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YAMAGUCHI DEAD END  作者: 遠藤信彦
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じゃろ?

....じゃろ?」


「ウチの旦那さん、山口弁忘れてもーたけぇ、教えちゃらんにゃぁいけんわいねぇ。」

3度連続で求めてきたリカが満足した顔をケンヂの胸に載せ、先日よりも濃くなったほんの少しの胸毛を摘んで遊んでいる。黒縁メガネを掛け直したリカがケンヂの耳たぶを噛みながら山口弁講座を始めた。

「みぅかゔなはわわ、、ぅさざ、、じゃろ?」

まるで言葉になっていない。

「くすぐったいよ、リカちゃん!何言ってんのかわかんないよ。」

「大好きなのよ。私の大切な人。」



昏睡から目覚めて3ヶ月が経った。特に何もなく、日々平々凡々と暮らしている。軍に関係のある会議などは特別として、毎日畑に出たり、カエルの養殖場に行ったりする毎日であった。周りもケンヂが将軍職であると認識はしていたが、本人の陽気さや気さくさもあって、特別扱いはしてこなかった。子供達はむしろケンヂとの労働を楽しんでいる。子供達の"何故"に詳しく答えてくれるからだ。

「ケンヂくん、田んぼにはどのくらいの種類の動物達がおるん?」

髪をおさげにしたソバカスだらけの女の子が、素晴らしい笑顔で質問してきた。

「田んぼにはね、どれくらいだったかな?」

即答しても良いのだが、この子の興味を引き、もっと畑仕事を好きになって貰える答えはあるのかな?と、ケンヂは考える。

『田んぼには、カエル、トンボ、ドジョウ、メダカ、ゲンゴロウ、タニシ、ミジンコ、ホウネンエビなどの水生生物から、ミミズ、クモ、そしてアオサギのような鳥類まで、多様な生物が生息しちょるんよね。これらの生物は、それぞれが水田という環境をすみかとし、食料源とし、繁殖の場として利用することで、水田に豊かな生態系が築かちょるわいね。で、答えとしては・・・・。』

女の子が待ち切れないとばかりに目を見開き、ケンヂに詰め寄る。

『ちょーいっぱいいるよ!数え切れないくらい。1万かもしれないし、10万かもしれない。まだまだ発見できていない虫も動物もいっぱいおるけぇね。』

女の子が私が全部見つけたいと言ったので、きっと見つかるよ。僕も手伝うとケンヂは約束した。

別な男の子は木の切り方、薪の作り方、炭の作り方まで熱心に習った。子供達ひとりひとりの情熱に寄り添うようにケンヂは努めた。


男の子にしては珍しく肩まで伸びた髪をしている。年は5歳くらいに見える。きっと兄弟はこの田んぼのどこかで働いていて、付いてきたのだろう。彼は一人で田んぼの隅でおたまじゃくしを追っている。木の枝を両手に持ち、メダカを縁に追い詰め、手で掬おうという魂胆らしい。もう3時間も追っている。素晴らしい集中力だ。

『この子が兵役につく前にもう一度平和な世の中が来ればいいのに。』

ケンヂは思う。自分の命令でこの子は死地に踏み出すかもしれない。笑顔で死んでいくかもしれない。改めて自分の仕事の責任の重大さを思う。

ケンヂはその子の側まで寄ってみた。気づかれないようにそっと後ろに陣取る。しばらく眺めた後で話しかけてみた。

『こんにちは、お名前は?』

男の子はおたまじゃくしに夢中だ。ケンヂの声が聞こえてないみたいだ。もう一度、今度は少し大きめの声で聞こうとした瞬間

『きょうしろう。』

男の子が答えた。

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