優しいおばあちゃんと死体?
ゾンビ老婆が財布を拾ってから数日、昼間から少女はなんとなく居間でぼんやりとしていた。ゾンビ老婆はその横で死体のように横になっている。そのまましばらくするとゾンビ老婆がいきなりうなり声を上げだした。
「どうしたのおばあちゃん?」
少女がたずねると、ゾンビ老婆はゆっくりと立ち上がった。
「yyyyyyyyooooooooooooooooooruu」
そしてゾンビ老婆が歩き出し、玄関まで到達した。少女もあとからそれについていく。
「どうしたのおばあちゃん? お外に出たいの?」
「uuuuuuuuuuuuu」
「そうなの、じゃあお出かけしましょう」
少女は上着を羽織ってから、ドアを開けてゾンビ老婆と一緒に外に出た。二人がしばらく歩くと、その前に唐突に一枚の紙が舞い落ちてきた。
少女が地面に落ちたそれを拾うと、それは数日前に拾った財布に入っていた紙と同じものだった。
「これは?」
少女が首をかしげると同時に、その紙から黒い霧が立ち昇り、二人の目の前でちいさなつむじ風を作った。数秒後、つむじ風は消え、そこには先日の男の姿があった。
だが、その表情には生気はなくゾンビ老婆がつけた傷も見当たらない。
「この人」
少女はつぶやくと同時にその生気のない男が飛びかかってきた。だが、ゾンビ老婆がすぐに男を止める。
「mmyooooooooooooo!」
男とゾンビ老婆の力は拮抗しているように見えたが、男のほうが徐々にゾンビ老婆を押し込み始めた。
「Ggggggggggggggggggg!」
しかし、ゾンビ老婆は雄叫びを上げて男の体を一気に押し返すと、そのまま勢いよくのしかかっていった。
「pyiooooo!」
その勢いのままゾンビ老婆は男の首筋に食いつき、男の首の肉を大きく抉った。さらにゾンビ老婆は手を振り下ろしてその首をつかむと、握力で残りの骨と肉を握りつぶした。
頭と胴体が離れた男の体は痙攣し、そのまま動かなくなった。少女はすぐにその側に駆け寄る。
「大丈夫? おばあちゃん」
「llluuuuuuuuuuuuyyyyyy」
ゾンビ老婆は小さくうめきながら男の上からどいた。
「やはりこの程度では相手にならんか。だが、実験は成功だ」
その光景を物陰から眺めている男が静かにつぶやき、その場を後にした。