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異世界転生の失敗作

作者: 梔子
掲載日:2014/06/04

 失敗した。

 あぁ、失敗した失敗した失敗した失敗したぜ、この野郎ぅ!

 何が失敗したかというと、もう最初から全部失敗したって感じ。せっかくだから、この俺の失敗作な人生を最初から話そうと思う。せめて、それで笑ってくれたら幸いだ。

 そうだな……最初の最初は、うん。まず、俺の前世について話そうか。

 俺の前世は今、君が住んでいる世界……あぁ、いわゆる『現代日本』という世界の住人だ。ほぼ、君と同じ世界観の設定だ。間違いない。そこで、俺は一般的な高校生として日々を過ごしていたわけだ。

 言っておくけど、本当にくそ平凡で一般的だったからな? 幼馴染は居ないし、美少女なんてクラスに居ないし、ほんと、周りも俺も平凡だった。特に頭が良かったわけでもないけど、そんなに成績も悪くない。運動は嫌いだったが、中の下ぐらいの運動能力は持っていた。特に夢とか、そういうものも無くて、日々をだらだら過ごして、一週間に一度の週刊雑誌や、ネット小説の更新を生きているような人間だった。

 まぁ、強いて言うなら、死に際が普通じゃなかったな。こういう物の定番はトラックとか、通り魔にやられてグサリ! らしいんだが、俺はその、あれだ……隕石に巻き込まれて死んだ。死後、担当の奴に聞いてからわかったことなんだが、俺が登校している時に、空から隕石が降ってきて、それがごつんと、俺の頭に当たって…………ぐしゃっと、俺の頭が割れて人生終了。という、ある意味ギャグ漫画染みた人生の幕引きだった。

 さて、ここからが肝心だ。

 俺は死後、気が付いたら謎の場所に居た。市役所の窓口みたいな場所だった。俺はそこで、担当者と自称していたオッサンと出会う。バーコードハゲで、目つきの怖いオッサンだった。


「君の死に様が面白かったと評判だったので、君の次の人生に特典を与えられるそうだ。選びたまえ」


 何という理由だろう、と唖然したよ。

 こういう物の定番は『神様の手違い』とかさ、『良い行いをしていたから』とか、あるいは、『抽選』ってネタもあるのに。よりにもよって、死に様の面白さで決められるんだぜ?

 それについて、担当者のオッサンに尋ねてみたら、こうだとさ。


「馬鹿が。この世界に神なんて存在しない。あるのはシステムだけだ」


 だとさ。

 ちなみに、そのシステムについてはいくら尋ねても、「お前が知ったところで意味は無い」と言われるばかり。なので、仕方なくその特典とやらを選ぶことにしたんだよ。


「特典は三つの内から選べる。転生する世界を選べること。己の望む能力を得ること。次の人生では天寿を全うできること、だ。さぁ、選べ」


 迷わず、『己の望む能力を得ること』を選んだね。

 だってさ、俺が好き勝手能力を考えて、それを実装することができるだぜ? その能力次第じゃさ、他の二つの特典よりも、圧倒的にアドバンテージを得られるわけじゃないか。ちょっと欲張った奴なら、俺と同じ選択をするはずだ。するよな?

 まぁ、あれだ。そこからは恥ずかしくなるから詳しく言わないが。まるで、中学二年生の黒歴史に戻ったみたいに、あれこれ考えたさ。

 でもって、最終的に落ち着いた能力が【簒奪者】って能力。強敵を殺せば殺すほど、そいつが所有するスキルを簒奪することができる能力だ。うん、転生モノでは定番だよな。色々考えたけど、結局、成長性もあるし、こういう能力が一番だと思ってたんだ。

 …………思ってたんだよなぁ。


「では、君の輪廻を回そう。ただし、少年、これだけは覚えておけ。ヤケになって、カルマを集めるような行為をした場合は……今回の逆パターンもあり得ると」


 要するに、悪いことはするなってさ。

 悪いことしたら、テメェ、散々マイナス要素を詰めこんで転生させるからな、というでっかい釘を刺されて、俺は転生しましたとさ。

 ………………めっさ、平和な異世界にな!

 あぁ、確かに異世界だった。月は二つあるし、獣人とか、竜人とかもいるし、魔法も存在しているよな? でもさ、平和過ぎじゃね? 魔王も居ないわ、国同士で目立った戦争とかもしてないわ……少なくとも、俺が生まれた国は超平和。現代日本ぐらい平和! 法律もしっかり整えられているし、福祉関係も充実している。

 うん、そうなんだ。つまりあれだ。こんなクソ平和な世界だとね? 俺の能力の【簒奪者】って全然役に立たないわけ。え? 適当に有能そうな奴を殺して、その才能を奪えばいいって? 馬鹿野郎。んなことしたら、捕まるだろうが。いや、捕まる前に人としてどうかと思うぞ、そういう思考。担当者のオッサンも、悪いことすんなって言ってたじゃねーか。

 しかも、俺が転生した世界は俺の居た世界よりも文明水準高いし。

 なんだよ、転送装置とかって。魔法世界なのに、ちょっとSF入っている高性能機械とかたくさんあるじゃねーか。エルフとドワーフ種族のエンジニアが共同開発とか、もう、どの口で異世界チートかませばいいって話だよ。

 ん? まだ希望は残っているって? 転生した後のステータスが、前世よりも向上しているんじゃないかって? 魔法とか、前世に無かった要素の才能があるんじゃないかって?

 馬鹿野郎。あるわけねーだろ。お前、あれだぜ? 俺はとことん平凡だった男だぜ? 異世界に転生したとしても、魔法とかの才能なんてあるわけねーだよ。平均的な水準通りだったわ。

 ん? 美少女との出会いがあったんじゃなかったって? 幼馴染がいたりとかしなかったって? そーだなぁ。まぁ、幼馴染はいるよ? うん。

 確かに容姿は美少女だな。おまけに猫耳だ。尻尾もある。毎日、寝坊しそうな俺を起こしに来てくれるし。バレンタインデーみたいな、恋人専用の記念日には、はにかんだ笑顔で俺のプレゼントをくれるな。

 ――ただし、男だ。

 お? 何? いいじゃん、男の娘はご褒美じゃん? だって? お前…………リアルでも同じこと言えんの? 二次元じゃないよ? 三次元の話だよ? 俺、TSとかしてなくて、転生先でも男だよ? 性癖もノーマルだよ? わかる?

 ……はぁ、結局こんなわけ。転生先で、いろいろ活躍したり、世界を救ったりなんか、有り得ないわけ? 他はどうかしらねーけど、俺はそう。

 君もさ。転生することがあったら、落ち着いてよく考えて転生するといいよ。まぁ、特典付で転生する機会なんてあんまりないと思うけど。

 でも、最後に一つだけ。

 色々不満に思うことはあったけど、やっぱり平和な世界でよかったと思う。人を殺したり、殺されたりってのは、うん…………やっぱり、二次元だけで十分だからさ。



●●●



「それで、例の転生体の方はうまくいきましたかな?」

「あぁ、あの少年の事だな。問題ない。第二十二世界に存在するターゲットの幼馴染として、無事に生まれた。今は高等学生だ。なんだかんだで人間関係はうまくいっているらしい」

「それはよかった。いや、我々もあの件については実に肝を冷やしましたからな。平行世界のみならず、我々が存在する上位世界までも破壊する【絶対的拒絶者】が生まれてしまいそうになるとは」

「この業界ではたまにあることだ。その度に、勇者なり超人なりを、転生する魂に特異能力を植え付けて処理させてきたが、今回は規格外だったからな。どんな強力な能力を与えようとも、魂としての質量が違い過ぎだ」

「要するに量の問題ですからな。どれだけ能力を細工しようが、圧倒的なまでの熱量には意味を成さないという……いや、本当に彼がいて助かりました」

「偶然死んだ時期が、あの【絶対的拒絶者】と同じであり、なおかつ、恐ろしいまでに魂の相性が良いとは。これが奇跡という物なんだろう」

「ということは、彼は数多の世界の救世主ですかな」

「ああ…………もっとも、彼自身は『平凡な人間だ』とでも否定するかもしれんがな」

                                   


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