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第51話

夕方の更新です('ω')

 いままでバッソたち『鬼灯兵団』は、僕が【探索の羅針盤(シーカードコンパス)】を使用して割り出した探し人(ミカ)の方角を、半日ごとに経時的に記録した。

 次にその記録から、商業ギルドの大陸周回経路を計算する専門職人に依頼して、その方向を周回する島や大陸があるかを大まかに掴んだ。


 それが第二層大陸(ドゥナ)であることが専門職人によって明確になった為、その段階で『猿』と呼ばれる魔法動物をバッソたちは放ってもらった。

 この『猿』と呼ばれる魔法動物は森を高速で移動する伝書鳩のような存在で、塔都市に駐留する別働隊の『鬼灯兵団』に情報の共有と提供を促した。


 ……そして、『渡り歩く者(ウォーカーズ)』の情報を持つ情報屋が、塔都市(トロアナ)にはいた。

 いわく、『レドック王国』で数人の『渡り歩く者(ウォーカーズ)』が()()された、というのである。

 ややその言葉に語弊を感じたものの、その情報が正しければ方向的に探し人(ミカ)である可能性が高い、と僕達は判断した。


 『レドック王国』は第二層大陸(ドゥナ)内陸部の湖畔地帯にある、第二層大陸(ドゥナ)でも古い歴史を持つ国である。

 比較的人口も多いため、こういった情報は広がりやすいのだと、バッソは僕に説明した。


 平行して、次元移動可能な『渡り歩く者(ウォーカーズ)』の捜索も行ったが……今のところは収穫なし。

 それで、『レドック王国』が空振りだった場合も含めて、第二層大陸(ドゥナ)での『渡り歩く者(ウォーカーズ)』探索を『鬼灯兵団』に継続してもらうこととなったのだ。

 その情報のやり取りを今後どうするか、という問題を解決しなければならない。


 同じ大陸なら『猿』や伝書鳩を使ってのやり取りは可能だが、『鬼灯兵団』からの情報をどうやって僕に知らせるかが問題となっていた。


「うちから一人信用できるヤツを付けるって案もあるが」

「でもユウに情報が行っている事がわかると、後々危険じゃないかしら」


 今までは二人が『ある人からの依頼』という形でワンクッション置いていたため、僕の情報が漏れることはなかった。

 しかし、今後は僕に情報を伝えるたびに、何かしらのリスクが付きまとう可能性が高まることとなる。


「冒険者ギルドに預けるのがいいんだろうが……ユウがその冒険者ギルドへ行くとは限らないしな」

「困ったわねぇ……」


 確かに僕のように動き回るタイプだと、手紙の情報が遅れてしまう可能性はあると思う。


「あ、そうだ」


 少し思いついたことがあった。


「では、最初は『ウォン=ス=ゲイル』の冒険者ギルドへお願いできますか?」

「たしかに『塔都市』だし、絶対に立ち寄るコトにはなるな」

「それで、そこからの行程や予定をお二人に送ります」


 ある程度の旅程がわかれば、立ち寄る町の冒険者ギルドに手紙を預けることは可能だ。


「なるほど……じゃあ、それでいこう」

「『帝都ベルセリオス』へ送ればいいんですよね?」

「ああ、ユウからの手紙は最優先で俺達に届くように兵站部に伝えておく」


 連絡方法が決まったので、僕は鞄から二つの小さな箱を取り出す。


「バッソさん、ミリィさん。これを二人に」


 僕は箱をずいっと二人の前に押し出す。


「なに、これ?」

「開けてみてください」


 恐る恐る開ける二人。

 中には同じデザインの指輪。


「お世話になったのでお二人にプレゼントです」

「ミリィと同じデザインだな」

「そうね……ペアリングみたい」


 ……みたいじゃなくて、そのものなんですけどね。


魔法道具(アーティファクト)なので、付けて魔力を通してみてください」


 言われるがままに指輪をはめる二人。


「……ッ! なにこれ」

「青魔法の<秘密の会話(テレパストーク)>が封入されてます。その指輪を付けた人同士なら、三十メートルくらいの距離なら念話を飛ばせます」

「こ、これ……とんでもなく高いんじゃないの?」

「いえ、ロハです。僕が作りました」


「「えぇぇぇぇぇッ!」」


 驚きの声が『踊るアヒル亭』にこだまする。


「こんな魔法道具(アーティファクト)を作り出すなんて……」

「バス、考えるのはやめましょう。ユウはこれで普通なのよ……」


 そういいながらも、ミリィは尻尾を膨らませて驚きを隠せていない。

 しかも、思わずバッソを愛称で呼んでしまっているのに気が付いていないようだ。


「これで心置きなく、僕も旅立てます」


 さしあたっての問題は解決した。

 あとは実際に第二層大陸(ドゥナ)へ行ってみなくては始まらない。


「ユウ、世話になった。また会う日を楽しみにしてる」


 立ち上がった千人隊長はすっと手を差し出し、僕に握手を求めた。

 僕はそれに応じて、無骨な手をぎゅっと握り返す。

 笑ったバッソは僕の肩をパンと叩くと、黙ってこの場を去った。


 不幸な出会いであったが、僕にとってバッソは数少ない信頼できる大人だった。

 女癖の悪さだけはいかんともしがたいが。

 バッソが去った扉を、感慨深げに僕は見る。


「ユウったら、寂しいのね?」

「そうですね、バッソさんは僕の知る中でも『尊敬できる男』だと思います」

「あら、いつになく素直ね。大隊長にあとで伝えておくわ」

「バス、って人前では呼ばないようにしてるんですね」


 ミリィの照れ隠しパンチをあえて受けた。

 このやり取りも、もうできなくなるのだ。


「私はまだしばらく逗留してるわ。出発する前にまた声をかけて頂戴」

「わかりました。ではまた後で」


 ミリィが席を立ち、部屋を去るとガランとした孤独な空気が増したような気がして、僕はなんともいえない寂寥感にさらされた。

 ヤールンがいないと、こうも寂しいのか……どうにも、僕はヤールンに依存し過ぎていたようだ。


 しかし、それでもミカを探す、という決意はまったく揺らがなかった。


 ミカを元の世界に帰して、アナハイムの元に帰る。

 それは僕の命題であり、この世界で生きる目的なのだから。


そろそろ旅立ちの時です……('ω')

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