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平民でも王子様と結婚します!~転生公爵令嬢は手段を選ばない~   作者: 蒼黒せい


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18話

 今日はナナカとお出掛けの日。

 ナナカの茶色の瞳に合わせ、ワンピースはキャメル色。

 黒のカーディガンを羽織り、髪は横に軽く流す程度に。

 しっかりおめかしをして準備を整えると、早速馬車へと乗り込んだ。


 アウクシリア家の屋敷に着くと、従者によりナナカが馬車へと乗り込んできた。


「今日はよろしく、アリス」

「こちらこそ、ナナカ」


 馬車が走り出し、今度は王都の市街地へと向かう。

 今日は私が案内人だ。

 エスコートの役目はしっかり果たして見せるわ!


 ナナカとの王都観光は楽しかった。

 案内した場所はまだナナカが行ったことが無かったようで、ナナカも楽しんでいたのでうれしい。

 お昼は流行りのカフェに行き、ナナカはバターとはちみつたっぷりのパンケーキを頼んで感動していた。

 私はサンドイッチで、瑞々しい野菜と溢れる肉汁を堪能。

 その後はのんびり市街地を散歩。

 市街地は午後になって人通りが増え、なかなか前に進めない。


「ナナカ、しっかり手を握っていてね」

「アリスこそ」


 互いに離れ離れにならないよう、しっかり手をつなぐ。

 ふと後ろを振り向くと、公爵家の護衛が少し離れてしまっていた。

 これはまずいと思った時、よそ見をしていたせいで前から来る人に気付けなかった。


「キャッ!」

「アリ…くぅ!」


 何かにぶつかってしまった私は体勢を崩して転んでしまう。

 それに手をつないだままのナナカまで巻き込んでしまった。


「ごめんなさいナナカ!」

「アリスこそ、大丈夫?」

「私は大丈夫よ」


 確認すると、互いに少し擦りむいたくらいで済みそう。

 一安心していると、頭の上から剣呑な声が響いた。


「ああ~?おい、こっちには謝りもしねぇのか?ヒック」


 そこには酒瓶を片手に持ったまま、赤ら顔の男が立っていた。

 私はこの男にぶつかってしまったらしい。

 お酒臭い…それに、あまり風体も良くないわ。


 あまり関わらないほうがいいと判断し、すぐに立ち去ることにした。


「ごめんなさい、よそ見をしてましたわ。では」


 私もナナカもすぐに立ち上がり、立ち去ろうとした。

 だが、男のほうはそれではすまないようだ。


「待てよ~?謝罪ってのは、こうするもんだろう!」


 いきなり伸びてきた男の手が、私の頭を掴んだ。

 そしてそのまま下へと力が加えられ、石畳が迫ってくる!


(いやっ!)


 顔が石畳へと叩きつけられる!

 怖くて目を閉じるも、次の瞬間にはピタッと止まっていた。

 恐る恐る目を開けると、そこには意外な人物が。


「…お前、何をするつもりだった?」

「ぐっ…い、いてぇ!放しやがれ!」


 いたのはルベア様だった。

 彼が男の腕をつかみ、反対の手で私を支えている。

 ルベア様は相当な力で掴んでいるのか、いつの間にか頭を掴んでいた男の手は離れている。

 男の顔は痛みで歪んでいた。


「今、女性の顔を地面に叩きつけようとしたな?貴様に同じことをしてやろうか?」


 ルベア様の声は、恐ろしいほどに冷たかった。

 普段はひょうきんな感じで明るいのに、同じ人が出している声とは信じられない。


 でも、その声がどこか聞き覚えがあるように感じられて、ついドキッとしてしまった。

 まるでエイベル殿下のような…いえ、そんなことないわよね。


「くそっ!」


 男はルベア様の手を振り払って逃げて行った。

 その背中を見送っていると、グッと引き寄せられた。


「大丈夫?怪我は無い?」


 いつの間にか私の体はルベア様に抱きすくめられていた。

 それにドキッとしてしまうも、未婚の男女がこんなに密着してしまうのはまずいと冷静な自分もいた。


「大丈夫です、ルベア様。だから、その、離していただけますか?」

「あ、ああ、すまない」


 離れてくれたけど、ドキドキが収まらない。

 どうしてしまったんだろうと思っていると、今度は別の方向から衝撃が届いた。


「アリス大丈夫!?ああもう、こんな髪が乱れて!なんなのよ、あの男!」


 私をしっかりと抱きしめたまま、ナナカは怒り心頭といった感じ。

 掴まれて乱れた髪を、一生懸命手櫛で整えようとしてくれる。

 徐々に動悸は収まり、私は安心させるようにナナカを抱きしめ返した。


「ナナカ、大丈夫だから。心配してくれてありがとうね」

「アリス!」


 互いの安全を確かめるように、私とナナカは抱擁を交わす。

 そこにルベア様が割り込んできた。


「…あー、そっちのお嬢様も怪我は無い?」

「はい、大丈夫です。……アリス、どちらさま?」


 そうよね、ナナカはルベア様のこと知らないもの。

 そっとナナカを放すと、一つ咳ばらいをして紹介することにした。


「こちら、騎士のルベア様よ」

「騎士様でしたか。私はナナカ・アウクシリアといいます」

「よろしく。アウクシリアというと、あの子爵のことだよね?」

「ええ、父を御存じですか?」

「もちろんだよ、国王も認める賢人だからね」

「それは光栄です」


 父親のことを褒められてナナカもうれしそうだ。

 ただ私としては、これ以上ルベア様と関わっていたくはない。

 助けてもらった手前言いたくはないけど、またミルドレッド様に見られると問題だ。

 私はいいけど、ナナカに何かあったらイヤだもの。


「ルベア様、ありがとうございました。こちら、お礼です」


 そう言って私はルベア様に金貨を数枚握らせた。


「えっ、いやこんなの受け取れないよ」

「それでは失礼します」

「えっ、アリス?」


 私はナナカの手を握り、護衛のほうへと引っ張っていく。

 無事に護衛と合流し、そっと後ろを振り返ると、ルベア様は追ってこなかった。


「アリス、助けてもらったのにあの態度はどうかと思うわよ?」

「ごめんなさい、わかってはいるけど事情があるのよ」

「ふーん…後で聞かせてもらうわよ」

「もちろん」


 結局、転んで擦りむいたしで今日のお出掛けは中止となった。

 帰りの馬車の中、ナナカにルベア様と関わることの危険性を説いた。


「うわぁ、そんな人がいるのね…」


 聞いたナナカは心底嫌そうに顔をゆがめた。

 そうよね、そんな顔になるわよね。

 私もよく分かるもの。


「私は一応公爵令嬢だから、表立って何かしてくることはないと思うの。でもナナカは子爵家だから、何かされるかと思うと怖くて…」


 2年前、踏まれたのは本当に痛かった。

 貴族であるナナカにそこまでするとは思えないけど、用心するに越したことは無いと思う。


「わかったわ。そういう事情があるのね。しかしあのルベア様も不憫だわ。そんなお嬢様の取り巻き扱いされて」

「本当にね」


 本当はちゃんとお礼をしたかった。

 なんとかミルドレッド様の目が届かない場所は無いかしら?

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