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YAMAGUCHI DEAD END  作者: 遠藤信彦
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きょうしろうくん

ケンヂときょうしろうの生活は突然に始まった。


きょうしろうは親を知らない。本当の兄弟もいない。施設で育った。先生を親と思い、生徒を兄弟だと思い育ってきた。血の繋がらない生徒や先生との共同生活が当たり前で育ったので、人見知りもほぼないし、他人との生活に慣れている。6歳から始まる学校と労働に備えて、施設の上級生と一緒に見学も兼ねて田んぼに出ていた。

特に何をする事もなく、させられる事もなく、田んぼや畑の隅で遊ばせていた時に二人は出会った。ケンヂはぶっきらぼうで可愛げのまるでない、しかし美しく伸びた長髪の美男子に見惚れてしまった。ケンヂの方から声をかけ、話し込んだ。年齢や好きな食べ物や興味のあることなど、ケンヂは細かく聞いた。細かく聞いた理由として、ケンヂの質問にきょうしろうは的確に迅速に返したからだ。たった6歳未満の子供の返答とも思えないものも多く、ケンヂの興味は尽きなかった。

『そうか、たくさんの絵本を読んできたんだね?』

ケンヂがきょうしろうくんと君付けで聞いた。

『同じ本を100回づつ読んだっちゃ。園には新しいのが来んけぇ。』

きょうしろうは諦めた顔をして俯いて答えた。寂しそうだった。ケンヂはこんなちいさな子供の知的好奇心を満足に満たせないことに胸を抉られた。

『きょうしろうくん、本当にごめんね。きょうしろうくんが新しい本を読めないのは僕にも責任がある。藩の大人全員の責任と言ってもいい。きょうしろうくんには学ぶ権利がある、、、あ、権利というのはね、、、。』

ケンヂの説明を遮るようにきょうしろうが割って入った。

『知っちょう。』

きょうしろうがお前もつまらない話しかできない大人なの?という目つきでケンヂを見た。慌ててケンヂは姿勢を正し、きょうしろうに向かい合った。

『僕の家には沢山の本があるし、来ない?藩の塾も紹介してあげれるよ。』


園で出るハヤシライスと子供達でするドッヂボール大会は捨てがたいという理由で、きょうしろうはケンヂの誘いを一旦は断った。爆笑したケンヂはハヤシライスとドッヂボールの日は園に帰ってみんなと過ごしたらいいときょうしろうに提案した。1時間の熟考の末、きょうしろうはケンヂと暮らすことに決めた。

『学校と労働が始まるまでは少し時間があるから、それまでは好きな本を好きなだけ読んだらいい。』

ケンヂはきょうしろうに自宅にある本を紹介した。どれも難しい本ばかりだったので、明日一緒に図書館に行こう。そこで好きなだけ借りてこよう。ひとつ部屋を用意するから、そこはきょうしろうの書斎にしてたくさんの本を置けばいい。』

ワクワクするときょうしろうは答えてくれたので、ケンヂは嬉しかった。


突然年端のいかない子供を連れてきたケンヂに対してリカは何も言わなかった。ケンヂを全幅に信頼、信用しているからだ。そしてリカもきょうしろうに一目惚れし、きょうしろうに何かしらの才能があるんじゃないかと直ぐに見抜いた。

『リカちゃんもそう思う?』

『思う、思う。この子、多分普通じゃない。』

なにより、めっちゃ美しい。リカは笑ってきょうしろうを後ろから抱きしめた。

『わたしの事”ママ”って読んでくれたら今から好きなもん作っちゃるけぇ。』

リカの提案にきょうしろうはびっくりしたように見えた。しばらくもじもじしていたが、小さく”ママ”と呼んだ。

『きょうしろうくん、私の大事な息子。』

リカは後ろからきょうしろうを抱きしめたまま、強引に唇を重ねた。

『きょうしろうのファーストキス頂き!!』

きょうしろうの手を取り、キッチンに連れて行った。





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