3-2
「全く何よあいつ! 私はお金のためにやってるんじゃないってのに、私にはやらなくちゃならないことがあるのに……」
口の中に入りきらない愚痴が次々とこぼれ落ちる。ハルトは魔物調査のことについて全く理解していない。それともう一つこんな片田舎の魔物達相手に必死とぼやいているのが納得いかない。
小型の虫や鳥、2足歩行のけだものとは違う、もっと大きなそれこそ怪物クラスと呼べるものがうじゃうじゃいる場所だっているんだから。
そこへ自分は向かわなければならない。
必ず見つけ出すのだから……。
となるとまずは依頼か。
私はハルトの処理しきれなかった残り一つの依頼について考える。
経費については自腹で返却すればあいつが逃げたことなんか問題にならない。
けどアスナさんが私たちのために請け負ってくれた依頼をすっぽかすのは今後の活動に支障をきたす可能性がある。それが例え、毎日依頼がある元素研究と魔物産業の依頼であったとしても。
……自分でやるしかないかな……
魔物討伐部で戦人か元素使いの人を捕まえて一緒に遂行することも考えた。けどサンガの魔物討伐部のオーナーには面が割れている上に先ほどあんなことを言われたのだ。
今の精神状態でまた変なことを吹きかけられたら本気でぶん殴ってしまうかもしれない。それこそ大問題に発展しかねない。
私は右肩にかけてあるバックを見下ろす。
対角線上、もっとも距離の取れるよう配置されながらもバックの両サイドには少しだけでっぱりができてしまっている。
他人が一目見ただけではわからないが私にはくっきり見える。長年愛用してきたバックだ。それに……中に入っているものは大切なものだから。
けれど本当にいいのだろうか? 一度これを手放し魔物調査として目的を達すると決めたのにまたこちらに戻ることはどうなのだろうか。
……考えている暇はない。あいつのせいで遅れた分を取り戻さなければならない。
深く考え込んでしまう前に自分の足を動かすことにした。
先ほどから悶々と心労ばかり浮かび上がってくるが歩みを止めることはせず、左右に並ぶ商店街(おもに飲食店)を抜け町の外へと出ていく。
途中で重厚な半鎧を身に着けた人とすれ違う。たぶん警備の人だろうか? 半鎧なのは単に暑くなってきたからだろう。6月も半ばに入ったし。
あの人たちは燃え盛るのを止めないあの日輪を拝むことはできているのだろうか……
遠い空かなた方角にすれば北西に向かい無事を祈るしか私にはできなかった。
◇
辺り一面に緑の原っぱが広がり、新芽の自然たっぷりな香りが私の気分を少しばかし穏やかにする。
今、私の心境にあるのは鬱憤よりも躊躇いの方が割高である。
何も考えないよう思って歩いていたが実際は本当に後戻りしていいのだろうかという懸念で頭がいっぱいであった。目的達成に対し一種の楔と化していたこれに再度戻ることが3年の努力を無駄にするのではないのかと思うとどうしてもたじろいでしまう。
けどここまで来てしまったのだからここは……。
とその時前方に一つの影がうごめくのを見つけた。
一般の人だと何かが動いているとしか見えないが、スコープの倍率を高めればここからでもその容姿はくっきりとわかる。
身長はコボルトと似たり寄ったり、顔立ちは犬よりもネズミ寄りである。特徴的なのは赤い頭巾と右手に持った小さい体には不釣り合いのまさかりで今回の目的はこのまさかりにある。
あれはファミリアと呼ばれるコボルトと同じ小型亜人種だ。そんな似たり寄ったりの二体の決定的な違いは武器にある。
コボルトは自然に落ちている凶器に適した棍棒(ない時には木切れみたいなものを持っていることも確認済み)であるが、ファミリアに至っては鉄の刃がある時点で明らかに自然の物ではない。
そこで疑問に上がるのがこのまさかりは一体どこで入手しているのか? どんな性質をしているのか? など魔物調査内でも小さな議論が繰り広げられている。もし使えるのであればよい鉄が量産できるかもしれない。油分を含んだ魔物から油分を取るようにファミリアの武器から鉄を取る考えだ。
さてファミリアを発見してしまった以上もう後には引けない。
さっさと依頼を終わらせるために私はバックを地面に置きその中からバックぎりぎりの長さで収まっていた細長い黒光りの物体を出す。
それは剣と同じように鞘に入っているが剣としてはやたら短く60センチ近くしかない。紐で交差されながら結ばれた柄の部分を持ち、鞘を抜くと中には片方が鋭利に研ぎ澄まされた白刃が現れる。
これは脇差と呼ばれる。あの人が使っていた刀と呼ばれる武器の一つだ……。
刃渡りがわずか40センチしかなくかなりの接近戦でないといけないが私にはこの長さで十分であった――この刀で戦う訓練をしてきたから。
接近戦になることは事前にわかっているのでスコープは外してバックの中に放り込む。元々視力はいいので命がけの戦いにこれは不要である。
私はファミリアとの距離を少しずつ縮めていく。こういうのは一瞬で勝負が決まる。ぶーたらこーたら言って戦いを長引かせるあいつとは違う。
赤い頭巾の中に隠れている真紅の瞳から視線を感じる。どうやら相手もこちらに気付いたようだ。そして好都合なことに相手から襲い掛かってきてくれた。私は受けからの攻撃が得意だから願ってもいないことだ。
短い脚をフル回転させファミリアはこちらに向かってくる。そして思いっきり手を挙げまさかりを頭上に持ち上げる。
ファミリア、武器はまさかり、刃渡り約30センチメートル、幅約10センチメートル、腕の長さの関係上横振りは難しい、縦振りでは振り下ろすまでのロスがあり下ろした後も地面に食い込みロスが生まれる。
これによって導きだされる戦術は――。
相手が振り下ろす前に横へと摺り足移動する。するとまさかりの刃は先ほどまで私のいた場所に鍬をたてるような音を鳴らし食い込む。動けなくなったその瞬間を狙い一気に間合いを詰め魔物の腹部を切り裂く。
刃の長さは短くても切れ味は抜群なのが刀である。ファミリアは悶える時間も与えられずにその場に倒れ込んだ。
「ふう。私もまだ現役ね」
魔物調査での経験もあってか相手の分析で更にいい状況へと追い込めた。おかげで何の苦労もせず1匹目を倒すことができた。
これを後2匹、意外と楽に終わりそうね。
笑みを浮かべながら、ファミリアの遺物であるまさかりに手をかける。
「ふぬぬぬぬ、これ結構重いな……3個同時に持ち歩くのは厳しいかも」
通常の剣よりも更に重いこれをあんな小さな体が持ち上げているとはね。人間と魔物の体の構造の違いかな。
となると2個と1個で往復かもしくは1個ずつで3往復かな、めんどくさいな。こういう時あいつがいればな……
「って何を考えているのよ私は! これくらいのめんどう今までのめんどうにくらべればよっぽど楽よ!」
しっかりしろと言わんばかりに自分に大声で言い聞かせる。まあこんな草原じゃ誰も聞いてないでしょうね。
けどその期待は裏切られる。足音に気付き振り向いた瞬間には戦わざる終えない状況に陥っていた。声を察知した赤いトカゲが後ろ足2足で走りながらこちらに向かってきていた。余った前足2本には狩りで使われる2本の立派な爪が生えている。
クロードリザード、爪による攻撃が主体、ここらでは個体数が少ないために特に問題視されず、ただし集団の場合危険、既に攻撃の態勢――
このままでは避けられないわね。なら剣で攻撃はじいてから反撃に移るのが一番!
私は刀を新たに現れた魔物の爪攻撃に対抗できるよう眼前で横向きに構える。
魔物の凶刃と刀の白刃が交差し、盛大な金属を鳴らした。
◇ ◆
「はあ、何だよあいついきなり」
食堂から数メートル離れた商店街をステインのある方向へと歩きながらハルトは愚痴る。
腹空かせて帰ってくるだろうと思っていたがその予想とは裏腹にレリュートは帰ってこなかった。
テーブルの端から端まで料理で埋め尽くされた夢の庭園を目の前にし、鼻を何度もくすぐるいくつもの匂いの妖精を前にしても、なぜか味だけがしっくりこなかった。
味覚だけがマヒしたかのようだった。いや、実は全感覚がマヒしていたのかもしれない。
視覚と嗅覚の場合あいつと対立する前に味わった記憶が残っている。
折角の料理が台無しになった上にあいつが残していったお金はぎりぎりだった。
ステインにいた頃利用してた店は内装がぼろぼろで、椅子に座れば片足だけが宙に浮いて少し重心をずらすだけでがたがた呻き声をあげていた。
それでも客が目立っていたのは安さからだろう。俺はこの店に入って実感した。さっきの食堂とステインの食堂で共通するメニューにからあげがあったが、良、質ともに先ほどの店の方が上だが、値段は圧倒的にステインの店だ。
なんせ3倍も違うんだぞ! ありえないよな? ステインの店だったからこそ俺は生きて行けたんだよな。借金はあるけどさ。
さて食事に関する感想、批評はここまでにして帰る手段を探さねば……しかも2つだ。
1つ目は親父に何と報告するかだ。数週間帰れなくなるとは言ったがまさか最短の1週間で帰ってくるとは思っていないだろう。そこをどう言い訳するべきかが最初の問題。
2つ目は資金面の問題。今手元には先ほどのぼったくり食堂の残金がわずかに残っている。これではステインまでとてもじゃないが帰れない。バス代はバスを動かす原材料がとてつもなく高いため、運賃もかなり高い。
歩いて帰ることもできるが丸1日は費やすだろう。寝床は野宿でいいとして、食費が問題だ。朝は我慢できるとして夕飯無しなど俺には無理!
かといってまたあいつに頼るのもなー……今かんかんに怒っているだろうし。
右ほおに左手を添える。頬の腫れは引いてきているが未だに痛みはある。つんざく痛みにあわてて左手を離す。
あいつ何でいきなりビンタ何かしてきたのだろうか……。
左ほおの痛みからわかるようにあいつはかなりの本気だった。
俺だって腹は立っている。何が魔物と戯れているだ。俺は必死に頑張っているのにあいつはそれをないがしろにしたのだ。実戦でもしてみろ、どんだけ辛いか身を持って知った方があいつのためだろう。
魔物調査とは本当にお気楽な存在だ。何が後ろ盾だ。
戦いもせずにただ化け物がどうだからこうしろだのただ面倒なことを命令するだけの存在に何の価値があるというんだ。考えながらじゃ余計戦いづらいというのに。
ぶつぶつと不満を風に流しながらしゃべっているといつの間にかサンガ魔物討伐部前へと来ていた。ここから後数百メートル歩けばバス停に着くが俺はバスに乗れることができない。だって金無いし。
――そうだ! 何か依頼があるかもしれない。ここはステインより少しは栄えている。ここでステインまで帰れるバス賃を稼ごう。けど先ほどの依頼が1万ベルと考えるとそれ相応の依頼をこなさないと家路につくことはできなそうだ。
と考えているのも時間の無駄だと思い魔物討伐部へいざ入ろうとする。
――そこで異変に気付く。中が妙に騒がしい。先ほどすぐUターンして食堂に向かった際には誰一人としていなかったはずなのに今はまるでタイムサービスのようなにぎやか――というか慌ただしい声が行きかっている。内容を確認しようとするものの、入ってくる言葉が統一しないため中に入って確認しようとした――。
「ぐはー」
次の瞬間外開きの扉が一気に開放され、その反動でハルトは吹っ飛ばされる。
地面に仰向けに倒れたハルトが目にしたのは数十人の何らかの武装をした集団が一斉に飛び出してくる姿だった。大半は戦人で何らかの武器を持っていたが武器を持っていないものもいる。元素使いだろうか? 元素爆破は元素以外に媒体を必要としないため何も持つ必要性がないらしいからたぶんそうだろう。
後ステインでは1度も見なかったが若い女性の戦人か元素使いもちらほら――うお! ここからの視点だとスカートの中が! ちょいと待ってー! もう少しここら辺うろついてー。
俺の願いはかなわず魔物討伐部から飛び出してきた人々はそれぞれ違う方角へと走り去っていった。後には立ち上がった砂埃だけが残された。
「ごっほごほ!」
今頃になってむせ返る俺、かなり鈍感だな。
惜しかったな……。いやそれより、一体何の騒ぎだろうか? かなり慌ただしかったことからただ事ではなさそうだが。
俺は背中と尻についた砂を手で払い、もぬけの殻となった魔物討伐部の中に入る。
唯一残っていたのがカウンターの奥にいる大男、ここのオーナーだ。
たてがみのような髪が髭とつながっている強面の顔と強靭な肉体がいかにも強者って言葉を醸し出している。うちの親父もそうだが魔物討伐部のオーナーって全員こんな感じなのだろうか?
「あのー……」
「客か……すまんが今は……ん? お前は確か昼間の尻敷かれ男か」
一体何のことやらと思ったが、昼頃いた客と言えば俺とレリュート位だからたぶん俺のことを意味するのだろう。
「なあさっきの集団一体何なんだ? 何か問題でもあったのか?」
俺は依頼を探しに来たのだが、今は目の前で起きた状況が気になったため、あえてこちらを先に尋ねることにした。
「うむ……実はそうなんだ。」
オーナーが、がたいに似合わぬ弱弱しい声で返事を返した。どうやら相当参ることが起きたらしい。そう考えていると今にも散りそうな声が更に言葉を連ねる。
「クロードリザードが群れをなし始めたんだ。今までそういうことはなかったはずなのに……」
クロードリザード――確かサンガへ一回だけ依頼に来た時に退治したやつだったきがする。
親父が返せ返せとうるさいため隣の魔物討伐部までわざわざ来た時のことだ。バスでは運べない品をステインまで運ぶ際に護衛として雇われたときに遭遇した。コボルトや虫たちとは違いかなり素早かったものの普通に退治した記憶が残っている。もちろん俺に秘められたあの力は使わずにだ。
「でも俺にとってクロードリザードってそこまで強い印象ないけど、なぜあれほどの人数を集める必要性があるんだ?」
多少苦労はしたものの、連続で2~3はいけるくらいの敵だった。なのになぜ?
「先ほども言ったが群れをなしたんだ。俺も正直信じがたかったのだが、群れをなしたクロードリザードの戦闘力は驚異的だったんだよ」
「群れってことは数10匹くらいか?」
俺の知る限り群れというとそのくらいの数はいそうだ。
「いや、多くてせいぜい4,5匹だ……だが……」
オーナーが言葉を渋る。少しの間を置き、遂に重い口を開いた。
「既にかなりの被害が出ている。平原をこちらに向かっていた商人の一帯が全滅だ、戦人も含めてな。更に西門、北門で警備にあたっていた戦人たちもやられた。それも警備についていた3人全員で当たってだ」
言葉を失う。あのトカゲにここまでの被害? 1匹でそれなりの手ごたえしかなかったあいつが甚大な被害を出すだと?
「正直信じられねーな……」
俺が出せる率直な答えを口にする。
「そうだ。俺も実際には信じられなかった。魔物調査からの警告はあったもののここいらのクロードリザードが群れをなすことも、尚且つこんなにも強いことなど夢にも思っていなかったさ」
「え? 魔物調査から警告?」
魔物調査と言えばレリュートが所属する魔物討伐部の一部。魔物をただ観察するだけの部隊だと思っていた魔物調査が警告を?
「あぁ、そうだ。数か月前にここいらに生息するクロードリザードの生態数が増えてきたから本能的に群れをなしだすだろうと警告されていたんだ。実際ハドルティオスに生息する奴らは既に群れをなしていて少数部隊で戦う場合魔物調査の同行もしくは指導が必要になっている」
同行⁉ 指導⁉ そうしないと厳しいのかよ。俺には到底信じられない。けど既に被害が出ているのなら事実なのだろう……
「俺は魔物調査が戦人を守る存在というのに多少違和感はあっただが、このような事態が起こった以上魔物調査のことを見直さねばならない。だが、既に被害を出してしまった以上ここの魔物討伐部の主としては失格だ……」
膝をテーブルにたて組んだ手の上に頭を預け落胆するオーナー。勇壮なたてがみはその力を失ったかのように地へと垂れ下がる。
その姿は戦いに完封負けした戦人のようだ。
そしてその姿はある意味俺を映しているかのように映えた。
今まであれを切れそこを切れとうるさく言っていたあいつ。俺はこれが魔物調査だと思っていた。
けどあれは俺の依頼の手助けであって魔物調査としての仕事ではなかった。
本来の仕事――レリュートがステインの魔物討伐部で俺と交わした最初の依頼、大型亜人種の調査とその危険性を市民に伝えること。
ここ数週間で俺は初めて見たあいつの真剣な眼差しと口調を忘れていた。
その時のあいつは二の足を踏まない俺に対して報酬の全額をはたいてまで協力を求めていた。結局俺のせいで失敗することになったが、俺はあの時のレリュートこそが魔物調査の一員としてのレリュートだったのだと確信した。
敗北感よりも嫌悪感が全身を覆う。あいつの真意を知らずに俺は何て事を言って……
「東門警備担当ランド・ハガードただいま戻りました!」
暗いムードを一掃する大音声が魔物討伐部内に轟いた。
扉の前には手を頭の上にあげ敬礼の態勢をしている、上の部分だけ堅く覆われた中途半端な鉄鎧を着た男がそこには立っていた。
「おぅ……東門担当か。やたら遅かったがどうかしたのか?」
未だに自分の失態という足枷を引きずりながらも、オーナーはできる限りの声で応答する。
「はっ! もう一人警備に当たっていたアウルが致命傷を負いまして、その救護に当たっていたために延引せざる終えない状況に陥っておりました!」
「くっ……さらに被害が出てしまったか」
もはやオーナーとしての風貌はそこにはなかった。己の無知が招いた災禍が今この魔物討伐部の周辺で騒動を起こしているとなると、その重圧は計り知れないものだろう。
「東の方の対処はどうなっている?」
「はっ! 現在2名の戦人1名の元素使いが戦闘態勢に入っていただいております。
私もこちらの報告が終わり次第参戦に向かう予定です」
戦人2名に元素使い1名、更にここにいる警備兵も追加で4人態勢。最大でも10数人近くしかいないステイン近くに奴らが現れたら一巻の終わりだ。
「頼んだぞ……あーちょっと待て」
頭の整理が追いついていないのだろうか? オーナーが全て言い終えたかにみえた矢先、もう一度警備兵の足を止めさせる。
「何でしょうか?」
「東門から外へ出たものはいるか? もちろん警戒態勢が出る前のも含めてだ」
これは重要なことだ。警戒態勢が出るほどの戦地に戦人や商人ましてや一般人が出ることは自殺行為だ。誰も出ていないことを願いたい。
「あっ! そういえば警戒態勢が出るだいたい20分前――」
どうやら誰か出ていたようだ。そうなるとその人は今絶対的危機に陥っているはず。いったい誰が――
「水色の長髪をした女性と東門を抜けた先ですれ違いました」
⁉ 水色の長髪! まさか……
「おい! そいつやたら度が厚そうなずんぐりメガネしてなかったか?」
「え? はぁ……そういえばメガネをかけてらっしゃった記憶が……」
俺は次の言葉を待つ前にその場を飛び出していた。
警備兵の横をすり抜け、扉にタックルする形で俺は駆け抜けていった。
「ふぅ~おあついね~」
オーナーがまた何か意味深なことを言っていた気もするがそんなのは関係ない。
あいつのことだ協力者がいないのなら一人ででも食い止めようとしているに違いない。
砂埃をまき散らしながら俺は東へと走る。
道中戦人の人が住民を建物の中へと誘導している姿をよく見かける。よっぽど緊迫しているようだ。
先ほどの食堂の前を通ると既に避難したのか人気を感じなかった。まだ微かに残る香ばしい匂いに胃が荒れ出す。そういや昼飯食ったばっかりだった……しかも大量に。
けど俺は走る。たとえ全て吐き出して胃の中がまた空腹になろうが。
東門が俺の目の前に現れる。先ほど言っていた2人の戦人と1人の元素使いが警備に当たっている場所を俺は一気に通り過ぎる。
「おい! 君待ちたまえ! 今外に出るのは危険だぞ!」
あー承知のうちさ。そいつらがやばい存在だとしても――
これが俺流の謝罪何だからな。
作者無駄事囁
ゲームでもナイフとか斧、ロングソードなど武器持ってる魔物いるけど、どこで仕入れてるんだろうね。