激突2
山本圭一郎を含む5人の騎馬兵は持っている弾丸を打ち尽くすとすぐさまとって返した。そして間髪を入れずに300人の徳島人が突っ込んできた。
『くそ、多いな。』
レイジは100人の伊予兵しか連れてきていない。真之介が率いる香川兵300人のところまで下がるかどうか、判断に迷ったが、香川兵がどこまでできるかは未知数だったし、ここで手柄を立てないと、わざわざ伊予国から派遣されてきた示しがつかない。
『さて、どう切り抜けるか?』
レイジは勝つことは早々に諦め、彼らを足止めさせることに専念することに決めた。3人ほど足の速い連絡兵を真之介の後方部隊に送った。真之介が前に出るか、高松に向けて下がるかは本人に任せると伝えさせるためだ。伊予国の兵は良く訓練されているし、伊予を出ている時点で簡易な葬式を済ませている。皆死兵となって戦うことができる者ばかりだ。たとえ相手の数が3倍だったとしても”勝ちに行かない”という作戦であれば、持ち堪えるだろう。弾薬も食料も十分にある。
『はよから負け戦やけんど、どないしよかね?』
好和が笑いながらライフルを打つ、面白いように相手に当たる。
『なに、伊予人は大丈夫ですよ。こんな雑兵の集まりなんて、どうにでもなるでしょう。』
『ほうよなぁ、しばらくは大丈夫やろかい。相手の本体がどれぐらいの規模か分かりゃ、ええんやけどのう。』
たしかに好和の心配ももっともだ。この目の前の300人はどうにかなるとしても、この後の本体がいつやってくるかわからない。総数2000人という人もいるし、500程度しかいないという噂もあった。500と2000では4倍も違う。
目の前で伊予人と徳島人が白兵戦を行なっている。伊予人は訓練されており、みな3人か5人の組みになって相手一人を迎え撃っている。必ず複数対相手一人になるようにしている。徳島人はどんどん倒れていった。
『殺さんといてよぉ!子どもを人質に取られとって、しゃーなしにここにおるんじょ!』
『ぶち殺すけんな!殺すど!』
徳島人からの阿鼻叫喚が耳を痛くした。あるものは腕がなく、のたうちまわっている。あるものは腹から出た腸を必死で元に戻そうとしている。首を無くしてもまだ立っている者がいた。かわいそうに、本当はここに来たくなかった者の方が多いんじゃないか?とレイジは思った。あっという間に徳島勢は総崩れし、下がっていった。
『あれ?あっけないん?』
好和が拍子抜けしている。彼自身は少なくとも20人を死傷せしめてご孝悦であっただろうが、なにか不思議な感じがしている。”暖簾に腕押し”のような感じだ。
『手応えがなさすぎますね。』
『よっぽど後ろの本体がでっかいんやろう?無駄に殺されるより、後ろにすがったほうがええんやろ。そうなると、ますます怖なってきたわいね。どうやろ?こっちも下がらんかい?』
好和にしては消極的な意見だと思ったレイジだが、その案に従った。百戦錬磨の好和に不安を抱かせる何かがあったのだ、その直感に従うことにした。レイジ本人も、もう少し多い人数で相手本体と向き合った方が良いという判断だった。
「真之介さんがやってきます。」
大きく息を切らした連絡兵が自転車から降りながら叫んだ。
レイジと好和は思わず見合って笑ってしまった。
「どうやら下がらせてくれないみたいですね。」
「あんなぁ、わしらに死ね言うちょるんか?」
「合わせて400足らず、、、さて、どうしましょうかね」
レイジはまだ血に染まっていない短刀を鞘に収めた。




