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第50話

今日も三話更新頑張ります('ω')

 席に座って待つ僕にミッサが、湯気の立ち上るカップを机に出してくれる。


「サービスだよ。あんたは上客だったからね」

「ありがとうございます。あ、ここを発つ前に豆を分けてもらっていいですか?」

「ああ、旅用のを道具と一式、そろえてあるから心配要らないよ」


 ミッサが腰に手を当てて得意げに笑う。


「ありがたいです。ここのコーヒーは絶品ですからね」


 一口含む。

 芳醇で香高く、コクとキレを兼ね備えた最高の一杯だ。


「旅先で同じ味で飲めると思うなよ。そいつぁ、俺の努力の結晶だ」


 いつの間にか傍らに立っていたジャブローがニヤっとわらう。

 相変わらず、実力のうかがい知れない御仁である。

 そうこうしてる内に、店先にミリィが現れた。


「ああ、ユウ。やっと見つけた! あんまりフラフラしないの、今日は忙しいんだから」

「一応、さっき宿舎まで見に行ったんですけどね」


 僕は頭をかきながら苦笑する。

 いつもの空気にくすくすと小さなマーサが笑い、ジャブローでさえも不敵な笑みを浮かべた。


「今後の方針について詰めておかないと。特に大隊長は今日の第一便で出てしまうから」


 バッソ率いる『鬼灯兵団』は三つの部隊に別れ、それぞれ別ルートで北上しながら北の辺縁都市である『ポートセルム』に向かうらしい。

 そこでしばらく駐留した後、第二層の大規模島『ヤパン』の接近にあわせて出航する大型飛空船で上層に上がる予定だ、ミリィは説明した。


 責任者のバッソはその準備のため、最短ルートの行程で『ポートセルム』に向かうことになっているのである。『偉い人』は大変だ。


「では商館へ向かったほうが?」

「いいえ、大隊長がここに顔を出すって言ってたわ。だから、細かい話は部屋を使わせてもらってもいいかしら?」

「わかりました、バッソさんを待ちましょう」


 ミリィは僕の隣に腰を下ろすと「私もコーヒーをもらえるかしら」と注文した。

 すぐにカップに注がれたコーヒーがマーサの手によって運ばれる。

 千人隊長殿(バッソ)が到着するまでは、ミリィとコーヒーブレイクとしゃれこむことにしよう。


 掃除が終わったらしいマーサとミッサが、エプロンで手を拭きながら僕たちのテーブルに座る。

 最初はミッサがマーサを窘めたものだが、僕はこうやってテーブルを囲むのが好きだと伝えると、いつの間にかマーサやミッサ……時にはジャブローともテーブルを囲むようになった。

 まるで家族になったようで、僕はこのあたたかな雰囲気が大好きだ。


「そういえば、あんた。ここ出て次はどこに行くんだい?」

「塔を使って第二層大陸に上がって、レドック王国へ行くつもりです」

「塔を使うのかい? あんたが大層強いのは知ってるけどさ、大丈夫なのかい? 変なところでぬけてるからねぇ、あたしは心配だよ」


 実は件の蛇竜(ワーム)以外でも失態を晒す場面が何回かあり、僕はそのたびに周囲を心配させていた。

 しかし、その働きで『鬼灯兵団』や防衛にあたる兵士に今期は殆ど人死などの深刻な被害をあまり出さなかったので、それはそれでよかったと僕は考えている。


「『鬼灯兵団』と一緒に『ポートセルム』から上がったほうがいいんじゃないのかい?」


 それも考えはした。

 しかし、ここから『ポートセルム』までは歩いて約一ヵ月。

 『鬼灯兵団』の歩みにあわせれば、もう少しかかるだろう。


 さらに予定では『鬼灯兵団』がレンタルした大型飛行船が、『ポートセルム』に到着するまで一週間待つ必要があり、乗船後も上昇気流を捕まえながらまた『ヤパン島』まで一週間の空の旅。


 ヤパン島を経由していくため、第二層大陸(ドゥナ)に着くまでに時間が余計にかかってしまうことになる。

 その上、ヤパン島は大陸の東の端に浮かぶ島だ。

 第二層大陸東辺縁部の港から、大陸内陸部のレドック王国まで行こうと思えば、このルートは時間的に悪手だろう。

 これは僕としては看過できないタイムロスだ。


 その点、第二層大陸の塔都市『学園都市ウォン=ス=ゲイル』はほぼ大陸の中央に位置している。

 そこから馬車に乗れば、レドック王国までは二週間ほどで到着できるらしい。

 ネルキドで一か月近く足止めをもらっているのだ、これ以上遠回りは出来ない。


「ちょっと急いで上がる理由がありまして。『ポートセルム』から上がるとレドック王国まではずいぶん遠くなってしまいますし」

「なかなか忙しいんだねぇ」


 ミッサがため息をついていると、バッソが息を切らして駆け込んできた。


「またせたな。すまない。ユウ」

「大丈夫ですよ、しかし、バッソさんが大丈夫ですか?」

「大丈夫だ、問題ない」


 ゼェゼェと肩で息をしながらバッソは答える。

 事情に見当がつくだけに深くはツッコまず、僕は二人を伴って借りている部屋へ入った。


「あれ? ヤールンはどうしたのよ?」


 いるはずのドワーフ娘がいないことをいぶかしんだミリィが僕を振り返る。


「ちょっとヘソ曲げちゃったみたいで……」


 そう、ヤールンは昨日から絶賛家出中である。

 僕の探している“友人”が女で、幼馴染であることを知った彼女は「浮気者!」と捨て台詞を残して出て行ってしまったのである。


「ダメよ、ユウ。きちんと話し合わないと」

「そうだぞ、ユウ……有耶無耶にしていると厄介なことになるんだぞ」


 現在進行中で厄介な事になっているのはお前(バッソ)だろう、と思ったが口には出さないことにした。


「今日中に探して、話をしますよ。僕にはこれがありますからね」


 【探索の羅針盤(シーカードコンパス)】を取り出す。

 これを使って追跡すれば、ネルキド市内で隠れ続けることは不可能だろう。


「そうか。じゃあ話を詰めちまおう」


いかがでしたか('ω')

そう、そういうことですね

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