告白@彼
告白@彼
俺があいつと付き合い始めて一ヶ月が経つ。
告白の言葉には驚いたが、自分の言葉にはもっと驚いた。
人間、うろたえるととんでもないことが言えるようになるようだ。
いや、考えただけで寒気がするようなことを言った。間違いないだろう。
七月十八日 雨。
今日、告白された。嬉しい。死にそうだ。叫びながら町内一周したい気分だ。
しかも、告白の言葉が『大嫌い』なんて。
うおお、なんてかわいいんだ!
ああ、死ぬ。もう死ぬ。
返事は恥ずかしくて書けない。いや、やっぱ書いちゃえ。
『それが好きな人なら、尚更ね』
***
なんだってこんなに嬉しそうなんだろう。いつも、いつも。
勘違いしたって文句は言えないだろ。
ほら、今も。
まっすぐにこっちを見て、嬉々として話しかけてくる。
『ねえ、ねえ。』
目なんか合わせられない。
惚れてしまいそうだから。
仕方なしに本やら何やらに目を落として、全身を耳にして。
『ねえ、聞いてる?』
きいてるよ。
一言だって聞き漏らしたくない。
机に浅く腰掛けて、片手には携帯。
アドレスが聞きたいけど、そんな度胸なんて無い。
暗く靄がかる、早朝の教室。
早起きなんて嫌いだ。
それでもなんとか起きるのは、彼女と話すため。
それを知ったら彼女はどう思うだろう?
きっと気味悪く思うんだろうな。
『ねぇ聞いて、こないだの模試悪くてね。久々にミサに抜かされたんだ。笑って、平均六十点くらいだったんだ・・・笑えるでしょ?・・・ねぇ、聞いてる?』
きいてるよ。
知ってる。
雨の日は血圧が下がっていつも貧血気味な事。
あの日寝不足だった事。
頭痛薬飲んでたこと。
これじゃ変態プロファイルだ。
でも、言いたくて。
『・・・あの日は雨だったしな。しかもあんまり寝てなかっただろ?頭痛薬も飲んでたし。ま、次、しくじるなよな。』
と。
彼女が不意に立ち上がった。
飽きられたのか。
彼女は気まぐれだから。
その時。
後ろから、不意に。
全く不意に。
柔らかい感触。
暖かい体温。
優しい息づかい。
視界の端に、彼女の長い髪。
高まる鼓動が、呼吸に連動して、早く、早く。
『あなた、大キライ。』
『ほら。なんでもないふりして。そんなの無駄だよ。』
『だって、ほら。』
胸に置かれた手。
高鳴る鼓動。
理性があるのが不思議な。否。
自我ごと崩壊したのかも、知れない。
『当たり前だろ。女の子に抱きつかれてドキドキしない奴なんていねえだろ』
抱きついたまま、彼女が覗き込む。
『特に、それが好きな相手なら、尚更ね。』
・・・ついでにキスを、いただいた。
読んで頂き、誠にありがとうございました。
気に入って頂けたようでしたら@彼女もよろしくお願いします。