五分後の異界〜手元の時計だけが、世界の終わりを告げている〜
掲載日:2026/04/24
駅前のアンティークショップで、奇妙な懐中時計を手に入れた。
懐中時計には、二種類の文字盤があった。
一つは普通の数字。もう一つは、ルーン文字のような不思議な記号が刻まれている。
針も二本。
通常の時間を指す針と、ルーン文字をなぞるように動く針。
これは何を意味するのか。
珍しい時計を手に入れた高揚感のまま、地下鉄のホームで電車を待っていた。
そのとき——
目の前で、一人の男が線路に飛び込んだ。
思わず息をのむ。
だが周りを見渡すと、誰も騒いでいない。
まるで何も起きていないかのように、皆平然としている。
時計を見る。
ホームの時計より、五分進んでいた。
……いや、違う。
五分後。
目の前で、同じ男が電車に飛び込んだ。
背筋が凍る。
夢を見ているのか。
何が起きている。
——そうか。
この時計は、五分後の未来を映しているんだ。
次の瞬間、視界が炎に包まれた。
人々が悲鳴を上げ、焼け、溶けていく。
だがやはり、現実の人々は何事もない顔で立っている。
五分後、これが現実になるのか。
恐怖に耐えきれず、目を閉じた。
懐中時計を握りしめる。
そして——五分後。
ゆっくりと目を開け、空を見上げた。
そこには、太陽が二つ並んでいた。




