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平民でも王子様と結婚します!~転生公爵令嬢は手段を選ばない~   作者: 蒼黒せい


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13話

「…君を、私の養子に…?」

「はい!」


 まさかの内容に、さすがの宰相閣下も驚きを隠せないようだ。

 当然よね。

 金品や昇給どころではない。

 家族にしてくださいと言ったのだから、思いもしなかったはずだ。


(やっぱり、断られてしまうかしら…?)


 無理だと言われるかもしれない。そんな不安がよぎる。

 でも、こんなチャンスはもう無いかもしれないもの。


(無理でも無謀でも、言わなければ何も叶えられないわ!)


 心臓がうるさく、閣下がどう反応するのかが怖い。

 それでもまっすぐに閣下を見据える。

 すぐ断られるかもと思っていたけれど、意外にも閣下は考え込む素振りを見せた。


「…ふむ…」


 これはもしかして、なのかしら?

 考えているということは、可能性があるということだ。

 まさかの状況に、今度は期待で心臓がうるさい。


「君を養子に、か。…いいだろう。ただし、条件がある」

「…その条件とは?」


 やっぱりすんなりにはいかないわよね。

 でも、どんな条件かしら?

 閣下は膝の上で手を組むと、私をじっと見る。


「今から聞くことに答えてもらう。アリス、君は私の養子になって、何を成すつもりだい?」

「っ!」


 それを聞きたいわよね。

 私は迷う。

 これまでは目的を明かすリスクを恐れて、誰にも明かさずにいた。

 でも、どこかの段階では明かして、協力を求めないとエイベル殿下との結婚は不可能だ。

 少なくとも、家族となる相手には。


(でも、目的を明かして拒否されたら?そうしたら、もう目的はほぼ潰えるのと同じことに…)


 それが怖い。

 知られたうえで拒否されれば、もうどうしようもなくなる。

 私をエイベル殿下の伴侶の立場を狙う危険人物と認識すれば、宰相閣下は私を王城から追い出し、二度と殿下に近づけないようにするでしょう。

 ハイリスクハイリターン。

 私は今その岐路にいる。


(…そんなの決まってることよ。怖くても、やると決めたんだから!)


 一度深呼吸し、紅茶を一口飲んで口を潤した。

 そして、ゆっくりと言葉を紡ぐ。


「エイベル殿下と、結婚するためです!」

「…………へぇ」


 私の答えを聞いた宰相閣下は一瞬驚いた顔をするも、すぐに口角を上げた笑みに変えた。


「なるほど。『聞いてた通り』…いや、それ以上か。面白いね、君。…いいや、我が義娘よ」

「っ!じゃあ!」


 閣下の義娘呼びに、一気に緊張が吹き飛んだ。

 やっぱりちょっと気になる言い方をされたけど、そんなのはもうどうでもいいわ!

 嬉しくなり、つい立ち上がってしまった。


「ふふっ、君を養子として我が家に迎えよう。ようこそ、アリス。我がプリムス公爵家へ」

「はい、よろしくお願いします!」


 閣下が差し出した手に私も手を差し出し、握手を交わす。

 しっかり握られた手に、これが現実だということを教えてくれた。

 もう嬉しすぎて、笑みが抑えられないわ!


「さて、義娘にすると言ったが…そうだな。実際に養子縁組をするのは……2年後が妥当だろう」

「えっ!?ど、どういうことですか!」

「まぁ落ち着きなさい。考えてごらん、平民の君が、いきなり公爵家の養子になれば誰しも怪しむ。そんな状況で、殿下との結婚を周りが許すと思うかい?」

「うっ……」


 それは確かにそう。

 怪しすぎるし、そもそも殿下だって怪しむと思う。


「では2年後というのは…」

「この2年間で、我が家に来ても違和感が無いようにしていくということだ。それはこれから考えていくとしよう。安心なさい。私は約束を破らない」


 そう言って閣下はにっこり笑った。

 その笑顔に、少しだけ背筋がぞくっとしたのはどうしてかしら?


「はい、わかりました…」

「…しかしまぁ、本当に君は面白い。コルビーの言った通りだね」

「えっ?」


 閣下の口から旦那様の名が出てきたことに驚いてしまう。

 旦那様の名は『コルビー・アウクシリウム』。

 公爵家と子爵家では、つながりがあるようには思えないけれど、どういうことなのかしら?


「どうして閣下が旦那様のことを?」

「彼とは貴族学校時代の同期でね。彼は主席、私は2番手だったんだ。当時は毎日図書館で議論を重ねたものだよ」


 そう言う閣下の目は昔を懐かしむように遠くを見ていた。

 そうか、お二人にはそんな繋がりがあったのね。

 ということは、もしかして?


「まさか、旦那様から私のことを?」

「少し聞いていたよ。面白い娘が我が家で働いていたから、女中に推したとね。まさか君から話しかけてくるとは思いもしなかったけど」


 そうだったのね。

 閣下の言葉に気になるところがあったけど、納得したわ。


(というか、閣下より頭が良かったなんて、旦那様すごい方だったなのね)


 6年間読ませてもらった図書室を思い出す。

 あれだけの蔵書数を誇るのに、まだ増やしていたのだから秀才の一族なのかもしれない。

 ということは、ナナカもいずれは秀才になるのかしら?



 ***




 それから2年間。

 私は女中としての仕事をこなしつつ、図書館に通って勉強を続けた。

 その図書館にいるとき、時々宰相閣下…いえ、お義父様が訪れ、共に勉強している。

 …という形にして、私の優秀さに気付いたお義父様が自分の養子にすることを決めたというストーリー。


 そのために2年も期間を置いたことに後から私は焦った。


「2年も置いたのでは、エイベル殿下が結婚してしまいませんか!?」


 焦る私に、お義父様は平然と言った。


「しませんよ。少なくとも、今の殿下に結婚する気はありません」

「…そもそも、どうして殿下は結婚する気が無いんですか?」

「……それは、自分で聞いてください。いずれその機会は訪れますよ」

「わかりました…」


 何故かは分からないけれど、殿下はまだ結婚しないという。

 釈然としなかったけど、宰相として言うのなら間違いは無いと思う。


 そして待ちに待った2年後。

 14歳になった私は、プリムス公爵家の養子になった。

 住む場所も女中寮からプリムス公爵家のタウンハウスになり、いよいよ公爵令嬢としての生活がスタート。

 それに合わせて女中も辞め、代わりになんとエイベル殿下の侍女として勤めることになった。

 もちろん、お義父様の采配だ。


(やっと…やっとここまでこれたわ!)


 ようやくエイベル殿下の近くに侍ることができる。

 もちろんまだまだ課題は多い。

 一層、気を引き締めて取り掛からないといけないわ。


 …そう思っていたのに、まさか早々に出鼻をくじかれることになるとは、誰が想像したでしょうね。


「殿下の世話は我々側近だけで行うから、侍女は必要ないんだ。君には殿下の私室の掃除だけを頼む」


(嘘でしょおおぉぉ!?)

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