優しいおばあちゃんと商店街
「bybybybybybybooooo」
ゾンビ老婆は商店街の様々な店を見て上機嫌らしかった。先に歩いている少女はある店の前で足を止める。
「おばあちゃん、私お洋服が欲しいな」
「miyouooooooo」
ゾンビ老婆は穏やかにうめいて、少女に引っ張られるままに店に入った。
「いらっしゃいませ」
気の良さそうな中年の女性の店員が二人を迎える。
「ogyuoouioooo」
ゾンビ老婆は店内の服を引っ張ったり齧ったりしている。だが、店員は笑顔でそれを見ているだけだ。
「あらあら、相変わらずお元気ですねえ」
「kyokyokyokyoikuoi」
店員の言葉にゾンビ老婆は喜んでいるらしい。少女はそんな二人を差し置いて並んでいる服を見ている。そして少女は棚の上の帽子を手に取った。
「これ素敵」
少女は帽子を頭に乗せて見せる。
「nigyuuuuuuuuu」
ゾンビ老婆は喜んでいるらしい。
「よくお似合いですよ、お嬢さん」
店員も少女を褒める。するとゾンビ老婆は自分の口に手を突っ込んで唾液まみれの札を取り出した。
店員は営業スマイルのままそれを受け取り、レジに入れるとお釣りを取り出した。それは少女が受け取り、自分の財布に入れてしまう。
「お買い上げありがとうございました」
店員に見送られ、少女とゾンビ老婆は店から出て行った。それから二人は引き続き商店街を歩いて、魚屋の前まで来た。
「Gyuuuuuuuuuu!」
ゾンビ老婆はいきなり店頭のカツオに食いついた。
「おお! 相変わらず元気ですねえ!」
魚屋の親父はゾンビ老婆をとがめるどころか、機嫌が良さそうだった。少女はさっき買った帽子を取ってから、行儀よくお辞儀をする。
「こんにちはお魚屋さん」
「はい、こんにちは。きょうはまたかわいい帽子をしてるねお嬢ちゃん」
「うん。さっきおばあちゃんに買ってもらったの」
笑顔で言う少女に魚屋の親父もつられて笑顔になる。
「そいつはよかったなあ。お嬢ちゃんがかわいくなって、きっとお婆さんも喜んでるぞ」
「Boygyogyogygougjojojo」
ゾンビ老婆はカツオから顔を上げて満足げなうめき声を出した。だが、すぐにまたカツオを貪ることに没頭する。
「はっはっはっはっは! 相変わらず健啖家だなあ!」
豪快に笑いながら、魚屋の親父は手を叩いた。
「ところで買物にきたんだろう? 魚のことならうちにおまかせだ!」
「ええと、これお願いします」
少女はメモの書かれた紙を差し出した。魚屋の親父はそれを受け取って一瞥するとすぐにうなずいてみせる。
「よしきた! ちょっと待っててくれ」
魚屋の親父は魚を何種類か手にとって店の奥に入ると、それをあっという間にさばいて、丁寧に包んだ。
「はいよお待ち!」
袋に入ったそれを少女は両手で受け取る。
「ありがとうございます。はい、お金」
「はいまいどあり!」
差し出された札を受け取った魚屋はすぐにお釣りを少女に返した。
「じゃあおばあちゃん、いこ」
少女が声をかけると、ゾンビ老婆は魚の肉片をつけた顔を上げた。
「kyuuyuroruoruo」
うめいておとなしく立ち上がると、ゾンビ老婆はおとなしく少女の後ろについた。
「さようなら、魚屋さん」
少女は手を振ってそこから立ち去った。それを見送った魚屋の親父はうなずきながらつぶやく。
「いやー、それにしてもあの婆さんはいつも元気だなあ」