表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/9

第5話 ひゃっはー結界だ!

「ナディア様……結界石の配置、終わりました。」


穏やかな口調で場の準備が出来た事を伝えるオルロフ


既に精神統一を終えていたナディアは、無言で頷く。


ダンジョンを封印するには多大な労力と時間を要する。

そのため、長期の作業に邪魔が入らないよう先ずは、ダンジョンの入口を含む周囲に結界を張る必要があった。


結界石と呼ばれる元々光属性を帯びた魔石を支点として、各支点を魔力で繋ぎ魔物の侵入を防ぐバリアーを張るのである。


ちなみに、光属性は、魔物に対して格段に有効であるが、対人では、魔人の類でもない限り効果がないため、人を含む全てに効果を求めるのであれば火属性等の他の属性の魔石を使用するらしい。


魔石は、ダンジョン内で発掘されたり、魔物から摘出されるものであり、属性や大きさ、質で価格も千差万別である。

洞穴前で倒したトロルの胸部からも親指大の魔石を摘出していた。


「……それでは、これより結界の儀を執り行います。」


ナディアの厳かな声が響くと、ナディアの正面に据え置かれた水晶球が光を帯び始める。


光は、次第に水晶球の中心部に収束していき、その濃さを増しているようであった。


魔法は、『魔力をある属性に変換したから収束(集中)させる』か、『魔力を収束(集中)させてからある属性に変換する』かした後、指向性を持たせたりして発動するのが一般的な手順との事である。

もちろん、体内で魔力を1ヶ所に収束させ、属性変換した後も収束という2段階の過程を経る事も出来るが、より長時間、集中力の維持が必要となるらしい。


余談であるが、ある属性に変換した後の魔力は、放散しようとするため、前者の手順の方が圧倒的に難しく、属性変換後、収束させた上に強烈な指向性まで付与されたソーラレイのような貫通力がある魔法を使える者は、一流とされる。

一流以上の魔法を使う者は、洗礼により与えられたジョブとは別に魔導師とも呼ばれ、尊敬と畏怖を集める存在である。


そしてとうとう、光が一点にまで収束すると、その一点から上空に光線が放たれる。

放たれた光線は、上空で幾つかに別れ、結界石に降り注いだ。


次の瞬間、支点となった結界石がスパークして辺り一面が光で覆われる。

しかし、その状態が長続きする事はなく、光は霧散し、すぐに元の何の変哲もない森の風景に戻った。

ジーザにしてみれば、わけも分からず狐につままれたような感覚である。


「終わりました……成功です……。」


ナディアは、そう呟くと、ドッと疲れが出たのか、座った姿勢を維持できず、地面に両手をついてしまう。


「お疲れ様でした。少し長めに休憩を取りましょう。」


サッとナディアの肩を支えに来るオルロフ


ジーザは、ナディアの様子を気に止める事もなく、興味深げに結界の張られた周囲を眺めている。


「ふむ、やり方は全く分からんが、そういうベールみたいので覆ったという事か……。出入りは自由……だよな?」


慎重に結界の境界線を行ったり来たりして確認するジーザ

出入りする事に支障はなさそうだった。

……どうやら、ジーザは、魔物と認識されずに済んだようである。


ジーザがそんな事をしている間にオルロフは、休憩の準備を進めていた。

結界を張る際に敷いた麻布は、そのままに木製の小さなお盆にティーセットとお茶菓子が置かれている。


茂みの奥からその他の荷物も推進して傍らに固めると、慣れた手付きで紅茶を用意するオルロフ


「オルロフの奴、召し使いみたいな事もやるのか……芸達者なもんだな。」


ジーザは、半ば呆れ顔でその様子を眺めていたが、自分も小腹が空いてきた事に気付くとバスケットから、ルチア特製のサンドイッチを取り出しパクつく。

鹿肉と猪肉の合挽きハンバーグ、レタス、炒めた刻みハーブ等が挟まれており、口に入れた瞬間、豊かな肉の味わいが広がる一品である。


そのまま小一時間程、ミルクティーとクッキーで英気を養っていると、ナディアの顔色も良くなってくる。


休憩中は、心身共に休ませたいという事で、ナディアを敢えて蚊帳の外にして、

オルロフとジーザで、魔石以外にも素材として有用な牙や爪をトロルから回収したり、じ後の予定について話し合ったりしていた。

こういう時は、それが常態化しているのか、ナディアも蚊帳の外に置かれても不貞腐れたりしていない。


「……そんな訳で、今回に限っては周囲の探知も同時にできる上級結界を張って戴いた。

先程話した手筈通りナディア様が封印の準備する間、俺達でダンジョンの調査をするぞ。

用意はいいか?」


「ああ、いつでも大丈夫だ。」


ジーザの回答を受けてオルロフがナディアに向き直ると、ナディアもいよいよかと頷く。


準備した時と同じように手際良くティーセットやらを片付けるオルロフ

同時にジーザも早くダンジョンを調べたいとその他の荷物を洞穴内に移動していた。


洞穴は、入口部分がトロルの大暴れで開闊しており、奥まである程度明るくなっている。

また、ドン突きについては、行き止まりとなっていた壁が崩れて洞穴が更に続いていた。


一行は、トロルが壊すまで行き止まりだった辺りにナディアの精神統一をする祭壇(結界を張った時同様、敷いた麻布の上に水晶球を据えただけであるが)を設けると

封印の準備をしなければいけないナディア以外の人間で、この入口を封じていたと思われる石板を瓦礫の中から探し始める。


ジーザが自慢の腕力を発揮したおかげで間もなくして見つけ出される石板


「思ったより破損が激しくないな。右上の角が大きく割れて欠損しているのは、ジーザから聞いてた亀裂が原因だろう……そもそも何故、亀裂が入ったのかは謎だが……。」


オルロフは、石板を見やすい位置に置くと、外観をまず分析する。

次いで、描かれている幾何学模様に視線を移す。


「古文字に近いものもあるが、更に昔のもののようだ……専門的に研究してる奴らでもないと解読は難しいか……。だが、未だ微かに残る光属性の魔力からすると封印の要となっていたのは間違いなさそうだな。」


オルロフは、徐に石板に手を当てて、魔力を直接感じ取ると、そう結論付ける。

そして、念のためと羊皮紙に石板の模様を写し取るのだった。


石板を調べるオルロフを余所に、洞穴の更に奥、ダンジョンを興味深げに眺めるジーザ


手前の洞穴と違って奥は、綺麗に表面を削り取られた横広な楕円形の通路が続いている。

天井までの高さは、トロルが何とか屈まずに歩いていける程度と、普通の人間のサイズからしてみれば、かなりあった。


明かりの届く範囲で見える限りは下り坂の1本道


途中途中に、身体の一部を大きく欠損したトロルらしき死体が転がっていた。


「……あの光魔法でやられたやつか。」


逃げ場のない通路で、まともにくらって、そのままお陀仏状態だったようである。

不意の一撃に、ジーザ達に気付く暇もなくその場にのたうち回って死んだのであろう、壁には、トロルの暴れた爪痕が刻まれていた。


「しかし、こいつは、何とも……。」


あの貫通力であれば、後ろにいた奴も一溜まりもない事は想像できたが、実際に複数のトロルが屍を晒している光景を見てしまうと、薄ら寒さを感じるジーザであった。


オルロフは、その様子に気付くと、ジーザに歩み寄る。


「ナディア様は、特別な御方だからな。くれぐれも粗相のないように……怒らせると怖いぞ?」


肩を叩きながら、ニヤリと笑うオルロフ


「ふんっ、トロル1匹止めを刺したくらいじゃ、天狗にはなれねぇ~って事だわな。」


ジーザは、大して気落ちした表情は浮かべなかったが、心の奥で、ナディアも一筋縄ではいかない人間だと強く認識するのだった。


「ナディア様のソーラレイの跡には、光属性の魔力が数日間滞留する。本格的に封印するまでの間、ダンジョン側からの魔物の進出を阻む簡易結界として活用できるんだ。」


「ほぅ~、そこまで計算して洞穴に入るように魔法を放ったのか……。」


「そうだ。魔法にもまた色々と特性がある。それを如何に効率的に活用するか、それがこの世界の戦い方だ。」


オルロフの言葉に何か感じるものがあったのかジーザは、目を見開く。

しばしの間の後、顎髭を撫でながら


「なるほどな…………まあ、その戦い方を早速学べて、俺は運が良かったわけだ?」


こうなってはと開き直って前向きに捉えるジーザ

オルロフもそのへこたれない態度と切り替えの早さに若干苦笑していた。


「さて、無駄話はこのくらいにして……ダンジョンの探索に入るぞ。

中堅冒険者が手こずるトロルクラスがのっけからいるダンジョンだ。流石に大規模トラップは、ないと思うが、気を引き締めてかからないと、すぐあの世逝きになるぞ。」


「俺の方は、問題ないが……いいのか?特別な御方とやらを独りにして。」


「ああ、ナディア様の事か。中も外も結界を張っているからな。

ダンジョンの探索と言ってもそう深くまで行くつもりはない。

あくまで、普通のダンジョンと比べてどれだけ奇異があるか推し測るのが目的だ……ナディア様の準備が整うまでの半日の間にな。」


「……その普通のダンジョンを俺は知らんぞ?」


「ジーザにそこの部分は期待してないさ。魔物が近付いて来た時の警戒兼戦闘要員って所だ。」


それで納得したジーザが手斧を肩に担ぎ直すのを確認すると、オルロフは、ダンジョンの奥へと歩を進める。


勿体ないという理由で、胸部の残ったトロルの死体から魔石やらを取り出しつつであったが……。


「ちゃっかりしてやがる……。」


「これでも教会内の1つの派閥のまとめ役なんでね、そこそこ入り用なのさ。」


悪びれないオルロフに、肩をすくめながらも、早く奥に行きたいジーザは、甲斐甲斐しく回収を手伝うのであった……。



主人公ステータス


名前:ジーザ

種族:人

性別:オス

年齢:23歳

身長:231cm

体重:220kg

出身地:カントー

所属:なし

カルマ:➖98 極悪

モラル:➖99 非道


Lv:20

状態:正常

体力:43

魔力:7 

筋力:48

反応:15

耐久:30

持久:30

※( )内は、前話からの変化値


職業ジョブ:戦士Ⅰ

能力アビリティ:筋力強化、反応強化、肉体強化

技能スキル:拳闘術Ⅰ、斧術Ⅱ、投擲術Ⅱ、索敵術Ⅱ、隠密術Ⅰ、馬術Ⅰ

加護ギフト:なし

装備:アイアンアックス、レジン(樹脂)の肩当て、鋲打ち腕当て、レジンの脛当て、隷属の腕輪

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ