺たちは扉の奥へと進んだのだった。
引っ張ったはいいものの実は解決策が見つからない