第2話 地獄の淵と逆転の白旗
偽者の王女は地下牢に閉じ込められた。そして連日の苛烈な取り調べが続いた。
水責め。
背中に執拗なムチ。
ベリッ、ベリッ、ベリッ!
両手両足の爪をナイフで一枚ずつ剥がされた。
うぎゃああ──!!
拷問室に悲鳴がこだました。
「まだ吐かないのか? あやつの背後関係は誰がいる」
ラモス国王が宰相に言った。
「わかりません。偽王女の連れの者たちは早々と姿を消しました。今、国中をくまなく探しております」
執務室のドアの外側から荒々しい声がした。
「陛下、緊急事態でございます!」
「何だと、国境付近にアルゴ王国の軍隊が集結しておると。なぜだ? アルゴ王国とはアリーヤ王女との婚約が成立したばかりではないか」
「はっ、使者が申しますには、拉致監禁されたアリーヤ王女の奪還のために軍隊を総動員したとのことです」
「拉致監禁じゃと? それはもう解決済みではないか。これは言いがかりとしか思えない。それでアルゴ軍の総数はいかほどじゃ」
「およそ20万の兵力かと」
「ばかな!!」
ドガーラ王国は小国だった。大陸北部の草原の湿地帯を含む地域を治めているにすぎない。周辺の大国3カ国を通る街道の中心にあるため、物流のハブ国家として君臨していた。
兵力は総数8千人。
かたやアルゴ王国は北部地域最大の国家である。最大兵力は50万人を超える。まともに戦ってどうにかなる相手ではない。蟻が象と闘うようなものだ。ドガーラ王国は無血開城の白旗を掲げた。
◇
「アリーヤ王女様! ……なんと痛ましいお姿であられましょうか」
牢屋の奥にボロ雑巾のように放り投げられた私の姿を見て、白髭の鎧姿の老人が床に両膝をついた。アルゴ王国の大将軍モラレスだ。
「爺、来てくれ……て嬉しい……ぞ」
私は蚊の鳴くような声しか出なかった。ムチで喉を締められて声帯が傷んだせいだ。
私はモラレス将軍の腕の中で体を起こされた。
「見ろ、この方が我がアルゴ王国のアリーヤ王女様であられる!!」
「将軍、何かの間違いでは……」
背後で突っ立っていたドガーラ王国のラモス国王が震えながら言った。
「産声をあげたときから、わしはこのお方の側にいたのだぞ。見間違えるわけがない!」
「そ、そんな────、何てことを!!」
ラモス国王がへなへなと腰砕けになった。
※本日20:30に第3話を投稿します。




