表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
YAMAGUCHI DEAD END  作者: 遠藤信彦
40/46

ミノル 立つ

天井を眺めている。ただただ眺めている。一点のシミを見つけ、それを凝視する。


ミノルの1日はそれで終わる。天守閣に籠り、そうやって2ヶ月が過ぎた。長い戦いの旅路で心底疲れた体を休めているのだろう。微動だにしなかった。だがしかし、側近たちにそろそろ周辺の食料も乏しくなってきたと言われ、ミノルはようやく重い腰を上げた。あれからもともと長かった白髪と髭がさらに長くなり、彼の神格性を助けた。ミノルはさらに喋らなくなっている。

『ミノルさん、一度高知に降って奴隷や食糧を集め、それから香川に打って出るか、それとも香川をまっすぐに目指すか決めましょうや。』

山本圭一郎がミノルのための配膳を置きながら世間話のように聞いた。本人はどちらでも構わないと言ったところだろう。戦闘して飯が食えればそれでいいと思っているようだ。

『高知は県も崩壊してしまってどうにもならん。ワヤんなってまとまらんみたいですわ。悪いのが徒党を組んで悪さしちょうけど、どれも細い(こまい)けぇ、わしらの敵にゃぁならんわいね。』

圭一郎は自分の配膳にはなかった鯵の刺身がついているのを見て羨ましがって見た。

『あねー悪いんを奴隷にでもして、畑でもなんでもやらせて、くたばったら食えばええ。腕のあるもんは取り立ててやりゃぁ、ワシらももっと強うなるわいね。』

ミノルはなにも言わずじっと聞いている。微動だにしないが、何かを考えているようには見える。

『潮田さんにも聞いちょくけど、ここもあと少ししかおられんけぇね。早う決めた方がええわいね。』

圭一郎があまりにも鯵の刺身を凝視して話すのをみて、ミノルはその配膳ごとくれてやった。圭一郎は喜んだ。

『ミノルさん、最近また痩せたわいね。食べんにゃぁいけんよ?』

そういいながらも嬉々として配膳を受け取り、階下に下って行った。


ミノルは自分の肋をみた。以前よりも浮き出ている。たしかに最近は食べていない。全く動いていないから腹も減らなかったのも事実だったのではあるが。

久しぶりに城外に出て歩いた。季節は真夏で青が眩しい。力強い緑や日差しで少し目眩がしたが、ミノルは歩き続けた。周りにいた人は久しぶりに見るミノルに驚き、笑顔を送ったが、誰も話しかけようともしなかった。

ミノルは、彼自身はどうとも思っていなかったが、神のように扱われることが多くなってきた。見た目もさることながら、行動や戦闘が人離れをしてきて、芸術に近づいてきており、見る人を圧倒するのだ。無口である事もそれを助けている。


2キロくらい歩いただろうか、背の高い大きな男が足首に足枷をつけたまま田んぼで労働させられているのが見えた。彼は体になにもつけていなかった。全裸なので身体中に大きなアザがあり、股からは血が出ていたのが見えた。ミノルは何も言わず近づいていき、しばらく傍観していた。

労働の責任者のような人物が鞭のようなもので男を叩き、罵る。もっと早く動けと促している。背の高い男は無表情で何も聴こえていないかのように見えた。何人かの別の男がやってきて、背の高い男を陵辱していった。背の高い男は犯されている間も無表情だった。皆の前で全裸で労働され、犯されている。労働の責任者が最後に加わり、背の高い男を堪能し終わった。その時だけ背の高い男の表情が歪んだように見えた。

今まで何度も見た光景。特別なことじゃない。何処にでもあった風景だ。ここ徳島で特別に起きていることじゃない。

『お前、名前は?』

いつの間にか責任者の目の前に現れたミノルが聞いた。

「と、徳永です。』

”神”と恐れられているミノルに口を聞いてもらえたことで、上手く下が回っていない。

『徳島です。地元です。』

出身を聞かれ、直立不動の体制を取りながら責任者の徳永は答えた。妻と子供を献上して責任者の地位に就かせてもらっていると言った。広島のためなら何でもやりますと頭を下げながら何度も言った。

ミノルは背の高い男の足枷を取らせた。足が自由になったのに背の高い男は喜ばなかった。次にミノルは斧を責任者に持たせた。

『闘え。』

責任者と男に促した。

突然のことに徳永は戸惑った。妻と子供を差し出して手に入れた折角のこの地位をこんなことで失うわけにもいかない。それに”神”からの直々の命令だ。もしかしたらもっと上のポジションを与えて貰えるかもしれない。徳永は意を決して背の高い男に斧を振りかざし向かって行った。背の高い男は相変わらず覇気のない目をしてただただ見ている。

『死ねぇ!!』

徳永があと1メートルと近づいた所で背の高い男は足元にあった石を掴み、投げた。石は徳永の眉間に命中し、彼を転倒させた。背の高い男は徳永に馬乗りになり、拳を振るった。何度も鉄槌を下ろした。徳永はもがきながらその拳を喰らうまいと身を捩らせている。もみくちゃになっている最中に徳永の手が斧に触れた。徳永と背の高い男の目線が斧に集まった。二人でその斧を取り合うように再度もみくちゃになった。徳永が背の高い男の目に指を入れる。背の高い男は徳永の腹を食いちぎった。最終的に斧を手にしたのは徳永だった。徳永は背の高い男に斧で一撃を加えた。斧は背の高い男の鎖骨に食い込んだ。背の高い男は崩れ落ちた。

『馬鹿野郎!!死ね!!死ね!!』

徳永が10度目の斧を背の高い男に食い込ませ、そのまま力付き地面に崩れるようにしゃがみこんんだ。


『香川に行く。明日出立。』

ミノルはそう宣言すると、落ちていた斧を拾い、徳永の首を刎ねた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ