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YAMAGUCHI DEAD END  作者: 遠藤信彦
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激突4

『おんなぁ喰ろうてくるわ。』

山本圭一郎はそう言って徳島本隊の一番後ろに下がって行った。乗り慣れない馬を使った突撃に疲れたのかもしれない。いささか自分に酔っているところがある、気をつけろよと潮田剛蔵はまだ若い圭一郎の後ろ姿に言った。


潮田は埼玉の生まれで、大学まで地元で過ごし、就職で広島まで来た。そこで戦争が始まり、ミノルと会い、現在まで一緒にいる。まさか自分が人喰いとなり、大勢の部下を従え、いま香川を獲ろうと進軍しているのが信じられなかった。

『あがぁなモン、皆殺しじゃぁね。』

広島弁も板に付いている、誰が聞いても広島人に見える。

潮田は東京の優秀な大学を出ていた。ではなぜ就職を広島に選んだかと言うと、小さな時から大好きだった車の会社が広島にあったからだった。その車会社でエンジンとレースに取り組むのが潮田の小さい頃からの夢であり、現在では生き甲斐であった。結婚もせず、ひたすらに車作りに没頭する毎日だった。結婚しなかった理由のひとつにその風貌がある。”ガマガエル”と揶揄されるその顔には大きなクレーターのような窪み、凹凸が沢山ある。 一つ一つが大きく、山のように隆起し、谷のように深く陥没している。 お腹はもちろん、顔もでっぷりと良く肥えており、二重顎の線が永遠を感じさせるかのように鎮座している。つまりは見た目が良くない。

性格は極めて温厚であった。見た目で損をしている分、周りに対して気を使うことが多かったからだ。自主防衛の一種であり、そうでなければ生きていけなかったのだ。もしかすると生き残るために温厚な性格を演じていたのかもしれない。その演技に対する対価、すなわちストレスが溜まると潮田は決まって車を飛ばした。ナンバーを細工したチューニングカーで峠を飛ばした。高速道路では300kmチャレンジもした。そして車を飛ばした後は必ず女を買った。買ったという表現はふさわしくないかもしれない。平手や拳、鞭などの道具で叩いてもらうための女だった。その”女王様”に叱責されながら殴られ、蹴られ、”ご褒美”を貰い、そして射精をする。自らは女王様に指一本触れない。もちろん性器での性交もない。潮田は童貞であったが不思議と女性とまともな性体験に対する欲求は皆無だった。

男性を嗜好とする性癖なのかと自問する時代も長かったが、そうではなかった。男性性には全く興味がない。女性に対しては明らかに勃起をし、手淫をする。そして手淫だけで満足であった。唇を重ねたり、性器を交わらせたいといった欲求は無く、なぜか満足している。

『潮田さんは人生の半分を損している。』

圭一郎によく揶揄われていた。

『今の潮田さんなら女なんか抱き放題なんじゃけぇ、食べる前に抱きゃぁええわいね。』

ごもっともな意見だったが、なぜか体が欲求しない。人を食い始めてからは女王様からのお仕置きもほとんど欲しなくなった。良くて2ヶ月に一度くらいである。食べることが何かと等価交換されているのかもしれない。

『徳島のおんなぁは目ん玉がトロンとしちょって、ぶり美味いけぇね。ワシも久しぶりに食おうかいのぉ?』

潮田豪蔵が独りゴチていると目の前にトラックが突っ込んでくるのが見えた。

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