第82話
今日も更新頑張りました('ω')
昨日の騒ぎから一夜開けての翌日、僕はルーピンと共に魔法道具市場を当てもなくうろついていた。
珍しい組み合わせだ、と自分自身でも思う。
ちなみにルリエーンは、『女の話』をするといってミーネが朝早くに引っ張っていってしまった。
彼女もよくわからない人だが、ルリエーンいわくああ見えていい人、らしい。
ぼく自身が周囲に対してそうであるように、『ザ・サード』の面々にも語られない秘密があるのだろう。
気にはなるが、それを探ろうとは思わない。人それぞれ、知られたくない事情があるのだろう。
……しかし、その中でも特にルーピンとミーネについてはその秘密主義の傾向が強い。
おそらくだが、ケイブやザイゲン、それに同門のゴモンは聞けばいろいろと答えてくれるだろうし、はぐらかすことも余りないだろうという予感がある。
しかし、ルーピンは違う。
あまりにも秘密が多すぎるし、自分は何でも知ってる風なのに、そのくせ誰にも何も知られたくない雰囲気を醸している。
飄々としたあの空気の中に、何もかもを煙に巻いてしまおうという意図を感じざるを得ないのだ。
「ルーピンさん、何探してるんですか?」
散歩か、ウィンドウショッピングのように露天をうろうろと歩き回るルーピンをなんとか追いかけながら、僕は問う。
「いんや、特に。お前とちょっとサシで話がしたかっただけさ」
「大体のことはお話したはずなんですけどね」
「それ以外の隠してる部分についても、オレぁ、知りたいんだよなぁ」
「人間、隠し事も必要です」
僕の言葉にニシシシと嗤うルーピンは一体自分の何を掴んでいるのだろうか?
仕方ないとはいえ、不注意にも自傷魔術や無詠唱の魔法を見せてしまっているので、経験豊富なルーピンは何かしらアタリをつけてしまっていても驚きはしないが。
「確かにな。ま、オレだってそう思うぜぇ? でも、坊主は重要なところを隠し過ぎてるような気がしてなんねぇんだよな」
「例えば?」
「お前ぇ、竜と何か関係があんじゃねぇの?」
ルーピンの言葉に、ぞっとした何かを感じる。
一切、外では口外していない情報だ。
「ほーれみろ、すぐに顔に出る」
「なっ」
ルーピンが指を鼻先に突き出す。
いつものニヤニヤ顔に、何もかも見透かすような鋭い眼。
「隠すならもっと上手に隠せよ、坊主。オレは素直でいいと思うけどな」
ルーピンは指先で僕の額をトンとつつく。
「あなたは……何でも知っているんですね」
「いいや、何も知らないからこうやって知りたいんじゃねーか。おっと、怖い顔するなよ。こう見えてオレはお前の仲間のつもりだぜ」
「僕もそのつもりですよ」
ここまでの道中でそれはよくわかっている。
何か含みがあるとしても、塔の案内役などを買って出るのはそれなりの覚悟がいるハズだ。
だが……そうであっても、だ。
僕にとって、知られたくない情報は多い。
ルリエーンにすら黙っている、竜の眷属であるという情報を掴んでいるとすれば、やはり警戒せねばならない。
それが悪意を以って僕に方向性を持つならば、例えルーピンに対してだって容赦なく戦うつもりだ。
勝てるかどうかは別にして。
「ニシシシ、そうそう、よーく警戒しないとな。特に『白の教団』の前では気をつけるんだぜ?」
『白の教団』についても疑問が多かった。
あまりに一方的で狂信的なあの集団が、なぜ依頼の邪魔をしようとするのかが不明だったからだ。
この世界の人間が竜族を警戒するのは当たり前のことである。
多くの場合、竜族が人にとって圧倒的脅威になることは間違いないし、よもや交戦すれば大きな被害が出ることは間違いないだろう。
しかし、だからと言って調査すら許さない、というあの異常なまでの執着は何なのかはわからなかった。
そして『異界の勇者達』という単語である。
この世界で『勇者』というのは『神聖変異』を授けられた、あるいは烙印されて、かつ何らかの使命を帯びた者をそう呼称する。
多くの場合は人間離れした何かしらの能力を持っており、それは人では解決できない何かしらの問題を間接的に『神』──この世界では十二柱の神々のうちの誰か、が解決するために使う手段である。
それを利用できるということは、彼らの言う『白き部屋の主』とやらは間違いなく神なのであろう。
そして、異界という言葉が出るにあたり、どうやらその勇者とやらは『渡り歩く者』では無かろうか、と考える。
「坊主、何でもかんでも背負い込みすぎじゃねーの? ルリちゃんの身内ならお前ぇもオレの身内だ。つかえるモンは猿でもつかえってな」
ルーピンがニヤニヤ笑いを浮かべながら肩を組んでくる。
そういったスキンシップに慣れていなかったので些か驚いたが、すぐに理由がわかった。
「つけられてるぜ。そのまま前の路地に入るから振り返らずに気だけ張っとけ」
耳元でルーピンが囁く。
妙な雰囲気は感じていたが、尾行されていたとは。
むしろ、違和感はルーピンから向けられる感覚とばかり思っていた。
そのまま自然な様子を装って、買い付けたサンドイッチのようなファストフードを片手に市場から一つ入った路地へと僕らは入っていく。
そして、これが罠だとも知らずに、追跡者達はまんまと僕たちの前に姿を現してしまった。
その手首には白いバンダナが巻かれている。
例の『白の教団』の連中で間違いないだろう。
「何か、御用ですか?」
戦闘準備をすっかり整えた僕は、出来るだけ朗らかな顔で彼らを振り返った。
いかがでしたでしょうか。
良かったらブクマーとか☆ーとか感想ーとかお気軽にー('ω')
それまでゆるキャン△でも見てますので……