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第31話

本日ラストの更新です('ω')!

説明回気味かも……

 領主であるテイラーズ市長の謝罪と言い訳は、実に二時間にも及んだ。

 おかげで、僕だけでなくバッソとミリィまでもがすっかりくたびれてしまった。


 そして結果から言うと、やはり僕はテイラーズが好きになれなかった。


 貴族という者達の性質なのか、それともテイラーズ本人の性質なのか判断はつかないが、物事を大きく見すぎており、人の気持ちをないがしろにしがちな気質が、会話の節々に感じられたからだ。


 およそ共感できそうにない。

 

 テイラーズはしきりに自分の屋敷での滞在を勧めたが、僕は「約束があるので」と誤魔化して話を切り上げた。

 領主館を後にし、ミリィに連れられて噴水広場に向かって歩く。

 バッソは領主にまだ話があるというので屋敷で別れた。


「なんというか、肩がこりました……。あの人に会うのはこれっきりにしたいですね」

「お疲れ様。じゃ、約束どおり『踊るアヒル亭』に案内するわね」


 ミリィに案内で、夕食時の買い物客で賑わう市場通りを歩く。

 

 市場通りは縁日のように露店がずらりと並び、売っているものも様々だ。

 野菜、肉、果物に始まり、香辛料や花。生活雑貨やキッチン周りのものまである。

 生活に関わるもののほとんどがここで揃う、とミリィは僕に説明した。


「賑わってますね」

「特に昨日からはね。魔物被害を避けて周辺の集落から一気に人が集まってきているから」


 集落の多くは魔物に対する防備を持たないらしい。

 そのため、魔物被害が続発する『大接近』の間はこうやって防壁のあるネルキド市に集まって来るとか。


 市場通りを歩きながら、僕はミリィに市場で色々なものを指差しては名前を教えてもらっていた。


 知っている名前のものがいくつかあって驚いた。

 トマトやズッキーニなどの野菜類はほとんどそのまま、オレンジやリンゴもそのままこの世界の名称としてあった。

 理由は不明だが、言語が通じているのだから何かしら超自然的な現象で認知されていると思うしかない。


 そういえば貨幣は使えるのだろうか?

 そう思い、金貨を一枚取り出してミリィにこれが使えるのか聞いてみることにした。


「わっ、旧貨幣だ……。ランデール金貨なんて久々に見たかも……」


 ミリィの瞳が細くなり、尻尾が左右に揺れる。


「使えないんですか?」

「この金貨はおおよそ五百年前に流通していたものよ。今は古銭扱いで、直接買い物に使うことはできないわね」

「それは困りました。そうなると今の僕は文無しですよ……」

「遺跡から発掘されたり、ダンジョンで発見されたりするものは冒険者ギルドが買い取ってくれるわよ?」


 なるほど。


「じゃあ、今の通貨はどうなっているんですか?」

「今は『色貨幣(ラカ)』っていう通貨が流通しているわね。私達のような冒険者はギルド発行の魔法の銀板(パーソナルタグ)を使ったりもするけど」


 ミリィは胸元から、ネームタグのような小さな金属製の板を取り出して見せる。


「これが魔法の銀板(パーソナルタグ)。んー……なんていうか貯金の証みたいなヤツよ。基本的に冒険者の依頼達成報酬は冒険者ギルドを通してここに払い込まれるわ。魔法の銀板(パーソナルタグ)対応のお店だったら魔法の銀板(パーソナルタグ)だけでお金のやり取りができるようになってるの」


 現代でいうところの、クレジットカードのようなものか。


「で、この世界のお金の単位はラカっていうの。これよ」


 色とりどりの硬貨のようなものをミリィが見せてくれる。


「そうね……例えば、そこで売ってるリンゴは? 字は読める?」

「一山300ラカ、ですね」

「正解、おねーさんが奢ってあげるわ」


 そういってミリィは明るい緑色の硬貨を一つ僕に差し出す。

 硬貨は大体五百円玉ほどで材質は不明だが、やや軽い印象。


 それを店主に差出し、リンゴを一山指さす。

 店主は笑顔で赤い硬貨を1枚、黒い硬貨を1枚をリンゴとともに僕に手渡した。


「まいど」


 意外そうな顔をするミリィ。


「買い物はできるのね」

「様式は僕の知っている売買と同じですね」


 ここで、僕はミリィに試されたことに気付く。

 指導役、とはこういうことか。


「こういう露天では、カードは使えないわ。使える場所もあるけど少ないと思う。ちなみに今、ユウに渡したのが1,000ラカ緑貨ね。お釣りでもらった赤いのは500ラカ赤貨、黒いのは100ラカ黒貨」


「あれ……じゃあ100ラカぼられてませんか?」

「そういうこと。よくできました。計算もはやいのね、さすが魔法使い」


 チラリと振り返ると、店主がにやっと笑って百ラカ黒貨を投げてよこした。

 なるほど、事情を察した店主が僕の「はじめてのお使い」に付き合ってくれたってワケだ。


「この上は、5,000ラカ青貨、10,000ラカ白貨、そして100,000ラカ黄金貨ね。私達みたいな冒険者は遠出でもなければそんなに持ち歩かないし、黄金貨なんてこの辺のバザーで出しても困った顔されるでしょうね」


 つまり、ええと。


 黒貨が100ラカ。

 赤貨が500ラカ。

 緑貨が1,000ラカ。

 青貨が5,000ラカ。

 白貨が10,000ラカ。

 黄金貨が100,000ラカ。


 よし、覚えた。


「この金貨はいくらくらいに?」

「一枚50万ラカってとこかしらね、今のレートだと」

「えっ」


 驚くほど高価なものだった。

 レート的に正確かは不明だが、リンゴ一山300円として1ラカ1円程度。


 この金貨1枚で50万円相当。

 元の世界では持ったこともないような大金だ。


 黒竜王(アナハイム)の寝床に使ったぶん以外を、かなりの枚数持ってきている。

 旅には金が必要だろう、と黒竜王(アナハイム)が大量に持たせてくれたものだ。

 とすると、僕はちょっとした富豪レベルの財産を持ち歩いていることになる。


「あ、じゃあ宿屋に払うお金を作らないとまずいですかね?」

「今から冒険者ギルドに行って、登録申請してテストして、金貨査定して……ってかなり時間かかると思うわよ?」

「テストとかもあるんですかッ?」

「ええ、簡単な身体能力テストみたいなものとかだけど、半日くらいかかるわよ」

「ぐぅ……」


 こんなことならちょび髭(テイラーズ)の館なんかとっとと引き上げればよかった。


「おねーさんに任せときなさい、なんとでもなるから」


 と、ミリィは控えめな胸をどんと叩いた。


「そういうわけにはいきませんよ。……あ、この金貨、ミリィさんに買い取っていただくことはできませんかね?」

「50万ラカも持ち歩いてないわよ! 若いんだからそういうこと気にしないの、もう……」


 僕はミリィに引っ張られるように市場を後にした。


いかがでしたでしょうか('ω')

次回、いよいようなぎシリーズには欠かせないあのお店が出てきます!


よろしければ期待と欲望を込めて……

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