第35話
今日も頑張って更新してまいります('ω')
一階の食堂におりた僕を待っていたのは、山盛りになった唐揚げのような揚げ物と、たっぷりのマッシュポテト、それに大盛りになった野菜サラダが並べられたテーブルだった。
……料理だ!
まともな料理がある!
長らく迷宮にこもって黒竜王の尻尾を喰らっていた僕にとって、あまりにも魅力的な色彩と匂い。
「いただきます!」
最初に手を付けるのは、野菜だ。
シャキシャキとしたみずみずしい歯ごたえに、僕は思わず泣きそうになった。
野菜はこうでなくては!
ちなみに墳墓迷宮で提供された野菜は、浅層にいる植物型モンスター『グレーターマンドラゴラ』のぶつ切りである。
『やけに苦く、水気のないゴボウ』と自らを偽って食べていたのが思い出される。
「野菜好きなんやね……」
ヤールンは対面に座って、僕の唐揚げを肴にエールをあおっている。
それを見た僕は、ちょっとした興味から、ヤールンに訊ねる。
「やっぱりドワーフなのでエールが好物なんですか?」
僕の知っているドワーフという架空の人種は、ずんぐりむっくりで筋肉質、男女ともに髭を生やしていて、エールと鉄が大好きな頑固者……である。
しかし、目の前の美少女といっても差し支えないドワーフは、幼い印象を残すかわいらしい容姿だ。
つまり、「何か知ってるドワーフと違う……」という違和感が強い。
何故か関西弁をしゃべってるし。
「酒は何でも好きやけど、エールが一番安いからなぁ」
「そういうもんですか」
「ほんまは火酒がええんやけど、人間の都市では高いんや」
ジョッキをあおりながら、ヤールンが答える。
テーブルで向かい合って益体ない話をしながら、しばらくぶりのまともな料理を堪能していると、大男がテーブルに訪れる。
さっき、ヤールンを投げ飛ばした男だ。
そんな強面の大男がいきなり深々と頭を下げた。
「嫁と、子供の命を助けてくれたと聞いた。本当に感謝している」
「成り行きでそうなっただけなので、あまり気にしないでください。それよりも料理、すごくおいしいです」
僕がそう応えると、ジャブローはにかんだような笑みを浮かべ、会釈して厨房に戻っていった。なるほど、いい男とはこういうものか。
謙遜もしないし、笑顔の使いどころを心得ている。
「アタシがアホやったわ……そんな事情やったら、確かに部屋くらい用意しとかな不義理やな」
ヤールンが頭を抱える。
「事情は誰にだってあるんですし、あんまり気にしないほうがいいんじゃないですか」
悔恨に頭を抱えるドワーフ少女を慰めながら、新しくマーサが運んでくれたサイコロステーキのような料理をヤールンの皿に取り分ける。
「なぁ、さっきから料理くれてるけど、もらってええんか?」
「え、ドワーフってすごく食べるイメージなんですけど」
ドワーフといえば呑兵衛で大食いが常識だと思っていた。
「そのイメージは大体合ってるけど、アタシこう見えて女なんやで……いや、もらうけどな……」
「そりゃ、失礼しました」
和やかに食事はすすむ。
腹がいっぱいになった僕はミッサに一声かけて、ヤールンとともに部屋に戻った。
部屋につくとヤールンはベッドの端に腰掛けて、ボロボロのブーツを脱ぐ。
僕はというと、備え付けの椅子に座って、机の上に魔法の鞄からいくつかアイテムを取り出して、並べていく。
改めて見ると、ヤールンはなかなかの美少女だ。
健康的な浅黒い肌、ふんわりと三つ編みにした栗色の髪、目は大きく、瞳は明るい茶色。
ドワーフとしての基準はわからないが、整った顔をしているし、身長に対してメリハリのある体つきをしている。
つまり、美少女でグラマラスでスタイル抜群。
年は……実際はいくつなんだろう?
「ん? どうしたん?」
僕の視線に気づきこちらに、トコトコと歩み寄ってくる。
ドワーフというより、イメージとしては丘小人みたいだな。
実際の丘小人には、出会ったことはないけれど。
「いや、ヤールンさんっていくつなんだろうと思って」
「にーさん、女性の年を聞きたらあかんのは、世間知らずではすまされへんで」
やはり世界共通どころか、全次元共通の常識であったようだ。
「すいませんね。他の種族の年齢っていまいちわからないんですよ。ヤールンさんが若く見えるから質問しただけです」
苦笑しながら机に広げたいくつかの小瓶から、青く透き通った液体が入った瓶のふたを開けて、それを部屋に備え付けられた清潔な手ぬぐいに染み込ませる。
「ヤールンさん、ちょっとこっちへ」
「なんやなんや?」
手ぬぐいを擦過傷の残る頬に添える。
その瞬間 ジュッ と焼きごてを押し付けたような音がする。
「のあああああああぁぁぁぁ!」
「ヤールンさん、がまん、がまんです!」
逃げようとするヤールンを、抱きかかえるようにして押さえる。
あ、やわらかい。
……ではなく。
そう、この治癒の魔法薬……効果はあるのだが、物凄く痛いのだ。
傷が治癒すると痛みがなくなるので、治ったかどうか確認するのにも便利ではあるが。
「いきなり何するねん! めっちゃ痛いやん」
「あはは」
「何わろとんねん!」
涙目で抗議するヤールン。
「でも痛くなくなったでしょ」
「ほんまや……」
見ると、傷はきれいに完治している。
今度は膝にペタリ。
悶絶しながら痛みに耐えるヤールン。
傷を全て癒し終わったころには、上気した顔で息も絶え絶えなドワーフ少女がベッドに横たわっていた。
この位のえっち風味は許されるはず('ω')クワッ