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スーサイドブラッドの伝説  作者: 右薙 光介


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25/102

第25話

本日ラストの更新('ω')

尺の都合でちょっと短め……

※猫族の戦士ミリィ視点です



 ユウの隠れ家から出て、拠点までのその道すがら。

 バッソ大隊長が頭を抱えながら歩いているのを、半歩下がった後ろから私は見守る。


 年若い千人隊長。

 人柄はよく、戦いの腕も確か。少しばかり、考えが足りないことはあるが、だからといって周囲の意見に耳を貸さないわけでもない。


「ミリィ十人隊長。この失態、皆はどう見るだろう?」

「大隊長の発案でしたが、筋は通ってましたし、私も含めて隊長格全員の合意でした。本当に彼が魔族であった場合、正しい対処だったと思います」

「ううむ……」


 私の答えに、バッソ大隊長は唸って答える。

 納得いかない答えだったのだろうか?


 通常、大暴走(スタンピード)を一人で止めるなんてことはありえず、常識も通じないとなれば疑ってかかるのが正しい。

 特に、大接近の恐ろしさは、第三層大陸(トロアナ)出身の私が一番よくわかっている。

 実際に魔族の一団が上がってきて、恐怖をまき散らした例もあるのだ。


「もし、あの少年が魔族で本気だったら、俺らどころか街ごとやられてたかもしれん」

「帰って部隊の状況を確認しましょう。確かに私たちは手痛い反撃を受けました。判断ミスだったといえるでしょう」


 私の答えに、ガクリと肩を落とすバッソ大隊長。

 こういうところは失礼ながら、少し可愛いと思う。

 大隊長は私をあまり好きではないようだけど。


「しかし、意思疎通可能で極めて強力な魔法使いとのパイプができた、と前向きに考えましょう」


 助け舟を出すと、振り向いた大隊長が満面の笑みを浮かべて「そうだな」とうなずいた。

 この人当たりの良さは、彼の魅力だろう。


 第三層大陸(トロアナ)防衛部隊のうち、ネルキド市に派遣されているのは、獣人やドワーフなどを中核とする混成部隊だ。

 それをうまく取りまとめるには、実力と魅力を兼ね備える大隊長のような人材が適切だ。

 半ば、若いがゆえにかわいがられてるという側面もないとは言えないが。


 それに、「獣人ごとき」「女ごとき」と侮らず、どんな役職の意見もうまく調節するバッソ大隊長という人材は、このネルキド防衛に必須といえる。


「どうした、ミリィ十人隊長」

「いえ、被害がどれほどかと考えていました」


 嘘で誤魔化しておく。

 かわいらしく思ってます……など不敬の極みだ。


「バッソ大隊長! ミリィ!」


 前方から武装した集団が行進してくるのが見えた。

 その先頭を歩くドワーフにしては大柄な百人隊長、ベルググが駆け寄ってくる。


「おお、ベルググ! すまない、今戻った」


 片手を上げて返事をするバッソ大隊長。


「高位魔族にさらわれたって噂になってやしたけど、大丈夫だったんですかい?」

「え、そんな話になってたの?」

「ミリィは殿について戻ってこなかったって話だったんで、死んだってことになってるぞ」

「ひどい!」


 『鬼灯兵団』の拠点では、大きな混乱が起きている様子だった。

 バッソ大隊長と私は、襲ってきた高位魔族にさらわれたと噂になっていたのだ。


 急いで拠点となっている商館へ走った私たちは、ベルググを伴って作戦会議室となっている部屋へ飛びこむ。

 中では残った隊長格が問題の対応を協議しており、さらに会議は紛糾していた。


 正確には応援を呼んで抗戦するか、依頼そのもの──街を諦めて撤退するかの相談である。


 ベルググは強硬偵察として部隊を引き連れて飛び出して来たらしい。

 バッソ大隊長がいないだけでこうも簡単に連携が瓦解する。

 もし、事情を知らなければ、飛び出していった中に私もいただろう


「すまない、今戻った」


 静まり返る会議室。


「俺の判断ミスだった。被害状況を教えてくれるか?」


 バッソ大隊長は頭を下げるが、独断というわけでもなく、与えられた情報を吟味して作戦に参加した隊長各をはじめとする団員に、バッソを責める事は到底できないはずだ。


 『鬼灯兵団』は自由な冒険者と傭兵の混成部隊である。

 ペナルティはあるが作戦行動に参加しないという選択肢もあるのだ。

 事態が収まって落ち着きを取り戻した会議室で、バッソ大隊長と私は事情を説明する。


 強大な力から魔族と判断した少年は、強力な魔法使いの下で修行を積んだ人間であり、特別な使命を持って旅をしている、とかいつまんでの説明ではあったが特に意見は挙がってこない。


「おそらく『神聖変異(ディバインコード)』に近い加護を得ている人物に、我々は愚かにも戦いを挑んだのだと思われます」


 ……と私は報告する。

 『神聖変異(ディバインコード)』とは、神に特別な使命を与えられた者が受ける加護の事を指す。魔族の王が顕現した時や、人に害為す悪竜が現れた時などに、『勇者』としてその使命を受けた者が与えられる特別な力の総称でもある。

 そのような人物に、勘違いとはいえ有無を言わせずに先制攻撃を行ったのだ。

 下手をすれば加護を垂れさせた者(神か神のようなだれか)から街ごと報復攻撃を受けて全滅してもおかしくない。


 事態を把握した、その場の全員が生唾を飲み込んだ。


次回も猫さん視点です('ω')

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[気になる点] 第25部分の前書きの『尺の都合』が癪に障るという字になっています
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