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プロローグ 事の始まりを調査せよ!

 まずはじめに、作者は文章を書くことが苦手ですので温かい目で見守ってください。

 小説家になろうで流行っているチート補正は……一応ないと思います。

 更新は4日~1週間ごとを予定していますが変更することがあります。


 広大に広がる平原の中、噛み合っていない車輪とレールの不協和音を響かせながら、列車は目的地へとひた走る。

 瞬間移動装置テレポーターの普及とともに、所要時間、危険性に噛み合わない料金設定であった列車は時代と共に姿を消していった。

 しかし、10年前マナの力が急激に弱まり、それに呼応するかのように魔物が徘徊しだしたマナ異変が起こる。

 それから2年後、マナの低下と魔物の増加との因果関係が信憑性を高まったため、一定値以上のマナの使用に罰則が科される条約が締結した。瞬間移動装置はその便利さと相まって、膨大なマナを使用するため利益と罰則の金額が釣り合わず、さらに1年後、廃止されることとなった。その結果、地上に列車という名の過去の遺産が舞い戻ることとなり、後に大々的に行われる【復元】の第一歩となった。

 何年も見捨てられていた鉄くずに、最初はみな乗ることを拒絶はしていた。

けれど便利な足を失い、次第に長距離移動には列車が欠かせない足となっていった。

 事実、今平原を颯爽と走る列車の中も席に空きはなく、手すりの空きも残り少ない。

異変が起こり時代は変わっても、遠い地へと足を運ぶ者は多い。かのものは遠く離れた親戚の家に、かのものは長い苦難を共にした戦友の墓参りに、かのものは、復元の遅れている地域への派遣に、各々が異なる目的の元同じ列車に同乗する。

 そして、2両目中央の窓側の席に座るメガネを頭の上に乗せ、手紙らしき紙を端から端まで何度も確認するこの少女もまた、己の目的のため遥か彼方の地を目指していた……。


◇◆


調査依頼


数週間前よりステインのアルモル元自然公園にて大型の亜人種と思われる魔物が数回に渡り確認された。

アルモル元自然公園は主に小型亜人種及び小型昆虫種が多く生息し、魔物生息地域としては危険性がかなり低い。そのため一般人の出入りも多く、近日中にも今回確認された大型亜人種による被害が出ないとは限らない。よって今回の調査依頼は大型亜人種の存在の確認及び被写体の画像の確保を最優先にし、魔物の生態系及び、弱点の把握も可能な限り行ってほしい。

なお今回は新種調査ノベルファインド及び対象が大型亜人種の可能性が極めて高いため、近くの魔物討伐部ハンターギルドにて戦人バトラもしくは元素使いマナリストを雇って調査にあたってほしい。

 以上が今回の調査依頼の内容である。貴殿の健闘を祈る。


                     レリュート・エリオット殿

                     魔物討伐部 本部より


 これで何度目だろうか。私は調査依頼用紙の端から端を何度も読み直し、最後に押されている印を何度も確認する。間違いない。これは何度も見てきた魔物討伐部の公認の印である。つまりこれは、正式な依頼である。

 新種調査とは今までに確認されたことのない生態系の魔物を調査することで、瞬時に相手の特徴をつかむ能力が要求される。

 戦闘時に必要なデータとして、対象の属性、体内的特徴(毒があるとか、とてつもなく硬い、もしくは軟らかく衝撃を吸収しやすいとか)、行動アルゴリズムなどがある。

 また、近年魔物を利用した産業(武器、防具開発及び燃料としての利用)も発達しているため、各部位の有効性、身体的特徴の有効性なども重要な調査内容に含まれる。

 つまりできる限り細かい調査内容が必要なのだ。そう、事細かに。

 そんな大仕事を3年目にして初めて任されたのだ。


大仕事を任される。

    ↓

実力を認められた。

    ↓

今回の依頼を成功させる。

    ↓

ベテラン陣への仲間入り。


 こう考えても罰は当たらないだろう。

 私は大きく成長するチャンスを得たのだ。一人前と認められたら多少危険な地域でも足を踏み入れることが可能になる。そうすれば……。

 「役に立ちたい。あの人たちはまだ戦っているのだから――」

 窓へと視線を移し、私は心の中でそうつぶやいた。

 ここからは見えない遠い地、地獄のように薄暗いあの場所で望んでいない戦いに身を置くあの人たちはまだ……戦っているのだから。

 窓の外は東の山に鎮座する太陽が、緑のじゅうたんが照らし、木々が影法師を作っていた。

 「ん?」

 そんな緑一色のじゅうたんに茶色? 黒?のシミのような部分が一か所見受けられる。

頭の上に乗せてあったスコープを取り付け、右レンズの歯車を回し、倍率を上げていく。ぼやけていたシミが本来の形一つ一つに分離されていく。それは群れをなし、緑のじゅうたんに容赦ない蹴りをいれ、土の粒子を舞い上げる。

 「ホーンバッファローね。」

 中型系哺乳類種。群れで行動することが多く気性が荒い。一般の生態系でいうと、牛に似た生き物で、頭の角が2本ではなく1本であること以外特に違いはない。列車以外の手段で平原を抜けようとする際、一番被害件数が多いのはこいつらである。哺乳類種は増殖するのにもっとも時間のかかる種であるけど、元の個体数が把握できないほどに多く、そのため定期に個体数を減らすため行っている討伐作戦もあまり意味をなしていない。

 ふと視線を手前に下ろす。ところどころ赤さびが残った列車から2~3メートル離れた場所にほぼ窓の高さと同じ黒い鉄の壁が列車と一緒に並走するかのように遠い果てまで連なっている。

 しかし、頑丈そうな鉄の壁とはいえ上から覗き込むとその厚さはせいぜい1~2センチメートル。本気で蹴り飛ばせば私でも倒せるのではないかと思ってしまうほど薄かった。

 「こんなの3~4匹ぶつかれば崩壊するわよね……」

 この列車に乗って本当に大丈夫だったのだろうか?今更ながらの発言ではあるが身の危険を感じた。また視線をあげ、今命の危機を感じている凶器達に目を向ける。距離からしてだいたい0,5~1キロメートル。

 「まぁ大丈夫よね」

 ホーンバッファローはそこまで早くはない。かといって生身の人間が走って勝てる相手でもない。列車だからこそ言えることである。

 たとえ先頭にいるリーダー格っぽいのがこちらに気付いて、その2本角を列車に方向転換してきても列車に追いつくことはないだろう。まぁこの距離だから言えることであって、もし、もっと近いところに奴らがいたのならば私が――。


 「ん?」


 さっきの言葉の一連に何かおかしな点があったようななかったような。とりあえず最後の言葉は置いといて、さきほどの一連の流れの中にあろう違和感を追究する。3度目の視線上昇。

緑の平原。一人ぼっちの木。家族団らん中の木。きれいな湖。1本角の牛。2本角のリーダー。2本角……。

 「2⁉2本⁉」

 他の牛を見る。牛じゃない1本だ。リーダーを見る。2本だ。牛だ。いや実際は牛じゃない。けど牛だ。けどこの場合は――。

 「新種?いや突然変異?」

 可能な答えが2つあがる。

 1つ目は新種説。あれはホーンバッファローではないということだ。この場合新たに新種調査の依頼を魔物討伐部生態調査科に依頼するのがふつうであるが、私がこのまま調査に乗り出してもいい。なぜなら私は――。

 とは思ったが見た目はほぼ同じ。違う場所は角だけ。新種となるとすでに調査済みの魔物とは5か所以上違う特徴がなければ認められない規定がある。

 「残念。一回の調査で2匹の新種のデータが取れれば一気に――」

 いや、焦りは禁物ね。一瞬の気のゆるみが命取りとなる、あの人がよく言っていた言葉だ。

 となると残るは2つ目の説、突然変異説。何らかの条件が加わることによって、身体の遺伝子に変化が起こるか、そもそもの遺伝子が変わってしまうことである。この場合ホーンバッファローと一般生態の牛が何らかの状況で交尾を行い、誕生した生命体があれなのだろう。2本の角は一般の牛から、ほかの部位(性格も)はホーンバッファローの物だろう。

 「2つ目の説がしっくりくるかな。でもこれは後の調査に役立つかもしれないし、それにちょっとしたお手柄になるもしれない」

 欲望丸出し、未熟だな……私。もう一度頭に言い聞かせる。焦りは禁物だと。

 しかし思考とはうらはらに、右手でバックの中をものすごい勢いで弄る。私の愛用しているのは女性らしいポーチではなく、肩にかけるショルダーバックタイプである。仕事柄とにかく使うものが多く、道具一式がごった返している。

 その中から、黒い長方形体を2つつなげ、その先に透き通ったレンズのついたものを取り出す。20年前誰もが持っていたであろうカメラというものだ。

 マナの使用制限によってマナを使用した射影装置スナップの使用が禁止されたため、現在は復元によって再導入されたカメラが主流となっている。しかし、一般のものよりも遠くを写すことができるように、このカメラのレンズはスコープと一緒な素材でできている。流石に魔物の近くで「ハイ、ポーズ」とやってくれるほど魔物さんは優しくない。逆に近づいてってくれちゃったりしたら困る。

 「これなら1km離れていてもばっちりと――」

 カメラを2本角のターゲットに向けるとレンズの向こうには白い世界が現れた。

 「な、なんだこれ?」

 そこで、自分がすでにスコープをつけていることに気付いた。2つのレンズの相乗効果はまっ白な角にこれでもかと近づき、私を一面真っ白な雪国へといざなった。

 あわててスコープを頭の上にかけなおす。今までだらだら思考を重ねてきているが、今私がいるのは列車の中である。乗客一人の言い分で都合よく止まってくれるわけもない。 

 再度カメラを標的に向ける。野をかける目標と鉄の道をかける台座。カメラ越しに追い越し追い抜かれのピント合わせのデットヒートが繰り広げられる。2本角がよくわかる位置に中心を合わし――。

 「今だ!」

 シャッターを切る。映し出されたが画面に現れる。見てすぐホーンバッファローだとわかる全体像に、肝心の2本角が中心にそびえ立つ。ほかの数頭も写真に納まっているが、比較対象として役に立ちそうなので結果おーらいといったところだろう。

 「ほう。写真機とは懐かしい物をお持ちですな」

 背後から突然声をかけられた。

 通路側のほうに顔を向けると、齢5~60といったところの紳士的なおじ様がこちらのほうをまじまじと見つめている。

 「私がまだ30代のころには写真機が主流でした。マナ異変以降マナを使用した写真機に似た機能……なんと呼ばれていたのかは使う機会がなかったもので存じませぬが、それが使われなくなり、復元が行われてからもあまりお目にかかったことがありませんでしたので、ついつい懐かしさを感じてしまい――」

 この人が60歳くらいだとすると30代のころはまだマナ技術が発達する前、その頃はカメラが主流だったと魔物討伐部から聞いたことがあった。

 「そうなのですか。私マナ世代なので、その時代のことはあまり知らなくて、カメラも3年ほど前から使用するようになりました。初めはすごく苦労しました」

 「ほほう、ということは、お嬢さんは写真家かね?」

そう思うのも無理はないと思った。復元されたばかりの物は数が品薄で、生産技術は失われたも同然の代物である。そのためどれもかなり高額となり、そんなものを欲しがるのはそれがなくては生業が成り立たない人ばかりである。けれど――。

 「いいえ、違いますよ」

 私は素晴らしい風景を写真に収める人間ではない。私が収めるそれはとても醜く、残虐なもので、それを好き好んでみる人はいない。けれど、現在を取り巻く環境ではそれを収め、研究し、対処する存在が魔物討伐部を支える重要な一つとなっている。

 「私は魔物討伐部の魔物調査ファインダーです」

 その重要な一つに私は所属している。

 ある目的のために――。


作者無駄事囁ライターウィスパー

作者の黒歴史(になるだろう)作品、遂に始まりました。

皆様温かい目で見守ってください。

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