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第87話

今日も何とか更新です('ω';)

体調わろし……

花粉の種類が変わったか……

「『殺撃』は使わなかったのだな」


 隣に立ったゴモンが、今に死にゆく二人の『白の教団』を見やって呟くように聞く。


「宗教関係者には殉教なんて便利な言葉がありますからね。派手に殺すよりも、かえって生かしておいたほうが効果的だと思いまして」


 あそこで現実味なく誰かが死ねば、狂信者は殉教という言葉を振りかざして特攻してくる可能性がある、と僕は考えていた。

 それならば、痛みという生のナマの部分を見せることで、恐怖を助長させたほうが面倒が無くていい。


「そういえば、調査はどうすればいいですか?何かやることってあります?」

「そうだな……」


 ケイブがと少し考えてから向き直る。


「隅から隅までマッピングして召喚門を壊す。可能なら魔物は殲滅する。時間はかかるが我々の戦力なら可能だろう」


 本来は連合(アライアンス)を組んで行うような作業だが、僕たちであれば可能ではありそうだ。


「それに、マップを売ればお金になるわよー? 40階まで行って依頼料と地図売却で大騒ぎしましょ!」


 僕にミーネが後ろから抱きつく。

 本当に気配の読めない人だ、と僕は苦笑した。

 横でルリエーンがややむくれた表情をしているが、見なかったことにしよう。


 この人たちが味方でよかった、と僕は思った。

 これほどの手練が敵に回れば、どう考えても自分に勝ち目はない。

 この後、塔内のミーティングで自分のことを明かしてもまだ味方でいてくれるかはやや不安があるが……。

 昨日、ルリエーンはあっけらかんと「大丈夫でしょ。むしろ納得するんじゃない?」と答えていたので、その言葉を信じよう。


「行きましょう」


 僕たちは階段を登る。

 このところ誰も上り下りしていないらしいのでおそらく塔内は再構成されているはずだ。

 気を抜かないように、と僕は気合を入れなおす。


 階段の先は、石壁石畳の荘厳な雰囲気の場所だった。

 ところどころに絨毯らしき千切れた布キレがあったり、壁にはタペストリの残骸らしきものが垂れ下がっていた。


「どっかの城か迷宮を再現したもんだな……。おそらく広さはそれほどじゃねぇ。ここからは毎階ごとにミーティングを入れるからな、ユウ」

「わかりました。でも、本格的なミーティングを始める前に一つ」


 と、僕は切り出した。


 自分の秘密を、ルーピンを含む『ザ・サード』全員に知ってもらうためである。

 これはルリエーンと相談して決めた。

 ルーピンだけでなく、仲間と思っている『ザ・サード』全員に情報を明かすことで、ルーピンのような心配をさせないためだ。

 そんな僕にルーピンはいささか驚いた様子だったが、すぐに理解した様子で、いつものニヤニヤ笑いを始めた。


 そして僕は昨晩ルリエーンに明かした秘密を、『ザ・サード』に語った。

 全員が驚いた顔をしていたが、やがて全員が納得した顔にへと変わっていく。


「フフ、やっと本音が出たわね?」


 ミーネがごくあっさりとした感想を述べると、『ザ・サード』の面々も各々、にやりと意味深な笑顔をしていた。


「実はオレ達はほとんどアタリをつけてたのさ」


 ルーピンがニヤニヤ笑いで告げる。

 どうやら知らぬは自分ばかり、であったようだ。


竜人(ドラゴンリング)か、とっくの昔にいなくなった種族だと思っていた。その技法は竜族の中では普通なのか?」


 ケイブが疑問を口にする。


「いいえ、人を竜化させる技法は黒竜王(アナハイム)しか使い手がいないと聞いています。本来は人化した竜族が人と交わって生まれるそうですが、竜族と人の交流自体が今はないようですし」

「そうだな。拙者たちも色鱗竜(カラードドラゴン)と遭遇したことはない。そもそも人語を解するということすら、いま初めて知った」


 各々、感想を述べるが僕を否定する言葉は何一つ出なかった。

 ルリエーンは「ほらね」と勝ち誇った顔で目配せしてくる。


「厄介ごとの種になると思い、今まで黙っていました。すみません」


 僕が頭を下げると、その肩をザイゲンが叩いた。


「いいや、お前さんの判断は正しい。その感覚は大事にしてくれ」

「そうだな。特に竜族の排斥を目的とした『白の教団』などには特に注意したほうがいいだろう」

「なぁに、オレたちの口はこう見えて堅ぇんだ。安心しな」


 その言葉に、僕は思わず涙しそうになった。

 隠す必要のない、信用できる仲間。


 そんなものを自分が見つけることが出来るなど思いもよらなかった。

 ミカと同じように自分を認めてくれる人がこんなにたくさんいる。

 ……だからこそ、と僕は決意を新たにする。


 この感覚を忘れさせないでいてくれた、ミカを救うのだと。

 絶対に元の世界に戻してみせる、と。


「ほら、ユウ。いくぜぇ。ここから先は戦闘も多くなるからなぁ? 頼りにしてるぜ」


 ルーピンが僕の肩をバシっと叩いて音もなく駆け出していく。

 その後を、ザイゲン、ミーネが追う。

 僕はそれを見て、顔を上げ……前を向いた。


 そう、依頼(クエスト)は今まさに始まったところなのだ。

 ここからが、冒険者としての本番であれば、気を入れ直さねばならないだろう。


「よし、行こう」


いかがでしたでしょうか('ω')

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