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第49話

本日ラストの更新('ω')ノ


 ネルキド市の門が約一ヵ月ぶりに開放された。


 待ちわびたとばかりに行商馬車が順次発車し、門扉前の広場はにわかに活気に満ちてゆく。

 この様相は、魔大陸──第四層大陸(クアロト)──が第三層大陸(トロアナ)から離れ、活性化の時期が無事終わった事を告げていた。

 僕がネルキド市に来てから、三週間と四日が過ぎた日のことであった。


 魔物の脅威は急速になりを潜め、冒険者ギルドの掲示板に刺さるピンの数はもうずいぶんと減った。

 仕事が減った冒険者達は、開放された門を通り、各々思い思いの目的地に向けて歩き出す者も多かった。

 当然、もうしばし、ここで活性化の残滓を見守る者も多くいたが。


 そして『鬼灯兵団』が受けていた依頼も、これをもって完了となる。

 当初、契約破棄も危ぶまれたこの防衛依頼だが、大きな被害を出すことなく完遂された。

 ネルキド解放から三日たった今、商館では『鬼灯兵団』撤収の荷造りが急ピッチで行われている。

 それを他人事のように僕はじっと見ていた。


「お、ユウさん。今日はどうしたんで?」


 馬車への積み込み作業を指示していた坊主頭の冒険者が、僕を見つけ声をかけてくる。

 僕が『鬼灯兵団』に初めて顔を出した時、『ガキ』と言いそうになった彼である。

 防衛戦で何度か一緒になった後、年が近いせいもあってか妙に気が合って時々話すようになった。

 ぱっと見、下っ端に見えるかもしれないが十人隊長、“投槍”オーグとは彼のことである。


 今回の活躍次第で、もしかすると百人隊長に上がれるかも……と『踊るアヒル亭』で話しながらパインサラダを頬張り、そうなったらいよいよ幼馴染に結婚を申し込む、と意気込んでいた彼を見て内心ヒヤヒヤしたものだ。

 そういう不吉な行動(フラグたて)はほどほどにしていただきたい。


「いや、大掛かりだなぁと思って眺めてるだけですよ」

「こんな人数で動き回るのはあっしも初めてですから、同じ感想ですわ。そういえばミリィ副大隊長が探してましたぜ」

「え、そうなの? 僕もそろそろ街を出ようと思ってたから丁度いいかな」


 僕の手には【探索の羅針盤(シーカードコンパス)】と紙片が握られている。


「寂しくなりやすね……。ベルセリオスに来た際にはぜひ本部によってくだせぇ。居るかどうかは運次第ですがね」


 オーグは凶暴そうな顔に人懐っこい笑顔を浮かべる。

 

「そうさせてもらうよ、オーグさん。またきっと会いにいきますから、その時はお嫁さんを紹介してください」

「ええ、必ず。お知り合い……見つかることを祈ってますぜ。ユウさんもお元気で!」


 オーグが手を差し出す。

 ゴツゴツした冒険者の手。

 強力なジャベリンを投擲し、魔法のように敵を射抜く手である。


「オーグさん。家に帰るまでが冒険ですからね。気を抜いちゃダメですよ」

「そんな事、新人(ルーキー)に言われるまでもないですわ」


 笑いあって握手を交わす。

 彼もまた、今回の滞在で僕が得た『得がたき友人』の一人だ。


 作業に戻っていくオーグに軽く手を振って、僕は『踊るアヒル亭』に向かって歩き出す。

 市場の喧騒は相変わらずだったが、ちらほらテントを畳んでいる店もある。


 これから準備して、明日にでも第三層大陸各地に旅立って行くのだろう。

 なんともいえない寂しい気持ちが押し寄せた。

 一ヶ月前、意地でも入らないとしていた自分としては、複雑な心境ではあるが。


「よし」

 

 気持ちを切り替えて、『踊るアヒル亭』に向かって歩いてゆく。

 見えてきたその建物は、思い出の詰まった我が家のような安心感がある。

 開け放たれた扉をくぐると、マーサが普段通りに食堂の掃除をしていた。


「ただいま、マーサ」

「お兄ちゃん、お帰りなさい」


 箒を持ったままの小さなマーサが駆け寄ってくる。

 この光景も見納めかもしれない。


 僕は鞄からキャンディを一つ取り出し、マーサの手の上に乗せる。

 ミッサ、マーサと出会ったあの日、何気なく渡したそれと同じものである。


「今日までのお礼。どうぞ」

「ありがとう!」


 マーサはキャンディを口に放り込みご満悦の顔である。

 奥ではミッサが「やれやれ」といった苦笑いでこちらを見ている。


 この世界でキャンディは、それなりに高いおやつだ。

 しかし、正確にはこれはキャンディなどではない。


 毒や病などを浄化する魔法薬の一種である。

 持病があって体が弱かったマーサだが、定期的にこのキャンディを摂ることで僕の滞在期間中に寛解したようで、今は元気いっぱいだ。


 鞄に放り込んである魔法道具(アーティファクト)から定期的に無限に湧き出るものであるし、少しくらいと思うのだが、ミッサにすれば非常に高価な魔法薬をタダで提供されることに心苦しさがあったらしい。

 それを聞いた僕は、地下温泉の自由利用をお願いして納得してもらった。


「ミリィさん、来てないですか?」

「さっき来たけど、また後で来るって行ってたよ。行き違いにならないようにここで待ってな」


 そうします、と答えて僕は定位置の窓際の席へ座った。


ここから場面転換がはいります('ω')

そして、ちょっとほろにが展開となりますので鬱展開が苦手な人はご注意ください。

大丈夫です、みんな幸せになります(レムシータ2巻を読んだ皆さんは知っていますね?)


さて、みなさん。

日曜日の夜ですので……


感想・評価・ブクマをよろしくお願いします!

ばんばん突っ込んでうなぎを書籍化作業まみれにしてやりましょう('ω')ハハハ


バババだって書籍化するくらいです、きっと本作も皆様次第でお声がかかりますよ!

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