第14話
今日も更新がんばるぞい('ω')
少し短め!
今日は三話更新の予定です。
一日置いて、いよいよ魔法の修練が始まった。
魔法、という言葉に心が躍ってしまうが、こんな時に不謹慎だろうか?
いや、しかし異世界で魔法というのは、やはり心躍るものがあるのは確かだ。
「念のため確認するが、ユウの世界には魔法はなかったのよな?」
「魔法という言葉はありましたけど、あいにく使っている人は見たことがありませんね」
「では、魔力を掴む感覚からじゃの……。我の後に続いて唱えてみせよ」
「待って、アン。さっきアンは何も唱えずに魔法を使っていたじゃないですか」
幾らなんでもアニメで見聞きしたような、恥ずかしい魔法の詠唱をさせられては叶わない。
「あれは自傷魔術を利用しておるのよ。慣れればユウにも出来るであろうが、まずは基本を押さえねばの」
アナハイムが僕の手を取って、構えさせる。
観念するしかないか……。
「ではゆくぞ? 魔力活性──魔力維持──術式描写──魔力赤活──魔法構成開始……<焼き穿つ熱線>」
流し込まれたアナハイムの魔力が、僕の指先からはぜるように放たれて、先ほど見た熱線が放たれる。
魔法、僕はいま魔法を使ったのだ。
完全に、外部操作だったが。
「今のが、正しい魔法の使い方じゃ。これをひとつまみして、同じくしてみるがよい」
小袋の中のさらさらした赤い砂のような物を、言われるままひとつまみする。
指先にちりりとした魔力を感じて気付く。これが触媒か……!
「魔力活性──魔力維持──術式描写──魔力赤活──魔法構成開始」
丁寧に、アナハイムのやった通りにとトレースしたつもりだが、思ったよりも揺らぐ。
意外と、難しい。
「<焼き穿つ熱線>」
花火みたいな短い炎がシューッと指先から出て、すぐに先細っていった。
「まぁ、初めてだとそんなもんじゃろう」
美少女黒竜王が笑いをこらえた顔で僕を慰める。
ちょっと悔しくはあるが、僕としては『魔法を使うことが出来た』感動の方が大きい。
「どれ、今ので感触はつかめたじゃろう? もう一度やってみるがよい。しばしは練習じゃ」
一つ一つの行程を確認しながら、呪文を唱える。
まず、周囲と体内の魔力を同調させ励起させていく。
次に、高まった魔力を維持して、そこに使いたい魔法の術式──今からどのような手順で、どのような結果を発生させるのかを示した、数式のようなもの──を意識して呪文を唱える。
その術式を起動するのに必要な魔力のカタチを指定し、必要な量を供給すると……それに応えて、プログラムのように術式が『現実の法則』を書き換えていく。
「<焼き穿つ熱線>」
今度は指先から、腕の太さほどの熱線が放たれ、玉座の間の壁を焦がす。
「ほう……! 筋がいいの」
「アンの血が入ってるからですかね?」
「それはわからんが、素質は十分よな」
鷹揚にうなずくアナハイムに指導されて、僕はいくつかの魔法を実行していく。
それによって、徐々に僕の適性が判明していった。
アナハイム同様、僕は白と緑に属する五大魔法は使用できず、赤・黒・青の三属性の五大魔法が比較的得意だということ。
熱線を撃つ、攻撃を幻影で回避する、ガイコツ兵士を召喚するなどの基礎的な魔法は、簡単にできた。
しかし、魔道書を読み漁ろうが、うんうん唸りながら呪文を完成させようが、どうやっても白と緑の五大魔法はうんともすんともいわなかった。
アナハイム曰く、土地柄も関係しているのだろう、とのこと。
この第四層大陸は火山が多いため、赤魔法の親和性が高いらしく、同様に荒野や墳墓迷宮といった要素が黒魔法の力を増幅し白や緑といった五大魔法を抑制するらしい。
青魔法は精神や空間に作用するものが多く、あまり場所の影響は受けないと事だったが。
「残念じゃったの」
「まぁ……アンと同じというのは“お揃い”みたいで嬉しいですけどね」
そう伝えると、黒竜王様は赤面してしまい、こちらもなんだか気恥ずかしくなってしまった。
「では、次の魔法じゃ……」
アナハイムから魔法の手ほどきを受けながら、僕は十数日間にわたってスパルタ教育を受けた。
アナハイムが「そろそろ一人前かの?」と笑う頃には、すっかりへとへとになっていたものの、その言葉にちょっとした誇りのようなものが芽生えていた。
次は17時更新です('ω')