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優しいおばあちゃんは英雄

 町を騒がせた事件から二週間後、少女と老婆はある場所に向かっていた。しかし、事件からしばらくの間はマスコミや野次馬が沢山押しかけてきていて大変な騒ぎだったのだ。

 例えばある日。

「先日の騒ぎはこちらのおばあさんが解決したという噂なのですが!?」

「いったいどういうことなのか、説明をしてもらえますか!?」

 カメラやマイクが公園でゾンビ老婆に向けられた。

「hhhhyuuuuuuuuu!」

 だがゾンビ老婆は手近なマイクに食いついたように見えたが、その大口はそれを持つ手ごと食いちぎった。

「ぴゃあああああああああああああああああ!」

 インタビュアーは先がなくなった手首から血を噴出しながらその場に倒れた。だが、それでも報道陣はひるまない。

 今度はハンディカメラとマイクを持ったキャスターがゾンビ老婆との距離を詰めた。

「あなたが解決したんですよね、ぜひお話を!」

「eeeeewwwwwwwwwww!」

 ゾンビ老婆が勢いよく腕を振るうとそのキャスターの頭がゴルフボールのようにポーンと飛んでいった。

 そこからはゾンビ老婆の独壇場で、頭やら腕やら足やら内臓やらが飛び交い、公園は多数の血の噴水やらつぶれたトマトのようなものが散乱する、どぎつい空間になっていった。

 そんなことが数日続くと、さすがに段々ゾンビ老婆の身の回りは静かになっていった。そうして部外者が来なくなった頃を見計らうように、今日、町からゾンビ老婆に感謝状が贈呈されるということが行われようとしているのだった。

「おばあちゃん、今日は久しぶりにお散歩できるね」

「mmmmnnnnnnnnnnnnn」

「でも、今日はこれからおばあちゃん表彰されるのよ。テレビの人たちも沢山来ていておばあちゃんは有名になったけど、こういうほうがうれしいな」

「ggggggryyyyyyyyyyyyyy」

 ゾンビ老婆も見ようによってはうれしそうに見えた。

 二人が役所の前に到着すると、そこにはすでに町の人々が集まっていて、その前に壇が設置されていた。

 少女とゾンビ老婆はその脇に案内され、壇上にはお偉いさんやら名士やらが出てきて挨拶を始めた。ゾンビ老婆はその間おとなしく座っている。

 そして、いよいよゾンビ老婆が壇上に呼ばれた。

「我らが町を救っていただいた英雄です!」

 司会者が力強く宣言すると、その場に集まった人々は盛大な拍手をした。ゾンビ老婆はのそのそと町長の前に歩いていく。

「では」

 町長がそう言ってから賞状を読み上げようとした瞬間。

「uuuuuuuugyuuuuuuuuuuuuuuuuuuttttt!」

 ゾンビ老婆はその賞状を引き裂き、町長につかみかかった。そのまま町長を頭上に持ち上げると、自分の頭にその体をものすごい勢いで叩きつけた。

「ジュリュアアアアアウウウウウウウウイイイイイオオオオオオオオ」

 町長はおかしな断末魔を上げながら、その体を中心からまっぷたつにぶち折られていた。

「BBBBBBRRRRRRYYYYYYYYYUUUUUUUUU!」

 ゾンビ老婆はその二つの肉塊を両手に持って雄叫びを上げた。

 数秒の静寂の後、その場には町全体を揺るがすような大歓声が響いていた。

「UURRRRRYYYYYYYYYYYYYY!」

 ゾンビ老婆の雄叫びと群集の歓声はいつまでもやむ気配がなかった。

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