第40話
本日ラストの更新('ω')!
尺の都合、少し短めでございます
大通りは明るく、今日も行き交う人々でにぎわっている。
幸い、いい天気には恵まれて寒さはやや和らいでいるようだ。
レムシータの季節のことはわからないが、どうやら今は春先のような季節らしく、まだしばらくは少し肌寒い日が続くとミリィが教えてくれた。
いい天気に恵まれたことをお天道様に感謝しながら、ネルキド市の街並をミリィの案内で歩く。
目的地の冒険者ギルドは北区にあるらしく、『踊るアヒル亭』からは少し遠い。
案内するミリィは商店や施設、おいしい食事どころなどを僕に説明しながら時折、この世界の常識などを織り交ぜながら歩いた。
ヤールンは時々僕をチラチラみながら、僕の横を歩く。
かわいいけど、ちょっと態度がくすぐったい。
到着した冒険者ギルドは石造り二階建ての円形をした建物で、外にもその喧騒が伝わる賑わいっぷりであった。
それもそのはず、ネルキド市は防衛のためにクエスト特需となっているのだ。
今の時期、冒険者の中でも『監視人』や『追跡者』と呼ばれる特別なスキルを持った斥候が、常時ネルキド市の周囲を警戒しており、魔物の発生や大暴走の徴候を知らせたり、大型モンスターの移動を警告したりしている。
冒険者ギルドはそれを受けて、討伐依頼や警戒・防衛依頼を張り出し、出稼ぎの冒険者はそれを達成することで報酬と実績を得る、というのが流れとして成り立っていた。
割りのいい依頼はすぐに受諾され、一人で困難な場合は即席のパーティが、この冒険者ギルドで結成される。
そのため、現在冒険者ギルドは人で溢れかえり、混雑の極みにあった。
ミリィに伴われて、総合受付と書かれたカウンターに向かう。
依頼受付カウンターとは仕事を別にしているため、この混雑の中でも比較的スムーズにたどり着くことができた。
受付に立つのは、かっちりと制服を着込こんだ、いかにも事務員といった風の眼鏡をかけたエルフ女性。僕たちに気づくと、柔和な笑顔を見せて小さく頭を下げてくれる。
「あら、ミリィさん。今日はどういったご用件ですか?」
「冒険者登録に来たの。彼、『鬼灯兵団』の客分として逗留してもらってるんだけど、冒険者登録はまだしてないって話だから」
「わかりました。こちらの用紙に必要事項を記入の上、この窓口に提出してください……ところで、字は書けますか?」
和紙のような素材の紙を僕に渡しながら訊ねる。
「えぇと……」
読むことはできる。
試しに名前を書いてみると、レムシータの文字がスラスラと書けた。
大丈夫そうだ。
名前や年齢、性別から得意武器、使用可能な魔法の種類など多岐にわたっての項目がずらりと並ぶ。
僕は少し考えて、ミリィに耳打ちする。
「これ、正直に書いたほうがいいんですかね?」
「基本はそうだけど、あなたの場合はねぇ……」
横で話を聞いていたヤールンが、僕の服の裾をつまんで、そっと耳打ちする。
「基本は依頼の斡旋やらの目安にするだけやし、書きたないところは空欄でも良えはずや」
……とアドバイスをしてくれた。
そうだった……僕にとってヤールンは、冒険者の先輩になるのだ。
「ありがとう。じゃあ、書いてしまいますね」
(体術少々、赤魔術と黒魔術、青魔術を少々。白緑魔術は使えません……と)
基本データのような部分は正直に記載した。
それをざっと見た受付のエルフは少し驚いた顔を見せた後、「問題ないようですね」と答えると、青いインクのハンコをポンと用紙に押す。
「三色使いとは、『鬼灯兵団』はいい新人を迎えたようですね?」
「生憎まだ勧誘中よ。本人の希望に中々添えなくてね」
受付嬢の軽口にミリィが苦笑しながら答える。
「ではそれを持って地下へどうぞ」
そう言って僕に、用紙を返却しながら奥の階段を示した。
「監督官に試験を行ってもらいます。少々お待ちいただくかもしれませんが……これだけ人が余っていればすぐに決まるでしょう」
ニコリとして、小さな紙をつまんだ右手をサっと動かす。
次の瞬間、依頼掲示板の角の方にその紙が小さな針で縫いとめられていた。
それに気がついた数人の冒険者がそれを見ている。
早業かつスゴ技である。
「では……地下でお待ちください。ミリィさんとお連れの方もご一緒でいいですよ」
受付に促され、僕たちは地下に降りていった。
いかがでしたでしょうか('ω')
次回は普通のファンタジーではなかなか見ない珍しい種族が登場します。
ご期待くださいませ……!
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