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YAMAGUCHI DEAD END  作者: 遠藤信彦
42/46

激突

広島鬼道を本体とする大勢の徳島人が国道11号に向かっているという報告を受け、レイジと秋山好和、真之介兄弟は揃って南西に向かった。徳島との藩境に防御線を引く必要があったからだ。どこで徳島・広島を迎え撃つか、それを決めることは困難を極めた。もともと人口の少ない香川であり、人員には限りがあるし、徳島だけでなく高知との藩境も長いため、そちらの用心も必要である。もしかしたら広島が高知で人を集め、進軍してくるかもしれない。レイジと真之介は3日昼夜議論を重ねたが答えは出なかった。できれば香川藩境を超えてほしくない。

『ここにしましょう。』

レイジは目の下のクマに右手の指を当て、すこしでも眼球に安らぎを与えようとマッサージをしている。左手は地図の上にあった。彼の指は場所を指している。真之助も眉間に深い皺を作りながら地図を凝視している。そしてゆっくりと頷いた。

『そこでいいです。そこで向かい打ちましょう。』

レイジの指先には大坂峠があった。


傭兵ではないが、雇われ兵とか、派遣兵の類であるレイジは自ら望んで最前線に出た。自分たちの働き如何で香川から伊代に農業支援が受けられるのだ。もしかしたら米を直接送ってくれるかもしれない。子供達の成長に良い事はもちろん伊代人の笑顔が浮かぶ。

「香川の兵隊ぁ、後からしか来んのかよ。前には出てこんけん、使いもんにならんわい。」

好和は鼻で笑いながらライフルの手入れをしている。オリンピックがまだ存在していたら間違いなく代表になれただろう、かなりの凄腕だ。准将とはいえもちろん弾薬を好きなだけ使わせてもらえるわけではない。面白いのは彼が打つ度に薬莢を拾うところだ。薬莢を無くすと怒られるといって敵をそっちのけで血眼になって探すのだ。一度ならず敵兵が目前まで迫っている時でも薬莢を探していた。それを見て周りはいつも爆笑している。好和は銃剣術も一流なので、誰も心配はしていない。

一方、弟の真之助はレイジの指示によって前線から高松に向かって10キロメートルほど下がったところで香川兵300人と駐屯していた。仮にレイジに何かあったとしても、真之助がいれば伊予兵を無事に高松や、伊代国まで連れて帰ってくれるだろう。勿論前に出て戦ってもすこぶる強い。彼が後ろに控えているという事実が伊代国の兵隊を安心させ、更に強くさせる。

「真さんが後ろにおるけんよ。」

レイジも好和も事あるごとに周りにそう言い聞かせた。レイジに負けるとも劣らない真之介の頭脳と人気にあやかった。

「レイジさん、何か嬉しそうですね。」

横にいた眼鏡をかけた若い兵隊にそう言われた。レイジは喜びを隠せずに

「久しぶりに真さんと一緒だからね。余計な事は全部真さんに押し付けて自分は戦闘に没頭できるんだ。こんなに嬉しい事が他にありますか?」

そう言って笑った。

レイジは刀を抜いて構えてみた。いつもは作戦本部にいるので珍しい事だった。彼本人は短刀の名人である事もあって、獲物は60センチ程度の日本刀一本だけである。何度か振るってみた。今回は活躍できそうだ。

「流石に一本じゃ足らんのじゃな?。」

好和に茶化すように言われてレイジも不安になった。確かに相手が多すぎるよなとレイジは思った。

「まぁ、相手から貰いますよ。」

口笛を鳴らして不安を誤魔化した。


2時間も待っていると、遠くから不思議な音が聞こえてきた。何かがアスファルトを叩く音だ。誰かが馬の蹄の音だと言った。まさかとは思ったが、レイジも好和もどうすることもできない。

「香川のボンクラども見っ〜け!」

山本圭一郎が先頭になって5頭の騎馬兵が突っ込んできた。手には拳銃を持っていた。

「皆殺しして皆食うちゃるけぇの!」

圭一郎の放つ弾丸でレイジの横にいた眼鏡をかけた兵隊の頬骨に穴が空いた。
















秋山好和 真之助

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