優しいおばあちゃんのおつかい
「おばあちゃん、いってらっしゃい」
「bbryuuyuoooooooo」
ゾンビ老婆はよだれを垂らしながら、右手に持った買物袋を振り回して家から出て行った。
家から出てしばらく歩いたゾンビ老婆は、突然おもむろに地面にダイビングするとその場でじたばた転がり始めた。
それに気がついた感じのいい青年が近づいてくる。
「あの、大丈夫ですか?」
青年は手を差し出したが、ゾンビ老婆はいきなりそれに飛びついて手首を食いちぎった。
「ポビョヤアアアアアアアアア!」
青年は手首から血を噴出させながらその場に転がった。ゾンビ老婆は食いちぎった手首を吐き捨てると、なにもなかったかのようにその場から立ち去った。
そしてゾンビ老婆はスーパーの前に到着していた。
「iiiryuuuuuuuuuuu!」
ゾンビ老婆は大きなうめき声を上げると自動ドアに突進する。自動ドアが開く前にゾンビ老婆の体がそれに激突し、派手な音を立ててガラスが砕け散った。
「ggguuuuuuuuuuuryui!」
ゾンビ老婆は割れたガラスの中で体を切りながらも勢いよく立ち上がった。それから買物かごを口に加えて店内に突進していく。
しかし、店内の客達はそれに騒ぐことなく、普通に買物を続けている。ゾンビ老婆は買物カゴを口でくわえると生鮮食料品売り場に突進した。
その先にはタイムセールで人だかりができている鮮魚売り場。ゾンビ老婆はそこに突っ込み、何人かを吹っ飛ばした。
「jijijijijijijiji」
ゾンビ老婆は変な音を出しながら魚を鷲づかみにして次々に買物カゴに放り込む。
「させるか!」
そこに一人の中年の女性が飛び込み、ゾンビ老婆が狙った魚を横からさらった。
「相変わらず元気ですね」
その女性は振り返ってにやりと笑った。
「gggggggggggggggggggggggggg!」
ゾンビ老婆は体を緊張させて身構える。自然とその二人の周囲は空間ができて一対一の形になった。
「KYOYOOOOOOOOOOOO!」
ゾンビ老婆が飛び、女性もそれに呼応して床を蹴った。
「おりゃあああああああああああ!」
二人が交錯すると、魚も貝も勢いよく宙を舞った。そして互いの買物カゴにはほぼ同量の魚介類。
「さすがです」
「quooooooo」
二人は睨みあってから、互いを認めるように同時に一歩後ろに下がった。
「決着は次回に」
「yeeeeeeeeehaaaaa」
ゾンビ老婆と中年の女性は互いに背中を向けてその場を立ち去った。