第29話
今日も更新頑張ります('ω')
バッソ達に伴われて、僕はネルキドの市街を歩く。
通り抜けた街の外縁部はやけに閑散としていたが、ところどころにテントのようなものがあり、そこには人影がチラホラと見えた。
「こっちだ」
バッソ達の後についてしばらく歩くと、足元は徐々に石畳へと変化していく。
それに伴って人通りも増え始め、周囲は徐々に活気に満ちていった。
「ここが市の中央だから、迷ったらまずここに戻ってくるのよ?」
そう言ってミリィが指さしたのは大きな噴水だ。
「噴水広場だ。ネルキド市の大きな通りは全部ここで交差してるから、最初の内はここに立ち戻って案内板を探すといい」
「わかりました」
噴水広場から西へしばらく歩くと、三階建ての赤い屋根の館が見えてきた。
かなり大きな建物で、庭にあたる場所には資材らしきものが乱雑に置かれ、それを運ぶ人影が忙しそうに動き回っている。
「見えてきた。あそこにあるのが俺達『鬼灯兵団』が宿舎に使ってる商館だ。部屋はまだ余っているからユウも遠慮なく使ってくれ」
そういわれて、ふと、あの親子のことを思い出した。
ミッサとマーサ……あの二人は宿をやっていると言っていたような気がする。
「もしかすると、僕の為に部屋を空けてくれている人が居るかもしれないので、そこに先に問い合わせてもいいですか?」
「この時期にか? 宿はどこもかしこも一杯で、あぶれて外縁部でテントを張ってる奴らすらいるんだぞ」
「僕としては大型のテントもあるのでそれでもいいんですが……」
「もしかしてそれも魔法道具か?」
「はい」
僕の返答に、バッソは天を仰ぐような仕草をする。
時々動きがダイナミックで芝居がかるのはどうなんだろう。
「強力な魔法道具は、あまり人前で使って見せないほうがいい。トラブルのもとだ。……宿のアテがあるなら、まずはそこに聞いてみるといいかもな。ウチに居るにしても、この時期に部屋を余らせておくのは宿としてはもったいない」
第一印象から感じていたことだが、このバッソという男はこれでよく気の回る人物だ。
冒険者やら傭兵などという勝手気ままな集団をまとめているのだから、そういう気質や才能も必要なのだろう。
「領主館に行った後、探してみます。ミッサという女性がやっている宿なんですけど」
そう告げると、ミリィの耳がピクリと動いた。
「あ、そこなら私が知っているわ。『踊るアヒル亭』のことよ、それ。食事がおいしくてオマケしてくれるから隊の子たちと何回か行ったわ。難点は魚料理が一切ないところかしら」
思いのほか目的の場所は、あっさりと見つかった。
「あとで、私が案内してあげるわね」
「お願いします」
話をしながら商館前に到着。
資材の積み上がる庭のような広場には、いかにも荒くれといった風の多種多様な種族の者達がたむろしている。
何ともガラの悪い雰囲気に思わず「今日は珍走団の集会か何かですか」と聞きたくなる風景だ。
到着したバッソに気づくと、数人が駆け寄ってくる。
僕としてはなんだか威圧感を感じる光景だ。
「そのガk……少年が?」
いま、僕のことをガキって言おうとしたよね……?
まぁ、若いのは確かなので、そこは認めるしかないけど。
「客分のユウだ。昨日の戦闘に参加しなかったお前らにはわからんだろうが、優秀な魔法使いだ」
「よろしくお願いします」
バッソの紹介があったので、一応丁寧に挨拶しておく。
「お……おう。よろしくな」
ぎこちない挨拶になったが、それほど拒否感は見られない。
現場にいなかったからだろう。
直接僕と相対した人たちなら、きっと僕をなじるか、恐れるかするに違いない。
「ゲムレットとベルググは居るよな?」
「二人とも会議室にいるとおもいやす」
「これから、このユウにも今回の仕事を手伝ってもらうことになった。一緒に仕事する際は、お前らも上手くサポートしてくれ。魔法以外は年齢相応の世間知らずだからな」
それはあんまりだと思ったが、事実なので言い返しようもない。
しかし、もう少し、ソフトに言って欲しい。地味に傷つく。
「わかりやした」
目つきの悪い若者は、バッソに頭を下げて作業に戻る。
なかなかの働き者だ。
「じゃ、いこうか」
館の大きな両開き扉をあけて、バッソが僕を中に促す。
薄い絨毯が敷かれた廊下を歩く。
なるほど、これなら金属鎧で歩いても大きな音が立たなくて便利だし、床を傷つけることもない。
傭兵家業の知恵という奴だろうか。
しばらく屋敷の中を歩くと、大きな両開きの扉が見えてきた。
「ここだ。臨時の隊長会議を招集してある。ここでユウを紹介するが……あんまり緊張しないでいいからな」
バッソの笑顔に、思わずため息をもらう。
そんな風に言われたら、逆に緊張してしまうだろう?
いかがでしたでしょうか('ω')