優しいおばあちゃんと泥棒
その夜、ゾンビ老婆は徘徊することもなく家でおとなしくしていた。少女の家の者は全員寝静まっていて、わずかな音しかしない。
だが、小さな高い音が響き、窓ガラスがくりぬかれた。そして腕が窓ガラスの鍵を外し、音もなく一人の人影が居間に入り込んできた。
その人影は慎重に進んでいって、居間にある小さな棚を漁り始める。だが、そのマスクで表情を隠した顔は浮かない様子だった。
「ちっ、しけてやがんな」
どうやら、現金や金目の宝石類などは見つからないようで、悪態をついている。しかし、そこで足音が響き、泥棒は動きを止めた。
「gyuiuyoiopoiuoiuoi」
妙なうめき声が夜の静かな家に響く。泥棒はその声に金縛りにあったかのように動きを止めた。ピタピタと夜の静けさの中に不気味な足音が響き、泥棒のいる部屋のドアに人影が映る。
「・・・」
泥棒は息を殺してじっとしている。そうしていると、人影は再び足音を残して去っていった。泥棒はフッと息を吐き出して再び部屋の物色を始めた。
そして壁際に近づいた時、いきなり低い音が響いた。
「Gyuiyuyuiyiuoyuioyoi!」
壁が砕け、そこから伸びてきた腕が泥棒の両肩をがっしりと掴んだ。
「うおっ! な、なんだ!」
泥棒は思わず叫び声を上げる。だが、肩をつかんだ腕の力は緩むことなく、泥棒の両肩をギリギリと締め上げる。
「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアア!」
ミシッっという音と同時に泥棒は絶叫をした。そして、さらに壁が砕ける音がし、ゾンビ老婆の顔が泥棒の首筋に食いついた。
「ぎゃわわワイウイヤウイオユイアイオアヨア!」
もはや息を潜めることなど忘れ、泥棒は絶叫している。ゾンビ老婆はそのまま泥棒の首を食い破った。しかし、頚動脈を破るほどではなく、泥棒はのたうちまわるだけでピンピンしている。
「Pooooiuiooii!」
ゾンビ老婆は壁を突き破り、泥棒に覆いかぶさった。そのまま泥棒の腕を握ると、肘を反対に曲げてしまう。
「ぎょええええええええええええええええええ!」
そしてゾンビ老婆はその腕に噛みつこうとした。
「おばあちゃん、待って」
パジャマ姿の少女が居間に駆け込んできてゾンビ老婆を制止した。ゾンビ老婆は口を引っ込めるが、泥棒の上からはどこうとしない。
「今すぐおまわりさんを呼ぶから、そのままでいてねおばあちゃん」
少女は受話器を取って警察を呼んだ。その間にも泥棒の食い破られた首からは血がだらだら流れて床を汚し続けている。
「wwweeeeeryuuu」
ゾンビ老婆はその流れた血をすすり始めた。そして徐々にその口は泥棒の首に近づいていく。
「ggggaaaaaabyuuuuuu!」
ゾンビ老婆は泥棒の首に手をかけた。
「ヒヒヒヒィィィイィィィィィィ! ビョギョビョギョボギョボギョ!」
そのまま泥棒の頭を反対に回した。電話を終えた少女は戻ってきて大げさにため息をついてみせる。
「もう、駄目じゃない。しょうがないから、少しなら食べてもいいよ」
「hyuiiiiiiiiiiiiii!」
ゾンビ老婆は歓喜の雄叫びを上げて泥棒の死体にむしゃぶりついた。