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第84話

更新しました('ω')!

 路地裏の襲撃のあと、僕は周囲を警戒しながら急ぎ宿へ戻った。

 もしかすると自分同様、ルリエーンたちにも襲撃があったかも知れない……と考えたためだ。

 部屋にはすでにルリエーンが戻ってきていて、大量の装備品を広げてチェック中だった。

 明日から行う調査のために、入念な準備を進めている最中であったらしい。


「あ、ユウ、おかえり。何かいいものはあった?」


 僕に明るい笑顔を見せて、ルリエーンは問う。

 この様子だと襲撃は無かった様だ。

 ミーネとの『女の話』とやらがどうなったかは気になるが、この様子ではそれほどでもなかったのかもしれない。


「いいや。……悪いことは起こったけど」


 『白の教団』の襲撃とその顛末についてルリエーンに説明すると、ルリエーンは「やっぱり」と曇った顔をした。


 実はルリエーン達にも尾行はついていたのだという。

 しかし、凄腕の『警戒者(チェイサー)』と『盗賊(シーフ)』を相手にするには、あまりにもお粗末で迂闊な尾行だったため、すぐに巻いてしまった……と、ルリエーンは苦笑して話した。


「『白の教団』はどうしても私たちに調査して欲しくないみたい。実力行使に出てきたって事は、調査されると都合が悪い何かを隠してるのかしら?」

「僕もそう思う。竜の存在の信憑性よりも塔の流通を止めることが目的なんじゃないかと思えてきた」


 装備品のチェックが終わったらしいルリエーンは、腰鞄(ウエストバッグ)にそれらを収納していく。

 鞄自体も容量は小さいが、塔都市で購入した魔法のバッグだ。

 重さを無視できるため、ルリエーンのように先行警戒するにはうってつけのものだ。


「今日はどうする? 出かけてもいいけど、あんな様子の人がうろうろしてるんじゃゆっくり出来ないかもね」


 ルリエーンが小首をかしげて思案する様子をじっと見る。

 決意はした。

 だが……その結果が恐ろしい。

 しかし、全てを明かしてしまいたい、受け入れてもらいたいという欲求も確かにあった。


 諦めと恐れをないまぜにした苦笑を浮かべつつ、僕は提案する。


「今日はもう出かけずにゆっくりしましょうか。準備はもう終わってますし」


 僕の準備は、先行警戒を行うルリエーンたちに比べれば少ない。

 魔法用の触媒や治癒の魔法薬(ヒーリングポーション)の補充くらいのものだ。


「あ、私、お風呂に入りたいわ」

「お風呂? 【安息の我が家(ホームマイホーム)】ですか?」

「ええ。ここは広いから、どこかに【安息の我が家(ホームマイホーム)】を広げて、我が家でゆっくりしたいかも」

「なるほど……。それはいいかもしれませんね。なんだか久しぶりな気もしますし」

「僕もです。明日に備えて今日は思いっきりダラダラしましょう」


 二人で頷き合って、そっと宿を抜け出した。

 件の連中に出くわさないように、認知阻害の魔法をかけて塔町の外れへと歩いていく。

 ルリエーンはご機嫌な様子で、よもやま話を振ってくれる。

 その間も、僕はぐるぐると考えていた。


 この笑顔を曇らせることになるかもしれない……。

 それが僕にとっての一番の心配事だった。


 ほどなくして、いい場所を見つけて、【安息の我が家(ホームマイホーム)】を発動させる。

 久々の【安息の我が家(ホームマイホーム)】はやはり、落ち着く。

 居心地のよさが半端ではない。


「では、お湯をためますね」


 早速、風呂の準備を始める。

 水をため、湯にするだけの簡単な作業だが。


「いつ見ても器用なものねー」


 後ろから覗き込んでいるルリエーンが、感嘆の声を漏らす。

 この世界の魔法というものは、いささか調節という概念が抜け落ちている節がある。

 強くすることは出来るが、『程ほどに』とか『弱めに』といった機能が殆どないのだ。


「そうですかね……折角魔法があるのに生活に便利に使おうという人が余りいないのが、僕には驚きなんですけど」


 実際、塔の生活では青魔法で水を精製し、緑魔法で作物を育てることはよく行われているが、それはそれはおおざっぱ(ダイナミック)な方法で行っているため、時折大事故が起きたりするらしい。


「確かに。でも緑魔法の使い手はよく農耕ギルドにいたりするわよ」


 生命と大地の魔力を利用する緑魔法は作物を育てたり、枯れた大地を肥沃にする魔法もある、とルリエーンは僕に説明した。

 その為、緑魔法の使い手が生まれた農家は、農村部では一定の権力を持ったりすることがあるそうだ。


「僕はあいにく緑魔法が使えない体質みたいなんですよ」


 口をついて出そうになった、「黒竜王(アナハイム)の血を、受けているので」という言葉を飲み込んで答える。


「さ……て、冷めちゃう前に準備しちゃおう」


 ルリエーンがタオルなどもろもろの準備を整えはじめる。

 小さな体がちょこまかと動いて小動物のようだ。


 これで自分の何倍も長く生きてるのか、と感慨深く思う。

 エルフの時の流れとは、一体どんな風なのだろうか、とも。


「ルーさん、お先にどうぞ。僕は何か軽く食べるものでも作っておきますよ」

「え、一緒に入らないの?」


 ルリエーンは、あからさまにショックな顔をしてこちらを振り返る。

 選択肢をミスったことを直感し、謝罪代わりのぎこちない笑顔をルリエーンに向けて応えることにした。


「一緒に入りますよ。食事の準備はやはり後にしましょう」

次回、エッチな回……だったので大幅修正を掛けます。

ノクタ案件……警告……あとはわかるな('ω')?

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― 新着の感想 ―
[良い点] ええー!!書いてくれないんですか!?笑
[一言] 了解しました。 ……ところでノクタ版の方もチェックさせていただけないでしょうか。いえ、これはあくまでも変更前後の違いを確認するために。おっと涎が。
[気になる点] 避妊はしろよ。
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