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第3話 前世の記憶と「プレゼント」の正体

 私はドガーラ宮殿に運ばれた。ベッドの中で意識が朦朧としながら、次から次へと慌ただしく出入りする人々を目で追っていた。医者、爺、騎士たち……そして目を閉じた。





 体が動けるように回復したのは二ヶ月後だった。





 ベッドの上で軽い朝食を済ませた私は窓辺に近づいた。ドガーラ王国の町並みと行き交う人々の姿を見つめた。




 ──私は転生者だ。




 シングルマザーでネグレクトの母は、私にろくな食べ物も着るものも与えず小学校に通わせた。学校では薄汚いとののしられ、家に帰ると母が連れて来た男に暴力を振るわれた。生き地獄だった。唯一心を解放してくれたのは、本の物語だった。



 《悪役令嬢》の物語が大好きだった。転生した悪役令嬢が人が変わったように周りの人たちに信頼されて、ライバルの令嬢をやっつけることが爽快だった。でも現実は母親のネグレクトがひどくなってご飯を食べれなくなった。衰弱した私を母親の男がおもしろがってサンドバッグのように殴った。



 殴った。



 殴り続けた。



 そしてこの世界に転生した。





 転生先は北方地域の大国アルゴ王国の王女だった。私は歓喜した。夢に見た本物の王女様になれたからだ。しかも、彼女の記憶と精神年齢までもが引き継がれていた。




 私は7歳の女の子ではなく、19歳の女性になっていた。




 ただアリーヤ王女は引きこもりだった。社交界にも姿を見せず、ひたすら部屋にこもっていた。各国の要人でアリーヤ王女と会った人物は皆無だった。



 父のイーライ国王が頻繁に部屋にやってくる。書類を大量に入れた鞄を持っていた。



「すまないが今夜も頼む。知恵を貸してくれ」



 名君と誉れ高いイーライ国王がもっとも信頼して頼りにしていたのは、ほかならぬアリーヤ王女、私だった。



 異才、天才、呼び名はいろいろあろうがアリーヤ王女は戦略を練る飛び抜けた才能があった。


 雑務が片づいたら父が言った。



「もうすぐ誕生日だな。誕生日プレゼントは何がいい? 遠慮せずにいいなさい」



「それを見つけるために旅をしたいと思います」



 私が外出すると知って父は驚愕した。



「そうか……やっと外の世界に目を向けてくれるか」


 父は目頭が熱くなって涙をぬぐった。




 わずかな伴を連れて私はお忍びの旅に出た。国境越えの山道で馬車を止めた。辺りの地形を確認するために馬車から降りた。遠くの山間に小さな村が見えた。



「近いうちにあの村の村長を籠絡ろうらくしなさい。方法は任せます」


 私は部下に指示をした。



「かしこまりました」


 


 


 


 馬車の旅は楽しかった。ネグレクトの母は私をどこにも連れていかなかった。馬車の窓から見える空は広くて澄みきっていた。





 目的地のドガーラ王国についた。



 《北方地域のオアシス》との異名がある小国だ。水源が豊かでいたるところに森と湖がある美しい国だ。北方の3カ国に向かう中継地点であるため、物資の補給基地としての役割をになっていた。


 人々の表情は明るく、旅人に対するまなざしは温かいものだった。



 私はこの国の開放的で明るい雰囲気が好きになった。


  


 しかし、光には影があった。 



 宿を出て向かったのは、町外れにある貧民街だった。そこのリーダーの老人ナルセにあった。



「これまでのあなた様の多大なるご支援に感謝しております」


 ナルセ老人が言った。



奴隷農場・・・・からの脱走者を保護したと聞いたのですが」



「カミーラこっちに来なさい」



 3歳ぐらいの女の子が連れて来られた。手を握ってるのは若い男だった。



「奴隷農場で生まれ育った子どもです。手引きした仲間が脱走させました」



「ご両親は?」



「母親は逃げる途中足手まといになるからと、この子を託されました。父親は……誰かわかりません。母親自身もわからないようでした」


 彼は床に視線を落とした。



「ディエゴ、この方々の案内を頼む」 


 ナルセ老人が言った。






 私たちはディエゴの案内で奴隷農場を見渡せる丘に登った。


  


 頂上から平原の奥に広がる畑といくつかの建物が見えた。これまで見たことのない大規模な農場だった。



「北部地域で最大規模の奴隷農場です。もとは小規模の農場だったのですが、労働力不足を解消するため、囚人や不法滞在者を送り込んでいます」



「奴隷農場は私の国では違法です。この国では合法なのですか?」



「恥ずかしながらドガーラ王国が運営しています。ラモス国王の指示には誰も逆らえません。一族と取り巻きだけが裕福になってる国家、それがドガーラ王国なのです。農場の人々は死ぬまで過酷な労働を続けるのです」



 ディエゴはこの国を変えてみたいと熱く語った。


 王国・独裁専制国家が当たり前のこの世界で、彼は異質の存在だった。



 もしかして、この男ならばこの国に新しい風を呼び込むかもしれない。



 ドガーラ王国に滞在中、私とディエゴは毎日会っていた。


 朝、昼、晩ほとんど一緒にいた。語ることは山ほどあった。




 気づいた頃には、私とディエゴは恋人同士になっていた。




     ◇




 一ヶ月後、私はアルゴ王国に戻った。



「誕生日プレゼントは見つかったかね」


 父のイーライ国王は何やら複雑そうな顔をしていた。私の行動は逐一報告されていたのだ。




「はい。ドガーラ王国を所望しょもうしたいと思います」




※明日20:10に第4話を投稿します。

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