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第75話

今回は戦闘回です('ω')b


 左手首を小剣で盛大にリストカットして『血陣魔術(ブラッドマジック)』と『自傷魔術(スーサイドマジック)』を発動させる。

 傷から溢れ出した血が周囲を漂って円環を為すのを横目に見ながら、魔物たちを見やる。


 魔物(モンスター)の数はそれなりに多い。

 それにライオンに似た俊敏さを持っているので、近接戦で応じるのは悪手だ。

 ならば、範囲の広い魔法で効率よく叩くのがいいだろう。


 周囲の血液に、いくつかの魔法を込める。

 ただよう血の一滴一滴が、武器であり、防具であり、魔法触媒だ。


 準備を整えた僕は、巨大な蛇型魔物(モンスター)に向かって、ゆっくりと歩く。

 その瞬間、近づく僕に気づいた魔獣たちが、一斉に襲い掛かってきた。


「<野火(フラッシュファイア)>!」


 前方に向けて熱と衝撃を発射する。

 炎に包まれ魔物(モンスター)が吹き飛ぶが、何体かは逃れて、こちらに飛びかかってきた。

 しかし、そのことごとくが僕の血から放たれる<血の武器(ブラッドウェポン)>に串刺しにされ、あるいは切り裂かれ倒れる。


 それを目の当たりにして警戒し、こちらに近寄ってこない魔獣もいたが、それに対しては熱線を発射し、時には<火葬(インシネレート)>を浴びせる。

 炎から逃げようとする集団には、<猛毒の風(ヴェノムウィンド)>の魔法を放っておいた。

 毒に当てられた魔獣の一群は、仮面の下から緑色の泡を吹いて痙攣し、絶命してく。

 仮面を被っちゃいるが、ちゃんと生き物なようで安心した。


 さぁ、どんどんいこう。

 こんなところで足止めを食ってはいられない。


 無詠唱かつ無儀式にこれらのえげつない魔法を行使する僕に『ザ・サード』が向ける視線はいかなるものだろうか。

 バッソのように、僕を恐れるかもしれない。

 振り向いて確認したいが、今は殲滅が優先だ。


「おいおいおい……簡単な下位魔法を詠唱破棄する魔術師はいる。牽制とかよ、武器戦闘と組み合わせるヤツらも多い。──しかし、こいつはちぃっとばかし違うな」

「ザイゲンよぉ、オレらの出番ねぇんじゃね?」


 数十匹はいた仮面の魔獣をことごとく屠って、僕は巨大な蛇の前まで歩を進める。

 ルーピンたちも後に続いて臨戦態勢だ。


「シャァアッ!」


 唸るような咆哮の直後、蛇の仮面が輝き……無差別に光弾を連続発射した。

 一発一発が大きく、着弾した床を削る。

 威力はかなり高そうだ。

 ミーネがとっさに準備していた<多重防壁ファランクスプロテクション>を拡大化して張り巡らす。

 <多重防壁ファランクスプロテクション>は大量の光弾をしのぎきったが、今度は蛇の甲高い叫び声で<多重防壁ファランクスプロテクション>が砕け散る。


魔法消失(ディスペル)効果を持った叫び声だと! (やっこ)さんなかなか厄介だな」


 ザイゲンが仮面に向かって自動弩弓(リピーターボウ)を連射している。

 威力そのものより牽制の意味合いが強いのだろう、数発の後、ザイゲンはすぐに大型の弓に持ち替えて一撃放った。


「コイツをくれてやるよ!」


 魔力というより闘気の乗った矢が、ありえない速度で仮面を直撃し、大穴を穿つ。

 なるほど……自動弩弓(リピーターボウ)に酸毒か何かが塗ってあったのだろう。

 この一撃のための布石か!


 痛みに怒り狂う蛇型魔獣は、尾で僕たちを打ち払おうとするが、その尾は振られること無く、ただ蛇がバランスを崩すに終わった。

 ……蛇の尾には白銀に輝く刃を鞘に収めるゴモンの姿があった。


 その崩れに乗じて、ケイブが巨大な鉄の塊となって突進した。

 盾撃(シールドバッシュ)とも突進(チャージ)とも言えるその力任せの一撃は、巨大な蛇を後退させ、崩れていた体勢をさらに崩した。


 巨大蛇が地面でのたうつ。


 頭部の巨大な仮面にはすでにルリエーンの【バラの貴婦人(ローゼスレディ)】による弾丸とザイゲンによって放たれた矢によって多くの傷がついており、ところどころにひびや穴が散見される。


 のたうち、地面に降りてきた頭部仮面の真ん前に、僕はいた。


「“全ての戦場で殺し、全ての戦場で生き、全ての戦場で勝つ”」


 螺旋に練られた気が、破壊の力となって僕の拳から放たれる。


「──伏見流交殺法殺撃、『喰命拳』ッ!」


 頭部を散り散りにしながら、大蛇の召喚門がどさりと地に臥す。


「こりゃ、たまげたなぁ……。オレのやることがなかったぜ」

「ワタシもよ……」


 ルーピンとミーネがそうぼやく中、小さく息を整えて、周囲の状況を確認する。

 件の仮面をかぶった獣の類は全て掃討できたようだ。

 むしろ、僕等は運がよかったのかもしれない。


 あのような機動力に優れた魔物が大量にいる草原を探索するリスクを考えれば、早々に召喚門を制圧できたのは僥倖と言えるだろう。


「すんげぇな、〝自傷の血(スーサイドブラッド)〟はよ」

「少しはお役に立てたみたいですね」

「正直、荷物の類と侮っていた。謝罪させてくれ」


 のっしのっしと歩くケイブが、腰を折る。


「いいえ、僕が未熟なのは確かです。ここまで登ってきて、二人で登ろうとしていたのが無謀だってことに気が付きました」

「おい、ルーピン。こいついっちょ前に謙遜してやがる」

「かわいくねぇよなー」


 ゲラゲラと笑いながらルーピンとザイゲンが僕の肩を叩く。


「ほら、行くわよ。二十階に行くまで気を抜いちゃだめよ?」


 ミーネに窘められて、僕たちは階段を慎重に上った。



いかがでしたでしょうか('ω')

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