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駆出し陰陽師と夏に降る紅葉  作者: 宗谷 圭
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 新年の来客もそろそろ途切れただろうか、という頃。主人は酒気を醒ますため、釣殿まで足を伸ばした。

 この邸の釣殿を囲む池の傍らには、それは見事なもみじの木が生えている。秋の紅葉もさる事ながら、春から夏にかけての青葉も美しい。冬の、葉が落ちた枝に雪が積もっているのも様になる。それが池に映っている様子も、また見事なものだ。

 主人はこの木を大層気に入っており、大切な客をもてなす時には必ずこの釣殿を利用するほどである。

 このもみじの木を眺めながら、釣殿で夜の風にあたり、酒気で火照った体を冷まそう。そうする事で酔いを醒まそう。釣殿まで足を伸ばしたのは、そう思っての事だった。

 だが、冷たい風に長く晒されずとも、主人の酔いは醒める事となる。

 雪が融け始め、残雪の白と土の茶色とで斑になっているはずのその場所が、紅く染まっていた。

 もみじの木に、葉が芽吹いている。……いや、芽吹いているどころではない。葉は既に大きく育ち、紅く色付いているではないか。

 はて、己はそれほど酒に弱くないと自覚していたが、それでも強かに酔ってしまう程痛飲しただろうか。

 目を見開きながら、手の甲をつねってみる。……痛みは、感じる。

 庭に出て池まで移動し、もみじの木に近寄ってみた。……やはり、紅く色付いている。

 池の水に、手を浸してもみた。あまりの冷たさに、十数える間も耐えられず、手を引っ込めた。

 そうして、もう一度もみじの木を見る。……やはり、紅く色付いている。

 そこで初めて、主人は人を呼んだ。他の者にも、やはりもみじが紅く色付き、更に地に紅葉が降り積もっているように見えたため、場は一気に騒然となる。

 騒ぐ人々をよそに、もみじの木からは色付いた葉がひらひらはらはらと降り続ける。その様を、主人はただ呆然としながら、眺めていたのだった。

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