第43話
本日ラストの更新ですよ('ω')ノ
「にーさんと一緒にいると、視線が辛いわ」
「あら、ヤールン。奇遇ね。私もよ」
二人でも姦しい女性二人が、僕をジト目で見てくる。
思いのほか金貨の買取金額が大きくなってしまったのは、決して僕の責任ではないと思うんだけど。
「あはは……すみません。今後気を付けます」
軽く苦笑して誤魔化す。
二人に連れられて、昨日はあまりゆっくりと見ることができなかった市場通りを物色する。
なにせ鞄の中に貴重な魔法道具は山ほどあれども、パンツの数は少ないのだ。
衣料品を扱っている露店を適当に見て回る。
需要はそこそこにあるのか、市場通りには数多くの衣料品を扱う露店が軒を連ねていた。
品揃えを見ていると、この世界の衣服は、どうやら麻と綿が主流のようだ。
他にも、魔物素材と思われる衣服もいくつかあって、僕のファンタジー心を刺激する。
その中から、肌触りの良いものを中心に十着ほど選び、街着用の上下を数着購入していく。
デザインは極力目立たないように、地味なものばかりを選んでおいた。
おかげで黒とか茶色ばっかりだ。
一応、魔法使いという触れ込みなので紺の長衣も一着購入しておいた。
こんなのを着ていたら格闘戦に支障が出そうだけど。
「にーさん、えらいたくさん買うんやな」
後ろで眺めていたヤールンが、僕の豪快な買いっぷりを見て思わず声をあげる。
確かに、こうも大量に衣料品を買い漁れば異常に映るかもしれない。
「そうですね……僕は普通の服を殆ど持っていないので、ここで一気に購入しておこうと思いまして」
「そうなんか。でもそんなたくさん買うてかさばらへんの?」
「これ、魔法道具なんですよ。結構な量が入るから大丈夫」
ショルダーバッグを示して、大量の衣類をその中に収納していく。
「魔法の鞄! あたしも欲しいけど、高くてよう買わんわ」
どうやら普段使いしてるこれも、実はかなり貴重な魔法道具だったらしい。
「せ、せっかくだから、ヤールンも何か買ったら?」
話を逸らすために、訊ねてみる。
出会った時に一着ダメにしているのだから、買い足す必要があるだろう。
「ここんとこ仕事してへんから持ち合わせがちょっと不安なんや。にーさんが落ち着いたら、何かできる依頼ないかギルドで掲示板見てくるわ」
そういえば朝からずっと付き添わせてしまっていたのを失念していた。
冒険者なのだから、今がまさに稼ぎ時であろうに。
「じゃあ、今日付き合ってくれたお礼にプレゼントしますよ。僕の登録祝いってことで」
「あら、それなら私も何か買ってもらわないといけないわね」
抜け目ないミリィが目を輝かせる。
「そんな悪いで。昨日助けてもらったんに。そっからまだ何かもらう訳にはいかへんよ」
「いいじゃないの、ヤールン。冒険者ギルドで冷や汗かかされた分よ。いいわよね? ユウ」
「もちろん」
二人にお礼をしたいのは、正直な気持ちだ。
あんな大勢の人がいるところに、僕一人で行けばきっと余計なトラブルを引き起こしていたに違いない。
ライトノベルでありがちな、絡まれイベントとかノーサンキューだ。
「どれにしますか? ……あまり、高くないものにしてくださいね」
いきなり一資産築いたわりには小心な僕の発言に、女性二人は噴き出さずにいられなかったようで、ひとしきり笑った後、二人して僕の手を引いて露店を物色し始めた。
小一時間ほどかけて露店を回り、結局、僕は二人に白貨を1枚ずつ使った。
ヤールンは肌着(「にーさんは何色がええ?」と聞かれて店先で赤面する羽目になる)と、請われて選んだ明るい灰色をした薄手のジャケットを購入した。
思いのほか、喜んでもらえたようで僕としても嬉しい。
ヤールンは何を着てもなかなか似合うので選ぶ方としても楽しかった。
ミリィは尻尾につけるアクセサリがほしいとほうぼう探し回り、銀細工の尾環を見つけ出してきていたので、それをプレゼントした。
そろそろいい時間だし、昼食をどうするか……と三人で話し合っていると聞いたことのある金属音が街に響き渡った。
ネルキド市の警戒態勢を知らせる鐘の音である。
僕はミリィと二人、顔を見合わせる。
「ユウ、行きましょう。商館まで行けば詳細がわかるはずよ」
「あたしは緊急依頼がでてないか、ギルドに戻ってみるわ。にーさん、服ありがとう、また後でな」
事情を察したヤールンは、冒険者ギルドの方向へ走っていった。
「いきましょ!」
「わかりました」
鳴り響く警鐘のなか、僕はミリィとともに商館に向かって走った。
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